メロ太郎

@ramia294

第1話

 昔々。

 ではなく…。


 つい最近の事です。


  ある田舎町に、おじいさんとおばあさんが、いました。

 ある日、おじいさんは、山へ芝刈りに、おばあさんは、川へ洗濯に。

 ではなく…。


 おじいさんは、登山とキャンプ。

 おばあさんは、渓流釣りへ行きました。

 

 おばあさんが、釣りフライラインをガイドに通していると、上流から、メロンが、プカプカ流れてきました。


「儲け、儲け」


 おばあさんは、メロンを回収すると、家に帰りました。

 ひとりで食べようと、包丁を取り出した時。 

 おじいさんが、山の天候が急変したと、帰って来ました。


「チッ」


 ひとりで食べようとしたおばあさんは、気づかれぬように舌打ちをしました。


「おじいさんと一緒に食べようと、頂き物のメロンを井戸ではなく、冷蔵庫で冷やそうとしていたところです」


 包丁を背に隠して、出鱈目で、その場を誤魔化すと、その夜のデザートに、メロンを割りました。

 すると、中からの珠の様な赤ちゃんが。

 凍えて、出て来ました。

 動かない。

 赤ちゃん。

 

 しばらく放置しておくと、暖まったのでしょうか?

 泣き出しました。

 どうやら、生きていたようです。

 仕方なく、ふたりで育てる事にしました。


 メロンから、生まれたので、メロ太郎と名づけられた、その赤ちゃんは、スクスクと大きく育ちました。


 メロ太郎は、とてもハンサム、イケメン、二枚目、良い男でした。


 村中の若い娘の憧れです。

 モテモテのメロ太郎は、しかし、とても真面目な好青年に育ちました。


 身勝手なおばあさんと自己チューなおじいさんを反面教師として、何事も真面目に取り組みました。

 他人の目をある程度気にすることも身につけ、空気を読めるメロ太郎。

 人を騙す事も無く、騙される事も無いメロ太郎。

 都会の大学に進学しました。


 しかし、メロ太郎のいなくなった、おじいさんとおばあさんは、家庭内で揉め事が、絶えなくなり、離婚してしまいました。


 元々、細々とした仕送り。

 無くなってしまったメロ太郎は、仕方なくアルバイトを探しました。

 大学の友人は、ルックスの良いメロ太郎に、夜の街で手っ取り早く稼ぐ事を勧めました。


 ホストクラブ。

 店名は、鬼ヶ島。

 メロ太郎は、夜の街で、働き始めました。


 容姿端麗。

 わがままなおばあさんを扱い慣れているメロ太郎は、すぐに人気者になり、売り上げランキングもグングン上昇。

 

 元々、アルバイトのつもりですので、欲の無い会話しかしません。

 海千山千の水商売の女性や、遊び慣れた有閑マダムには、新鮮で、魅力的だったのでしょう。


 しかし…。


 どんな世界も、いつの時も、出る杭は打たれます。

 売れっ子ホストたちに、反感を買うメロ太郎。

 夜の街のパワハラ。


『ピンドンをもっと売れ』


『俺の客を奪うな』


 理不尽な要求を突きつけます。


 ある日。

 大学まで、迎えにきた同伴のお客さま。

 居布いぬのさん。

 とってもお金持ちの有閑マダム。

 浮かぬ顔をしているメロ太郎は、悩みを打ち明けました。

 

