第12話【やっぱり朝は】

昨日よりも強い日差しが、カーテンの隙間から入ってきた。

目覚まし時計より少し、早く目が覚めた。

「今日から本格的な研修か、頑張らなきゃ。」

布団から出て、身支度をする。今日も散歩に出てる。

優しい陽の光が、途切れ途切れに顔を照らして、昨日より暑くなりそうだと感じさせる。ふと、斎藤さんが寒そうにしていた昨日を思い出し、暖かいほうがいいかもしれないと思う。


「おはよ。」

「おはようございます。」

斎藤さんだった。斎藤さんの事を考えていたら斎藤さんが目の前に現れて少し驚く。

「なんで驚いたような顔?」

「斎藤さんの事を考えていたら目の前に現れたので。」

「・・・」

余計な事を言ってしまった。斎藤さんは少し俯いている。よし、話題を変えよう。

「今日も電車は同じ時間ですか?」

「えっ、うん、そのつもりだよ。」

「じゃあ、一緒に行きませんか?俺は朝、喫茶店で朝食を取るので、食べたら斎藤さんを迎えに行きますよ。」

「えっ!う、うん、わかった//」

「じゃあ、後ほど。」

「う、うん。後でね//」

変える話題と言葉選びを失敗したかもしれないが、気まずくはなっていない。はずなので良しとする。


斎藤さんと別れた後、出社準備をして家を出た。

いつもの喫茶店に行き、いつもの席に座り、モーニングを頼む。

違うと感じていたコーヒーも、いつものコーヒーに変わりつつある。

「やっぱり朝はコーヒーとトーストだな。」

そんな変わらない朝に落ち着いた気持ちになる。

しかし、本当のところは少しだけ浮かれている。

斎藤さんと待ち合わせていることが、どことなく自分を浮かれさせているのだ。

その気持ちが、いや、まだ何なのかはわからなくていい。


時計を確認する、まだ少し早いが斎藤さんの家に向かおうか。

小説を鞄にしまい席を立つ、その様子を見ていたマスターがレジで僕の会計をスタンバイしてくれている。

うれしい心遣いだ。

マスターのいってらっしゃい、に行ってきますと返事をし、斎藤さんの家に向かった。

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