第5話 「献酌官長の夢」

「献酌官長様!

あなたの夢はもしや・・ぶどうの木が出てきませんか?

そのぶどうの木には3本のつるがあり、

やがて芽を出すと、すぐ花が咲き、ぶどうの房が熟して・・・」


「そうだ!その通りだ!

夢の中で私の手にパロ王の杯があったから

私はぶどうを摘んで、それをパロ王の杯に絞って入れて

その杯をパロ王の手に捧げたのだ!!」


献酌官長は、セツラが語る夢が

見事に当たっていたので、酷く驚いていた・・


「少年よ!

お前はどこの民族の者だ?・・・もしや夢見の一族の者なのか?」


<夢見の一族?・・どこかで聞いた事があるような・・>

「私は、カナンの地に住むアブラハ族の子です・・

訳あって、1年前にデルタ王国に奴隷として売られてしまったのです・・

しかし私は、奴隷にされるような悪事を働いてはいません・・

本当です!信じて下さい!

私はただ・・・あなた様のお力になりたいのです!!」


献酌官長は、しばし考えた・・

自分は罪を犯した身分であり・・このままでは

パロ王の処刑を受ける身である・・

昨晩見た夢は・・意味がある事は間違いない・・しかし

夢の解き明かしが出来る者は・・他にいない・・

この少年は、奴隷の身分であるが・目力がしっかりしており

嘘をつくような出鱈目な者ではないだろう・・


献酌官長はしばらく黙り込み 瞑想すると

セツラに夢の解釈を求める事にした



「献酌官長様、夢の解き明かしはこうです。

3本のつるは3日の後のこと。3日後、献酌官長様は処刑される事になっていましたが、パロ王は、恩赦を与え、献酌官長様を元の地位に戻して下さるのでしょう。

そしてあなたは、パロ王の献酌官であったときの規定に従って、再びパロ王に杯をその手に捧げる事になるでしょう!」


「その夢の解き明かしは確かか?

何故そのように思うのだ?」


「あなた様は、罪を犯していないからです!

神は、不正を見逃されない!あなた様が助かる道を示して下さっているのです!!」


「セツラと言ったな?私は・・お前の言葉を信じる事にしよう!

もしお前が語った夢の解き明かしが、本当であったなら

私は命は奪われず・・生きる道が与えられたという事!

つまりお前との出会いは、神が供えられたという事だろう!

私が命を繋ぐ事ができるのだろう・・」

<本当にそうなれば・・どれ程喜ばしい事であろうか・・・>


「セツラよ!お前の望みは何だ?

何の為に、夢の解き明かしをしようと思ったのだ?」


「私は・・・・」

セツラが願いを語ろうとした時

献酌官長とセツラの話を側で聞いていた調理官長が話に割り込んできた・・






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