第22話 閑話:シシリアの物語

奴隷として生かされていますわ。


それが凄く不名誉で辛いでのです…わ。


私の名前はシシリア。


少し前までは地方貴族の子供として生活をしていましたわ。


貴族と言っても、田舎貴族ですから殆ど平民と変わりませんわ。


更に言うなら、私は何故か小さい頃から部屋から出して貰えず、仮面をつけて生活をしていたのですわ。


仮面をつけさせられて外に出られない理由をメイドに聞いてみましたわ…メイド曰く。


『私は凄く美しいのだそうです』わ。


それとまぁ、体が弱いので出して貰えない、そういう事なのですわね。


ですが…何故か…私は凄く健康に思えるのですわ。


体も丈夫だし、プロポーションも悪くありませんわ。


どうして部屋から出られないのか


余り、納得できませんわね。


◆◆◆


「初露の儀(はつつゆのぎ)、まさか、それに我が娘が選ばれたのですか? そんな」


国王が私に頭を下げた。


この国で国王は頭を下げない。


ただの一つの行事を除いては…


「この通りだ済まぬ!」


本当に頭を下げている。


これを拒む事は貴族でいる以上断る事は出来ない。


態々国王自らが馬車で王宮を離れ、我が館迄来る。


たかが男爵の家に来て国王自らが頭を下げるのだ…絶対に断れない。


これによって娘が死ぬ運命になっていても。


「我が家にはそれを受ける気持ちはあります…ですが、我が家の娘は顔が醜いのです、それがバレたら王子は不味いのでは無いですか?」


「それなら、気にする必要は無い…初露の儀は最初から最後まで仮面を外さずに行われる。 故にバレる事は無い」


「仕方ありませぬ…謹んで、その儀お受け致します」


醜いとは言え、死んでは貰いたくない。


だが、この儀式は受けない訳にはいかない。


すまない…シシリア


◆◆◆


【初露の儀】とは?


初露の儀…これは王族が童貞を捨てる為の儀式だ。


王族である以上下賤の者に相手をさせる事は出来ない、その為貴族の令嬢から選ばれる。


それに加えて王族が『おさがり』の相手をする事は出来ないという考えから処女である事が必衰になる。


更に王族の相手をする以上『傷物』ではいけないから奴隷紋は刺青なので入れられない。


それでは…儀式が終わった女性はどうなるか?


