8月13日

 8月13日、僕は今日は家にいた。その理由は簡単で、両親が昨日の昼から母さんの実家に帰ってるのを利用してまた自宅にオオバさんに来てもらう約束を昨日の内に交わしてきたから。ただ、両親が帰っている理由が少し大変で、行方がわからなくなった夏子叔母さんを二人も探しに行ったからなのだ。

服や財布などを持っていなくなった夏子叔母さんはどうやら母さんの二つ下で綺麗な長い黒髪の色白美人らしく、どこかオオバさんに似たその叔母さんに今だったら惚れているかもしれないという確信があった。

だけど、僕にはオオバさんという心に決めた相手がいるので、たとえ夏子叔母さんに会っても惚れもしないし興味も持たない。僕はオオバさんだけで十分なのだ。


「オオバさん……早く来ないかな」


 オオバさんとの熱く激しい一時を想像しながら僕はオオバさんが来るのを今か今かと待つ。その姿はまるで付き合いたての恋人を待っているかのようだったかもしれないが、僕はオオバさんとは交際をしていないし、オオバさんは僕に覚悟を決めさせないためと言っていつも小さな薬を僕が帰る前に飲んでいる。

その薬について聞いたけれど、オオバさんは僕が大人になったら必要がなくなるかもしれない薬とだけ言い、それの名前などは教えてくれない。だけど、その薬を飲むのは僕の事を考えてなのはわかっているため、その事は嬉しく思っていた。

そうして待っていたその時、玄関のチャイムが鳴り、僕はソファーから立ち上がると、すぐに玄関へ向かい、期待をしながらドアを開けた。するとそこには、小さな旅行カバンを持った白いワンピース姿のオオバさんがいた。


「オオバさん……!」


 オオバさんが来てくれた事に嬉しさを感じながら抱きつくと、オオバさんは一瞬驚いたような声を上げたものの、すぐに僕の頭を撫でてくれた。


「青志君は本当に甘えん坊さんね。でも、本当に来てよかったの?」

「はい、両親は明後日の夜まで帰らないですし、食費として少し多めに貰ってますから平気です。だから、オオバさん……」

「……ふふ、わかってるわ。明後日の夜まで泊まっていって欲しいのよね。せっかくお呼ばれしたわけだし、青志君に料理も作ってあげるし、好きなだけ甘えさせてあげるわ」

「オオバさん……」

「ただ、さっきこの辺りで青志君の友達に会ったのよね。たしか……若宮さんって言ったかしら」


 その名前を聞いて驚いたけれど、僕はすぐに平静を取り戻してからオオバさんに話しかけた。


「若宮さん、何をしてたんですか?」

「何かを探してるようだったから、声をかけてみたら、すぐにいなくなっちゃったのよね。だから、何をしていたかはわからないわ」

「そうですか。まあ、たぶん気にしなくて良いと思いますよ。ほら、早く上がって下さい。このままここにいても暑いだけですから」

「あら……ふふ、いつも私が言ってる事を言われちゃったわね。それじゃあおじゃまします」


 そう言ってオオバさんが家に入った後、僕は周りを見回してからドアを閉め、鍵までしっかりとかけた。その時、一瞬だけ誰かの声が聞こえた気がしたけど、僕は気のせいだという事にして、オオバさんとのあついお泊まり会を楽しむ事に意識を集中させていった。

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