二、花陰で舞う
第一話
桜の咲く季節になると思い出すことがある。
その桜の木は丘の上に一本だけ寂しく立っていた。
敷地内に咲く桜の木の中で一番古く枯れかかっているせいもあって、何十年も前に花を咲かせることを止めてしまっていた。
その老木は枯れたままその丘の上に立っていて、しかしなぜか撤去されることなく、丘の上からこの
宗主である父に訊ねたら、五百年以上前に
その侵略からこの地を取り戻し、
つまりは象徴的なもので、撤去するなどあり得ないものなのだと。
午前中は母である
まだたった五歳の子供である
もちろん嫌々やらされているため、まったく身にならず、いつも
「そんなことではお前もあの
母が言う
ないが、母も上の兄もその義弟のことが気に食わないようで、その価値観を幼い頃から
「毎日馬鹿みたいにへらへら笑いながら、でたらめな歌を歌って踊っているような子に、あなたはなりたいの?宗主のために、この地の民のために尽力を尽くすのが、一族の役目だというのに」
「ごめんなさい」
くどくどと毎回同じことを繰り返す母に、うんざりしながらも、余計なことを言えば長引くと身をもって知っているので、とりあえず謝る。
横で三つ上の兄、
「お前は謝れば済むと思っているだろう?そんなのは弱い奴の言い訳だ。才能のない奴が努力もせずに一体どうやって成長できる?」
八歳の
そしてしっかりと
「ごめんなさい」
妹である
女の子なので、修練は選べるのだ。望めば受けられるし、望まなければ受ける必要がない。
だが自分は選択肢はなく、将来優れた術士となって宗主を支えるというのが義務なのだ。
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