儀式が終わった後…100人以上の男に輪姦される。


その人間には騎士や使用人等お城の関係者が多く参加する。


その理由は…継承権の問題が起きる為だ。


万が一初露の儀の相手の女性が身籠った場合、王位継承権が発生してしまう。


その為、子供が誰の子か解らない様にする為だ。


昔は此処で終わった。


その後、その女性は教会に入り生涯シスターとして生活する人生が待っていた。


だが、最近では後の憂いを断つために『殺す』ようになった。


つまり


『悪いが息子の童貞を捨てさせる為にお前の娘を使うよ。その後は大勢の男に犯させて殺すからな』


こういう内容だからこそ王が自ら頭を下げるのだ。


勿論、大貴族は根回しをしたり、お金を積んで逃げる。


その為、これで死ぬのは自然と弱小貴族の娘になる。



◆◆◆


「初露の儀、私がその相手をしなくてはいけないのです」


「すまない」


そんな、私はまだ殿方を知らないのですわ。


それが将来、王族とは言え一生を共にしない相手と一夜を共にするなんて考えられませんわ。


「お父様、将来私は夫になる人間に、この事をどう説明すれば良いのでしょうか? そんな事出来ませんわ」


「だが、この通りだ頼む」


お父さまは私の前で土下座していますわ。


私はこの儀式の意味を知っていますわ。


昔、メイドから聞いた事がありますわ。


この儀式の相手になってしまったら汚されまくった上に『殺される』と言う事を。


名誉なんて全く無い、まるで肉便器のように扱われ、汚物の様になり死ぬ運命しかありませんわ。


だけど、私が引き受けなかったら…恐らく貧乏男爵である我が家は終わりになりますわね。


私一人の命と家全部…私が死ぬ。


それしか方法は無いのかも知れませんわ。


「解りましたわ、その役目、引き受けますわ」


泣きたい気持ちを押さえて私はお父様に微笑みましたわ。




◆初露の儀当日◆


私は大きなお風呂に入れて貰っていますわ。


私一人に侍女が三人つきまして体の隅々まで洗われていますわ。


正直、凄く恥ずかしいのですが…仕方ありませんわ。


気がつくと私は悲しくなってきましたわ。


この後、私は王族とはいえ面識の無い男に犯され純潔を奪われ、汚されまくって死ぬのですわ…


「お嬢様、泣かないで下さい…お気持ちは解りますが」


気がつくと私は泣いていましたわ。


「そうね…ごめんなさいですわ」


「泣いても仕方無い事です…黙っておりますから今は泣いていても良いですよ」


「見ていません」


「だけど、此処から出たら涙は禁物ですよ」



私は建前上、好きでも無く初めて会う男に喜んで抱かれないといけないのですわ。


「解りましたわ」


気持の整理がつく間も無く時間は過ぎていきましたわ…そして。


「お前が僕の相手をする女だな、宜しく頼むよ…うむ、なかなかのプロポーションだな、良い体をしている」


気持ち悪い、ガマガエルの様な男が私を舐め回すように見ていますわ。


ですが、私には逆らう事は出来ませんわ。


「はい…宜しくお願い致しますわね」


名前は名乗らないで良い決まりですからこれで良い筈ですわ。


「緊張するなよ…それよりも、そ~れ」


嫌、いきなり何をしますの…そんな、いきなり服を千切ってくるなんて。


「いやぁぁぁぁぁーーー止めて下さいーーっせめて普通に」


「なに言っているんだ、普通になんてしても面白くないだろうが、お前は明日の朝まで余の物だ、思う存分犯してやるからな」


そう言いながら、私はドレスを無理やり破かれ、半裸になっていましたわ。


「別に逆らいませんわ…ですからせめて、せめて…ベッドにベッドにお連れ下さい」


「それは後でするが…今はこの場で泣きじゃくるお前が見たいんだよ…なかなか良い体をしているじゃ無いか? その分だと面も良いんだろうな? もし面を見せてくれたら、特別に命を助けてやるぞ」


「ですが…それはこの儀式の違反になりますわ」


「お前だってこの儀式の後は知っているのだろう? お前は全てを失うんだぞ」


この男の話ではどうしても、私が泣く顔が見たいのだそうですわ。


全裸にされて私の体は震えていますわ。


嗜虐心が強いのでしょう..


「私には…それは出来ませんわ…もし見たいならばこの仮面をはぎ取れば良いのですわ…よ」



男の手が私の仮面に手が伸びますわ。


正直言えば見られたくはありませんわ…


顔が見られない…汚される私に関係は無いかも知れませんわ。


でも同じ汚されて殺されるなら、顔なんて見られたくありませんわ。


ですが『命が助かる』その可能性があるなら…それに賭けてみたいのですわ。


助かってもガマガエルの様な人間に犯され多分奴隷の様な人生を歩むのが決まっていますわ。


ですが…それでも、それでも沢山の男に犯されゴミのように殺されるよりはマシなのですわ…


生き汚い…それでも死にたくはないのですわ。


私は『凄い美人の筈ですわ』それならきっとこのガマガエル男も気に入る筈ですわ。


体が震えていますわ…


時間が凄く長く感じますわ…


ガマガエル男の手が近づいてきましたわ。


私の仮面が剥がされます…


「お前…なんだーーーっこの化け物はーーっなんでだーーっ ブクブク」


何が起きたのでしょうか?


ガマガエル男は泡を吹いて気絶してしまいましたわ。



※ 感想欄からのリクエストに応えて三人目は貴族風娘にしてみました。人数を余り多く出す予定が無いので、聞けないかも知れませんが参考にはさせて頂きます。

有難うございました。

 



元貴族令嬢、無料?


