シーン9 病気じゃない証拠


ナース(青年に)あなた、ご病気だったの?


青年 (占い師に)だから違うって言ってるでしょう。(ナースに)僕は病気じゃないですよ…。


ナース(占い師に)病気じゃないって言ってるわ。


占い師 責めないであげてくだいな。この方、まだご自分の状況がお分かりになっていないだけなんですの。


青年  いい加減にしてくださいよ…!僕が病気だという証拠でもあるんですか?


ナース そうよ。証拠もないのに人のことをむやみに病気だなんて言ってはいけないわ。


青年  ほら。この方だってこう言ってるんですよ。


占い師(ねっとりと囁くようにナースに)でもね…。病気じゃない証拠もないんですのよ、この方は…。ほら…。よく見てくださいな…。顔色がこんなに悪くって…。ね…?それなのにこの方が絶対に病気じゃないなんて…。あなた、言えます…?


ナース ああ…。それはそうねえ…。


青年  ちょっと待ってくださいよ、あなたまで…!違いますったら…。


占い師 とはいっても、ほら…。ねえ…?


ナース そうですねえ…。


青年  違いますったら。もうこの際はっきり言いましょうか。僕は病気じゃない…!病気なんかじゃないんですよ…!


占い師 あらまあ。大きな声を出されない方がいいですよ。


ナース(焦って)落ち着いてください。血圧が上がってしまいますから…。


青年  勘弁してくださいよ。それじゃまるで、僕が本当に病気みたいじゃないですか…。


占い師 大丈夫ですよ。ご本人がご病気に気が付いた時からが治療の始まりっていうでしょう。(ナースに)ねえ?


ナース ええ。今までお辛かったでしょうね…。もう大丈夫ですよ。


青年の背中をやさしく摩るナース。


青年 (やんわり振り解き)やめてください…。


ナース 安心してください。うちの病院ならしっかり検査もできますよ。わたしといっしょに行きましょう。


青年  行きませんよ…。僕は病気じゃないんですから…。


占い師 あなた何か誤解していらっしゃるようですけどね、わたくしたちはあなたが心配なんですのよ。


ナース 無理はしないでください。ね、大丈夫ですから。いちど深呼吸しましょうか。はい、吸ってー。


青年に促すようにナースが深呼吸をしてみせる。するとそれに伴い、占い師も大袈裟に深呼吸をしてみせる。


青年  ちょっと…。やめてください…!僕はちがう…。ちがうんですよ…!


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