第2話 「き」

 今回のターゲットは、怜子さん。

 肌理の整った肌は間近で見ても滑らかでシミの1つも見当たらず、セミロングの髪は見た目にもサラサラで艶やかだ。

 体に程よくフィットしたノースリーブのサマーニットは、鮮やかなスカイブルー。白地に紺色の細い線で大きな花がいくつも描かれている、ロングのフレアスカートを身に付けている。

 華やか且つ清楚な印象。


「さすが、ですね」

「えっ?」

「気配りが」


 俺はただ、彼女のグラスが空になりそうだったから、希望を聞いて注文をしただけ。

 もっとも彼女自身に希望はなく、結局俺のお勧めを注文したのだが。


「それほどでも」

「いえ、気遣いができる方は、すごいと思います」


 彼女の視線が向けられているのは、俺だけだ。

 気分が悪い訳がない。

 持ってる知識をついひけらかしたくなってしまうのは、致し方ないってもんだ。


「おいしい」

「それ、ザクロ・シャンパン。ザクロには抗酸化作用を持つポリフェノールやアントシアニンが豊富に含まれているらしいから、他の酒を飲むよりは美容にいいと思う」

「そうなんですね!知らなかった・・・・」

「おまけに、旨い。最高だろ?」


 酔いのせいもあるのか、潤んだ黒目がちの瞳が俺を見つめる。


「センスのいいチョイス」


 微笑みを浮かべ、サラリとそう言った彼女。

 だが、その目は確実に俺を狙っている。


 そう言うことなら。

 俺もそろそろ、仕掛けさせてもらうよ?


れいだね、怜子さんて」

「えっ?」

「その瞳も、肌も、髪も、全部きれいだ。コーデも決まってる。センスがいいのは、怜子さんの方だと思うけど?」

「そんな・・・・」


 舐めるような俺の視線に感じて恥ずかしくなったのか。

 それとも、この先を期待して胸を躍らせているのか。

 彼女の色白の頬が紅潮し始める。

 きっと、体温も上昇しているのだろう。

 俺の目の前で、彼女は残りのザクロ・シャンパンを一息に飲み干した。


 あ~あ。

 いくら美容に良くたって、それじゃあ酔いが一気に回るだろうに。

 ほら、もうイイ感じに酔ってきたようだ。

 でもだいぶ火照っているようだから、とりあえずは少し夜風にでも、当たった方がいいかもしれない。


 ってことで。

 そろそろこの合コン、抜け出すか。

 怜子さんと、2人きりで。

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