死した幻想を苗床にファンタジーを育む

 理の異なる存在を見る主人公……というと、ホラーの文脈に近しいと思われる。
 他者には見えないおぞましい存在(幽霊など)を見て、激しい情動が沸き起こる。そういった点では本作も同じだが、その情動は恐怖ではない。

 新たな切り口で味わう幻想譚は、思い出などで情動をかき立てる夏の夜にぴったりな雰囲気をまとっている。
 その雰囲気をなんと見るか……それは読み手それぞれなのだろう。

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