ガマガエル男の悲鳴を聞いてメイドやら執事が駆けつけてきました。


「お前…何をうぷっ」


「仮面を剥がされたのですが、それは儀式違反です…なんてことを…」


私が自分で剥がしたんじゃない。


ガマガエル男が無理やり剥がしたのですわ。


「私が自分から剥がしたのでは…ありませんわ」


「まぁ、現状をみれば解る、王子にも困ったものだ」


「まぁ引き千切られた服に裸の貴方と王子をみれば大体の状況は解ります」


その後、私は牢屋に入れられましたわ。


初露の儀の事をどうするかについて話し合いをし、その後私がどうなるか決まるそうですわ。


結局、私は…


「王子が自分からお前の仮面を剥がした事を認めた。儀式の失敗は許されないので『無事終わった』事にする…そしてお前の様な化け物は私も含んで誰も抱きたくはない。戯言とはいえ王子が『命を助ける』そう約束をした。それを全部考慮した結果がこれだ」


結局私は…そのまま奴隷として売られる事になりましたわ。


此処で私は自分の勘違いを認めないといけませんわね


『美しい』そう思っていたのは間違いで『醜い』という事ですわ。


しかも、誰からも抱く価値が全く無い…そこ迄酷い女….うふふふ、そういう女なんですわ。



◆◆◆


「聖夜、奴隷の面白い情報を掴んだんだ」


オークマンが僕に話し掛けてきた。


鼻息が荒い。


「どうしたんだ、急に…」


「いやぁ、この間の奴隷商がな、隣町の奴隷商に変わった奴隷が入ったという情報が入ったんだ」


態々、僕に言ってくる必要があるのか。


オークマンの事だ、何か意味はあるのだろう。


「それで、それはどんな話なんだ」


「それがな、その奴隷というのが元貴族なんだ」


元貴族? そんなに珍しい事じゃないだろう。


元貴族、そんな肩書の奴隷はこの間オークマンと一緒に見に行った奴隷商にも2人居た。


「それの何処が面白い情報なんだ? 今のご時世貴族の奴隷だって数は少ないがいるだろう?」


「だが、その奴隷なんだが…実は変わった容姿をしている。話を聞く限りだと目が大きくてぎょろってしているそうだ」


「目が大きい? それがどうかしたのか?」


「その、なんだ、ちょこっとだけよ、イクミちゃんやマトイちゃんに似た雰囲気だから好みじゃねーかなってな」


二人に似ている?


