第33話  旅の果て

船旅の1日目は目的地へ向かうため、ずっとクルーズだった。

豪勢なバイキング方式のご飯だ!カナは焼豚にかぶりついた。至福のひとときである。

と、となりに小ぎれいな恰好をした金髪の青年が立っていた。

「良い食べっぷりですね」

「は、はぁ…」

カナは焼豚を頬張ったままポカンとしていた。青い瞳はまるでどこかの王子様のような風情をも感じさせるものがあった。

カナは焼豚をたべながらポンワリしてると、青年はしばらく席を離れてから、すぐにカナのもとへ戻ってきた。

「これ、卵とほうれん草のだし巻き。おいしいですし、野菜も食べた方がいいですよ」

そう言われ、なぜか照れながらも青年から渡された料理を口にしてみる。

おいしい!こんな料理があるあんて知らなかったカナは、思わず

「えっとあの、ありがとうございます!」

丁寧にお辞儀をしてしまった。青年は困りながら、

「い、いやそんな大したことじゃないよ」

と言いながら笑みを見せてくれた。笑みも最高にかっこいい。

「僕はミラ。君の名は?」

「カっカナです」

食べながら思わぬことを聞かれたので、思わず蒸せてしまった。

「そうか。じゃあまたねカナ」

そう言ってミラは別のテーブルの方へと向かっていってしまった。

カナは何とも言えない気持ちで心が満たされていた。

1日目の夜も、ベッドの中でミラの事を考えてうっとりとしていたが、自らの頬っぺたをピシャリと叩き、本来の目的であるカナマートの拡大について考えを軌道修正した。が、ときどきミラの姿がちらついてくる。もうだめだ!カナは毛布を被り、そのまま寝てしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る