第20話

「あーーちゃんっ」


「なんだよ」


んふふ、と言いたげなニヤニヤした顔をした千里が帰りのHR後俺のところにやってきた。


「一緒に帰ろ?」


誰もいないからか、いつもの声に戻ってやがる。

周りがいる時は猫を被っている?と言えばいいのか、「蒼さん」とか言って淑女のような感じを出している。


しかしこいつの正体はだらしない顔をした化け物だ。


「帰らない……ていうか見て分からないのか?俺は今勉強してるんだ、だからお前とは一緒に帰れない」


「えぇ〜じゃあ私が教えてあげるからさっさと終わらして一緒に帰ろ!」


なんで俺がムキになってまでも帰らないかと言うと、もちろん一緒に帰りたくないのもある。


しかし、俺が今朝登校した時に自分の靴箱を見たら

一通の手紙があったのだ。


『藤本蒼、放課後教室で待っている。貴様1人だけで必ずだ』


と、謎の文体で書かれた手紙を読んだ俺は現在こうして待っている。

もしかしたら、超ツンデレかクーデレのヒロインからかもという0.1%の淡い期待を抱いていたりいなかったり..........。


と言うことで、俺はこうして今朝10点満点中2点を取った数学の再テストを大人しく

しているわけだ。


「まじで先帰ってくれ」


ノールックで言ってるから千里の顔が見れないがきっとプクッと頬を膨らましているのだろう。


「なんでなの?ねぇ.....あーちゃーーん........まさか浮気?浮気なの?!」


相変わらず感情の起伏が激しいことで.......。


猫背で椅子に座る俺の背中に覆うように千里が俺のこと抱きしめてきた。


「あの............色仕掛けはやめてくれませんかね......。」


これでもかと、俺の背中に千里の丘が当てられている。


「..........や。やめてほしいなら一緒に帰ろ。そんなのすぐ教えてあげるよ?お願いあーちゃん~それか私がすぐ答え教えてあげるからさぁぁぁぁ.......帰ろうよぉぉ。もういっそうのことあーちゃんの成績5にしてあげるから帰ろ?ね?なんでもするからさぁ.......」


「なんでもするなら、一人で帰ってくれ」


「一緒に帰ろうってことだよあーちゃん。あーちゃんがいなかったら意味ないよ!

帰ったらあーちゃんにあんなことやこんなことまで全部してあげるから帰ろ!」


色仕掛けや、下ネタに近い言葉まで........。

この人は痴女なのですか?


もういい、そんなに引き返さないなら俺もプライドを捨ててやろうじゃないか。


「おいド変態、帰れ。命令だ」


俺がそう言うと、急に黙り出したので千里の方をチラッと見ると俯いていた。

俺は座っている訳で、チラッとニヤついた千里の口が見えた。


「……ど、ど変態。。んっ」

そう言うと少し、体をビクッとさせて震わせていた。


「そこまで言うなら分かった。あーちゃんにご褒美もらっちゃったし、帰るね。けど家で待ってるから!あーちゃんのことずっと待ってるからね!」


「いや、すぐ帰るし待たなくてもいい」


「もぅ、あーちゃんは優しいんだからぁ。そんなところも好き!」


「うっ、抱きつくな!さっさの帰れド変態!」


だからソレを押し付けるなって!


それから離せと言っても1分間ほど抱きつかれた。


「帰ります!じゃーね!」


「おう。」


またな、なんて言わない。言いたくねーよ!


そこから1人で数十分待ったことだった........。































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