14(完結)

ロザーラがマルカラン王子と婚約してから、ステリックへの対応はすぐに終わった。

手始めに王立図書館でロザーラが本ばかり読んで婚約者としての義務を果たしていないと証言した図書委員を調査し、発言を撤回させる。

次に、ステリックが貿易で行ってた悪事をロザーラが証言し、違法に輸出入していた物品を押収し本人も逮捕される。

今までは第一子だからとドラ息子でも甘やかしていた両親も、愛想が尽きたのかステリックに勘当を言い渡す。

彼の情けを乞い願う叫びは、住んでいる屋敷から連れ去る馬車が見えなくなるまで離れても聞こえたという。


「……終わったわね」

ロザーラはそう、自身の屋敷で呟くように言った。

「これで後は、書類に婚約破棄をしますと書いてしまえばね。でも……それでいいのかい?」

マルカラン王子の言葉に彼女は返事が出来ないでいた。

このまま婚約破棄をすれば、二度と王子様と会えなくなる。

自分自身もフランコ侯爵家から追い出され、修道女か或いは……物乞いとして生きるしかなくなるだろう。

けど、どうすればいいのかなんて分かる訳がないわ。


「それでいいかなんて駄目に決まってるけど、他にどうすればいいかなんて分からないし……」

「決めかねてるなら、僕の方からいいかな? ……一緒に国を出ない?」

「えっ? それって……」

「このまま国にいたって家族が君を認めない。第三王子の僕もこのままなら王子様からの期待に応えられそうにないし、お互いに今のままの生活は出来ないだろ? 丁度いい場所があるんだ」

「……どんな場所?」

「オッカムの産出国、国一番のオッカムを掘り出した鉱山の主と付き合いがあってね。大丈夫、君を不幸にはさせない」


ロザーラに不安がない訳じゃない。

いきなりの提案、それも具体的な計画が全くない唐突な話しに普通なら同意なんて出来ないだろう。

けど……今から計画を立てる時間もないし、ここに残りたいって気持ちもない。

それに、婚約破棄をする気もないしね。


「いいわ。親や周りの人に振り回させるのにはもうウンザリだし、一緒に行きましょう」

「良かった。それと……これ、受け取ってくれるかな」


マルカラン王子が持っている鞄から取り出したネックレスには、見覚えがある宝石がはめられていた。

ロザーラが以前、王子様に送り返した国一番のオッカムだ。

周りをダイヤモンドに囲まれて、部屋を飾るランタンの光を反射しオッカムを輝かせる。

そのネックレスを見て、嬉しさで胸が一杯になった。


「……是非」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

図書館の魔女と王子様(完結) アイララ @AIRARASNOW

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