第5話カフェ

「近くの商店街にいい感じのカフェを見つけたの!行ってみない?」

「へぇ。特にいく場所もなかったし行ってみよう」


 1組のカップルが商店街にある、昭和レトロなカフェへと入っていく。


店内には、聞いたことはないが、ジャズのような音楽が流れ、豆をひいた良い香りが店内に充満して体が自然とリラックスする。


人が行き交う忙しい外の世界とは時間の流れが違い、ゆったりと時間が流れていく感じのするお店。


「へえ。なんか落ち着くいいところだね」

「本当だね」


店内の雰囲気が気に入ったカップルは入り口近くのカウンター席へと腰掛ける。


店内はカウンター席6脚、窓際の4人掛けの席が四つと少し狭い内装となっている。


「お客様いらっしゃいましたー!お冷や入ります!」


 大きな声でお客を迎えるのは、カフェコートをぱつぱつに着こなしたゴリラにそっくりな大男。


 そんな大男はぶつかるんじゃないかってくらいに顔を近づけて、「お客様!」と話しかける。


 そんな大男の勢いに驚いたカップルは構えるように、「「はい!」」と返答する。


 「当店のシェフが体調を崩して不在の為、アイスコーヒーとカフェオレ、エビチリ、餃子しかご提供できません!大変申し訳ありません!」

 「「はい!」」

 「その為、すみませんが、この中からお選びください!」

 「「はい!」」

 「おすすめは、アイスコーヒーとなっております!」

 「「え?」」

 「アイスコーヒーでよろしいですか?」

 「「は、はい!」」

 「ご注文承りました!小次郎さん!アイスコーヒー2つ入りまーす!」

 「はいよー!」


 厨房では、イケメン店長小次郎さんが注文の品を準備する。


 どうも!あなたの街の何でも屋!をやっている小次郎です。(身長170〜180、体重25〜60、ジャニー○似のイケメン!優しい!あなたの小次郎です)


「小次郎さん。そんなことはどうでもいいので本編進めてください!うほっ!」


さっきまで流暢な日本語を話してたくせに、急に「ウホ!」とか言い始めた設定が薄いやつに言われたくねぇ!


 まあ、そんなことはさておき、なぜ、俺がこんなほぼゴリラと知り合いなのかというと……


 「そんなことはどうでもいい!……うほっ!」


 もう普通に喋れば良くね?


 「自分ゴリラなんで」


 かたくなぁぁぁぁ!


ー昨日ー


 俺はいつものように、社長席で真面目にくつろぎながら何でも屋の存続を揺るがすある問題について深く深ーく、ミキの谷底カップよりも、それはもう深ーく!悩んでいた。


 「いや、でもなぁ、どうするかなぁ……うーん……」

 「どうしたの?」


 俺がミキの谷底カップよりも深く悩んでいると、「ミキ・タニゾコ」が話しかけてくる。


 「おい!お前何か失礼なこと考えてなかったか?」

 「いや。なにも……それよりも聞いてくれよ!俺はついに決心した!」

 「何を?」

 「俺は、このAカップとおさらばすることにした!」

 「……ふーん。まあ、頑張ってね」

 「おい!なんだその薄い反応は!これは由々しき問題なんだぞ!物語の主人公の胸がちょっと膨らんでるってなんか!こう!締まらないじゃないか!俺はキ○タ〇のようになりたいんだ!なんか変わったポーズとったらそれが「きゃあ!かっこいい!」って話題になるような存在になりたいんだ!」

 「へぇ」

 「だから!俺は、この胸をどうにかして削る!」

 「頑張って〜」


 俺が大声で「胸なし男に!俺はなる!」と宣言していると、「あーのー」とギャルソンコートをきた杖をついたじいさんが事務所に入ってきた。


 「商店街のカフェの爺さんじゃん。どしたの?」

 「あー?ネクタイ曲がっとるじゃと?まあ、細かいことは気にすんじゃねえ。だから、お前はいつまで経ってもAカップなんじゃ」

 「それは関係ねえだろ!」

 「あー?ああ、お構いなく。座らせてもらうぞい」


 爺さんは、事務所のソファに腰掛ける。


 俺は耳の悪い爺さんのために拡声器を用意して耳元で喋る。いやぁ!俺って親切だなぁ!決してAカップの事を根に持ってるわけじゃないからな!


 「それで!仕事の依頼か!」

 「うるさいのぅ!近所迷惑を考えんか!そうじゃ!仕事の依頼できたんじゃ!」

 「ぐっ!このじじい……それでどんな依頼だ?」

 

爺さんはミキが出したコーヒーを飲む。


 「ふぅ。わしのアバターが2日ばかりメンテナンスで動けんくなるんじゃ。じゃから、その間、店をやる者がいなくなってしまう。うちには毎日来てくれるお客もいるからの。わしがメンテナンスの間、店をお願いしたくてきたんじゃ」


 コーヒーを飲んだ途端に拡声器を使わなくても普通に聞こえるようになる爺さん。


 いつものことなので慣れてる俺たちは普通にスルー


 世の中には知らなくていいこともある。大人になれば君にもわかることだろう。


 「わかった。けど、俺とミキは料理ができるようにプログラミングされてないからオムライスとか作れねぇぞ?」

 「心配ねぇわ。大体コーヒーかカフェオレしか頼む客が来ない店じゃから」

 「それなら問題ねぇか。よし!引き受けた」


 と、大体こんな感じの経緯があり、代理の店長として店を任せられている。


 ちなみに、ほぼゴリは、駅前で行われていたボディビルの大会に参加していたところを見かけて、何かピーン!と来るものがあったから、スカウトしてきた新人君だ。


 「はーい!インスタん……ひきたてアイスコーヒーできたよー」

 「誠にありがとうございまーす!お客様お待たせしました。インスタントアイスコーヒーです!そして、サービスの上腕二頭筋です!どうですかぁ!筋肉が隆起してるのが、芸術的でしょう?」


 うん。インスタントコーヒーだけど、言わなくていいから。

 

 まあ、こんな感じで、料理のできない俺とほぼゴリ君は、きたお客全てにアイスコーヒー以外を注文させないように勢いだけで乗り切っている。


閉店まで後2時間。なんとか乗り切る!


2日目は、俺は別件の依頼があるので、ミキが担当となっている。


さて、2日目はどんな感じになるのか。


「ミキ・タニゾコ」の手腕はいかに……

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何でも屋さん @ss9

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