マジか…マジかな。


本当に似ているなら本当に運が良い。


オークマンも三人が良いと言っているし、もし話が本当なら絶対に良い話だな。


「それじゃ、今から行って見るよ」


「待てよ、俺も一緒に行ってやるよ」


「すまないな」


「良いって事よ」


しかし、オークマンは本当に面倒見が良いな。



◆◆◆


「オークマン様、その方がお話しをしていた奇特な方なのですか?」


「最初に言って置くが必ず買うとは限らないからな」


「それは解っております。ですが、さる高貴な方から無理矢理押し付けられて本当に困ってしまったのです…しかも、まぁ良いです見て下さい」


俺とオークマンは一緒に奥に通された。


相変わらず暗い場所だな。


マトイに出会ったのもこんな場所だったな。


鉱山奴隷が居る場所のその奥に檻があった。


周りの檻に数人の奴隷が入っているがその檻と目をあわさないようにしている。


イクミやマトイは街で普通に生活している。


そして、本当に綺麗で可愛い。


少なくとも街に彼女達を悪く言う人間は居ない。


マトイの時と同じ様にシートが被さっていた。


俺は恐る恐るシートをめくった。


「駄目だ、聖夜、これは酷すぎる..帰ろう」


「オークマン様、もしかしたら引き取って貰えるかもって言ったじゃないですか?」


「だが、限度がある…これはまるで伝説のメデューサみたいじゃないか…なぁ聖夜」


「オークマン? 何を言っているんだ?」


綺麗だ…


可憐だ…


でも凄みもある。


かなり汚れてくすんではいるが、金髪の縦巻きロールに前髪と後ろ髪はフワッてした感じ。


明るい所で見たらさぞかし綺麗だろうな。


目はやや三白眼気味だけど大きく意思が強い目をしている。


凄いな…この子。


少女漫画で言う正統派ヒロインにも見えるし、見方によっては悪役令嬢にも見える。

正統派少女漫画なら、彼女の後ろに沢山のバラが見えそうだ。


逆に悪役令嬢なら、後ろに無数の蛇が見えそうだ。


貴族…いや王女にすら見える。


「聖夜…まさか、お前、これもいけるのか?…なぁマジか?」


「お客様、大丈夫ですか…気を失ったんじゃ..」


「もう私を見ましたわよね? 醜くて気持ち悪い顔が見られて満足ですわね…さぁさっさと立ち去って欲しいですわ」


ああっ声も溜まらない。


少しドスが効いていてそれでいて澄んだ声。


まるでアニメの様な劇の様な声。


「見た所、貴族の令嬢だったように思えるのですが」


「ええっ確かに私は貴族の出ですわ。まぁ貧乏男爵で田舎者ですからほぼ平民と変わりませんわ」


「そうでしょうか? 僕には貴族の令嬢にしか見えません」


「まぁ、貧乏で売られた様な身ですが、令嬢と言えば令嬢ですわね…それより貴方良く私の顔を見て話せますわね」


「まさか、石になるとか? 伝説のゴーゴンじゃあるまいし普通に見れますよ」


というか目が離せなくなる位に綺麗だ。


イクミが同じ位の年齢の美少女。


マトイが年下の美少女。

だとしたら、少し年上の綺麗なお姉さん…美女と美少女の中間に見える。


「幾ら、化け物みたいだからって、そんな本物の化け物と一緒にするのですか酷すぎますわ…もういい加減にして欲しい…のですわ」


「すみません、ですが聞いて下さい! メデューサもゴーゴンも髪こそ蛇ですが、顔は女神より美しいと言われた化け物です…僕から見た貴方はそう、それに匹敵する程綺麗です」


「お世辞も同情は要りませんわ…私は飛びぬけて醜いのは解ってますわよ」


「転生者ってご存知でしょうか?」


「話しには聞いていますが..どうかされましたの?」


「僕は転生者です。そのせいかも知れませんが僕には貴方がとんでもない美少女にしか見えません」


「それは本当ですの? 嘘とかではありませんわよね」


「はい…それで僕は王子様でも貴族でもないただの冒険者です。それに他にも二人暮らしている女性がいます。そんな僕でも貴方を引き取らせて貰って宜しいでしょうか?」


「聖夜…本当に良いのか? なぁ…マジでいけるんだな…おいどうやら大丈夫そうだぞ、約束通りで良いよな」


「勿論、お約束通り無料で結構でございます。今回は更に奴隷紋もサービスで構いません」


「あの..私は構いませんわ、ですが本当に宜しいんですの?」


《寧ろ、本当に私を引き取ってくれますの? 冗談とかからかっているとかじゃ無さそうですわ…ですが、どうしてこれ程の美少年が不細工の私を引き取ってくれますのか解りませんわ。もし、そう言った事のお相手でしたら….私からでも出来そうな位ですわよ》


「はい、それじゃ引き取らせて貰います。お願いいして宜しいでしょうか?」


「はい、有難うございます、今回は全部無料です。その代わり、再度引き取って欲しい。そういう場合も基本買い取りは不可です。逆にそう言った場合は金貨3枚貰う事になりますが宜しいですか?」


「構いません」


「僕の名前は聖夜って言います…えーと名前は?」


「シシリアと申しますわ…ご主人様」


なんでこんな美人が無料なんだよ…まさかこの世界、エロゲーの世界だったりしないよな。



『はぁ~これでまたギルドの定期集会で「シシリアは美人!」とか加えさせられそうだな』


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