数年後の二人

「……彼氏に浮気されててマジ最悪でさー、でも浮気相手の女の子がめっちゃ可愛くて! 私も女の子好きになったりするんだなって。あ、女の子とは勿論連絡先交換した!」


 時雨とは別の大学になってしまったが、大学でも少ないが友人は作ることにした。そのうちの信頼できる更に少数には彼女がいる事を教えて色々根回しさせてもらっている。


「……心音の彼女さんは、そういうのはないの?」

「あー絶対無い絶対無い。あの子私の事好きすぎるし、隠し事も下手だしね」

「私もあの子とどんどん仲良くなりたーい!」

「頑張って。応援してるよ」

「ぐぬぬ……これが彼女持ちの余裕か……」


 そんな話をしていた帰宅途中、友人と別れ、家へと向かう。大好きな彼女が待っている、二人の家に。


「ただいま」

「あ、お帰り心音さん! 夜ご飯もう少しでできるからちょっと待っててね」

「よかったら手伝おうか?」

「ううん大丈夫! 疲れてるだろうし休んでて」


 高校を卒業して二人で住み始めた家。時間のあるときに料理を時雨に教えたらどんどん成長してくれた。今日は時雨の帰りが早いので夜ご飯を作ってくれていた。

 家で二人っきりのときの時雨は、言葉で、心の声でいつもたくさんの好意を伝えてくる。そして、よく甘えてくる。例えば、私がソファーでゆっくりしてる時、よく抱きついてくる


「心音さんぎゅぅー!」

「わっ……もう、甘えんぼさんだね、時雨は」

「えへへー」


 私は高校時代から変わらず小さくて華奢な体を受けとめ、そのまま時雨は体を反転させて膝の上に座ってくる。


「時雨もぎゅぅー」

「わぁっ!?」


 仕返しに思わず小さな彼女をギュッと抱きしめてしまう日もある。というか最近増えてきた。

 

 昔は寂しくて辛い思いをしながらも、明るく振る舞い、他人の為に頑張ってきた彼女。今も他人の為になれるように日々努力している。そんな彼女を支え、言葉と心で好意を伝えあって、二人で楽しく日々を歩んでいく。これ以上の幸せは、きっとないだろう。


(了)

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時は止まり、心高鳴る。 氷河 雪 @berry007

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