 黙って聞いていた居布さんは、1週間後、メロ太郎のお店に、ふたりの仲間を連れて来ました。

 おふたりともメロ太郎は、お店でよくお見かけする方でした。

 ひとりは、雉野きじのさん。

 もうひとりは、美紗流みさるさん。

 雉野さんは、某有名政治家夫人。

 美紗流さんは、夜の街の売れっ子ナンバーワンホステス。

 三人が、お店のお得意様ランキング。

 ワン、ツー、スリーです。

 三人が、同時に来店。

 同じテーブルへ。

 ご指名は、もちろんメロ太郎。

 贅沢に遊ぶ彼女たち。

 とっても明るい彼女たち。

 派手なお金の使いっぷり。


 メロ太郎はハラハラ。

 お店は、ウハウハ。

 パワハラホストたちは、ギリギリ。


 今夜のホストクラブ鬼ヶ島。

 明るい笑い声が、たくさん巻き起こり、とても楽しい夜になりました。


 その夜。

 メロ太郎は、ナンバーワンホストに。

 ホストたちは、意地悪を出来なくなりました。


 お店のオーナーが現れ、三人の上得意様に挨拶を。


 居布さんの夫は、オーナーが、かつて経営に失敗して大きな借金を作った時、肩代わりしました。


 雉野さんの夫は、銀行の信用を無くしていたオーナーのために、大手銀行に頭を下げてまわり、再び商売を始める事の出来る力添えをしました。


 美紗流さんのお店のオーナーは、このオーナーのご友人。

 このお店のオープンのために、夜の街の実力者たちに、頭を下げて回りました。


 もちろん義理堅いオーナーは、三人のお客さまを大切にしていましたので、お気に入りのメロ太郎も大切に扱いました。


 メロ太郎のおかげで、ホストクラブ鬼ヶ島は、日本一のホストクラブになり、外国からのお客さまも遊びに来られる有名店に、なりました。


 時は、流れ。

 大学を卒業。

 アルバイトのメロ太郎。

 ホストクラブを辞めました。

 鬼ヶ島時代に、貯めたお金。

 巨額。

 アルバイトで、貯めた一財産を持って、おじいさんとおばあさんの住むふるさとへ。


 離婚していた、おじいさん。

 おばあさんの家で。

 三人で暮らそうと提案。


 しかし…。


 おふたりの心のすれ違いは、大きく。


 三人の。

 元の家族に戻るだけの小さな夢が、叶いません。

 

 悩むメロ太郎。

 困るメロ太郎。


 ふるさとの。

 キラキラ若葉。

 青い山々。

 川の煌めき。


 しかし…。


 メロ太郎の沈む心。


 そこに。 

 遊びにきた。

 居布さん。

 雉野さん。

 美紗流さん。

 三人の煌めく笑顔が、光ります。

 この地のキラキラ若葉に負けない明るさ。

 青き山々が、思わず引き込まれる、無敵の笑顔。


 打ち明けるメロ太郎。

 底抜けに、明るい三人。

 おじいさんを呼び寄せ。

 酒盛りを始めました。

 あの時の鬼ヶ島と同じ、弾ける笑い声。

 おじいさんの愚痴。

 おばあさんの愚痴。

 二人は、話し始めました。


 おじいさん。

 山ガールと友達に。

 ライン交換。

 頻繁な連絡。

 面白くないおばあさん。

 焼きもちを焼くおばあさん。


 おばあさん。

 釣り名人のおばあさん。

 ガイドを頼まれ、若い釣り師と渓流に消えるおばあさん。

 面白くないおじいさん。

 焼きもちを焼くおじいさん。


 お互いの思いあう気持ちが、いっぱいになり過ぎてしまい、すれ違う二人。


 心は迷い道。

 お互いを探す、迷い道。


 明るい三人。

 ピカピカの笑顔で、笑い飛ばします。

 おじいさんのわだかまり、タンポポのタネに。

 おばあさんのわだかまり、塵と変わり。

 三人の笑い声に誘われた、ふるさとの風が、近づいて。

 笑顔で吹き飛ばしていきました。


 おじいさんたちの気持ち。

 再び、寄り添う。

 メロ太郎の希望が、夢が、叶いました。

 もう一度家族3人で、生活を。

 メロ太郎の幸せな、幸せな、時。

 訪れました。


 しかし…。


 底抜けの三人。

 頻繁に現れ、泊っていきます。


「お店を作ろう」


 美紗流さん。

 田舎町に、派手なネオンのクラブ。

 立ち上げ。

 三人の笑い声。

 誘われた、夜の街の皆さん。

 次々に、お店オープン。


 気づけば、日本一の歓楽街の…。

 田舎町。

 潤う田舎町。


 ナンバーワン売り上げは、美紗流さんのお店。


 ドアを開くと…。


 美しいドレス姿の美紗流さんに。


 寄り添う。

 おじいさん。

 おばあさん。

 そして…。


 タキシードのメロ太郎…。


 ホスト。

 ホステス。

 伝説のナンバーワンのお店。

 あなたにも、世界一の楽しさを。


 どうぞ、遊びにおいで下さい。

          

         o(^o^)o


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