第11話 君のいない生活

 僕は新人賞を取った後は小説を書けずにいた。書こうと思ってもアイデアが出ずにすぐに違うことをしてしまっていた。両親からも小説家を期待され、それが逆にプレッシャーになっていた。絶対に有名になってまた彼女と再会するんだと思っても気持ちが空回りしてしまう。いつしか好きで書き始めた小説が悩みになるようになった。

  

 朝起きて学校に行き夕飯を食べて部屋にこもり小説を書くという生活を続けていた。今日もいつも通り夕飯を食べた後に部屋で小説を書いていた。すると外から大きな音が聞こえてきた。カーテンを開けると大きな輪が見えた。どうやら今日は花火大会らしい。友達も彼女もいない僕にとって無関係だった。しかし、空一面に広がる景色を見ているとあの日のことを思い出す。

『やっぱりリアルの花火の方も綺麗だな』

 そんなことを思いながらまた小説を考える。有名になって彼女と会うために。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る