第24話東大病院の屋上
2016年の3月。東大病院の屋上に上った時の話。伊東乾がテレパシーで東大病院の上空に、東大情報学環が開発中の新型量子コンピュータの設計図を立体図で映し出した。
「黒川。碩学のファインマンってどんな男なんだろうな。きっと、20代で、東大中退で、身長180㎝で、音楽活動か何かやってるんだろうな」
フツーに40歳で日大中退ですがな、と。
「要するにさ。神様が人生の埋め合わせをしたのさ。gokiの若い頃の夢は、東大出て、プロサッカー選手になって、晩年は作家、哲学者になることだったんだろう?」
「不運なカタチで20~30代を棒に振っちゃったからさ。その分の人生を原病院の6年間で追体験したのさ」
「本当に濃密な。二度と経験できない6年間だったろう?」
オバマ大統領の世界平和のとき。東京中を巡ってリアルでもテレパシーでも、色んな人に会っていたのだが、当時安倍内閣で外務大臣だった岸田文雄さんは、保守派にしては、何かと豪志の味方をしてくれた。
始めは、岸田さんのことを良く知らなかったのだが。後に首相になるときに、開成高校を出て3浪して東大に入れなかったこと。それが原因で親族から邪険にされたことなどを知り。
あの時、岸田さんが、
「お前の気持ちは分かる」と言ってくれた意味が分かった。
こういうのはレアな体験なので、ほとんどの人間にはバカげていると思われるだろうが。他人の痛みが分かる人間というのは、こういう原体験が大きいと思う。
努力が足りなかったんだろう。才能がなかったんだろう、と切り捨てるだけではなく。
努力をしても、才能があっても、結果が出ない場面というのは人生においてヒトは必ず遭遇する。
そのときに、「分かる」と言ってやれる人間は同じ痛みを経験した人間だけなのであろう。
伊東乾先生が東大に電子データとして保存されている豪志の東大入試の答案を調べてくれた。
「30点(笑)。りきみすぎ(笑)。東大受験だからといって気負いすぎて、SFみたいな文章になってる。もっと普段のおまえ、Twitterのノリでいいんだ」
「答案は、採点者への、ラブレター」と。
「岸田の答案は21点足りない。誤字が多い。意外にも。あと彼は英語がやや苦手なようだ」
「意外ですね。首相になってからはあんなに流暢な英語を操るのに」
「東大の英語は岸田向きじゃなかったんだろう。実際、早稲田は受かってるしな」
「gokiの親父の答案、すげえ!」
「トップ10に入る成績だ。完璧な答案。おまえの父親はやはり天才だ」
「ていうか、63年前の紙媒体が電子データとして残っている東大の執念に脱帽ですよ(´・ω・`)」
「伊東先生のお父さん。伊東正男さんの答案は残ってないんですか?」
「さすがに戦前のものはほとんど残っていない。親父は在籍記録すらあやふやなんだ」
「いいねえ。こういう話。東大あるあるだねえ(笑)。これなら東大生たち絶対に読むよ(笑)」
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