8月23日

 8月23日、部活動を終えた僕は一糸まとわぬ姿で男子の部室のベンチに座っていた。その足元では同じように一糸まとわぬ姿で啜り泣く若宮さんがおり、その体には汗や先ほどまで入っていたプールの水、そして僕らの股間から垂れている白濁した液体と同じ物がベッタリと付着していて、部室の端っこに脱ぎ捨てられた二人の水着をチラッと見てから、啜り泣く若宮さんに僕は冷たい視線を向ける。


「……やっぱりその程度だった。君みたいな子供で満足するわけがないでしょ。まあ、オオバさんには遠く及ばなかったけど、そこそこ気持ちよくはさせてもらったし、そこだけは感謝するよ。どうもありがとう」

「……まだだよ。まだ私ならやれるから……だから……!」

「……往生際が悪いよ。そもそも一回目の時からだいぶ痛がって泣いてたし、もう足腰も立たないんでしょ? それに、もう何度もやってるし、そろそろ僕も飽きてきたんだよね」

「だ、ダメ……あの人のところになんて行っちゃ……」

「……君もそれなりに甘い果実だったよ。若いから瑞々しくて張りがあって、オオバさんと出会わずにこういう事をしていたら、君の虜になっていたかもしれない」

「え……」


 僕の言葉に若宮さんは少し期待を抱いたような顔をする。けれど、その期待は叶わないのだ。


「でも、オオバさんの方が何倍もすごい。発する匂いも脳や僕の体を刺激するし、動きや声は僕を更に昂らせ、あの肉付きの良い肢体は僕を何度も立ち上がらせる。そんな人に君が勝てるわけがないだろ」

「あ、あ……」

「君がオオバさんに勝ってるとすれば、若さくらいなんだよ。そんな子供っぽさしかない体と拙い動き、すぐに痛いって泣く根性の無さに知識や技術の不足。僕だってまだそんなんじゃないけど、これだけは言えるよ。君ごときが僕を魅了出来ると思うな」


 ピシャリと言って立ち上がろうとしたその時、若宮さんは涙を流しながら僕の足を掴む。


「い、いや……行かないで、夏野君……!」

「……まだ足りないの? だったら、今からここに水泳部の男子を呼ぼうか?」

「え……?」

「みんな、若宮さんにメロメロだし、女子とこういう事をしたいっていつも言ってるんだよ。だから、ここに呼び出してその姿を見られたら、心配こそされるだろうけど、我慢出来ずに興奮したみんなからいっぱい愛してもらえると思う」

「そ、そんな……」

「よかったね、若宮さん。僕以外の男子みんなから愛されて、もっと女性として成長出来るよ」

「い、いや……!」

「それが嫌なら早くシャワー浴びてきて帰りなよ。良い思いをさせてもらった分、掃除だけはしといてあげるから」


 その言葉で若宮さんは絶望した表情を浮かべると、よろよろと立ち上がり、水着を拾った後、股間から白濁した液体を垂れ流しながらそのままシャワー室へ行くために外へと出ていった。

それを見送った後、僕もまずはシャワーを浴びた方が良いと判断して立ち上がったが、さっきの哀しそうな若宮さんの姿に心がズキッと痛んだ。


「……心を痛める必要なんてない。これでオオバさんとの関係を邪魔される事はないし、喜ぶべきなんだ」


 自分に言い聞かせるように言った後、僕も自分の水着を拾い、男子のシャワー室へ向けてゆっくりと歩き始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る