第32話 抽選券

ある日、店長室で寝ていたカナが目を覚ますと、横のデスクに大量の紙が散らばって置いてあった。

「ほえぁ?」

よく見ると「抽選券」と書かれている。カナは1枚手に持って店内のレジに向かった。

「これ何?」

「ショウテンガイノ、フクビキカイガアルソウデ、イッパイオイテ、イカレマシタ」

「ほお…商店街の福引ねぇ…何回くらい引けるかしら」

どうせヒマなので数えてみると、52回引けるようだ。チラシもあった。

「1等は…14日世界船旅旅行!すごいじゃない!これいきたい」

ミカは俄然色めき立った。

「ロボットバイトAと一緒に今日の昼に抽選会場に行って、1等をもぎとってくるわよ」

「ワタシガマワスンデスカ」

「あたりまえでしょ、52回も回したら腕がどうかなるわ」


昼になって、2人はミューミューに乗って抽選会場に向かった。会場は人だかりができており、熱気にあふれている。

「さぁさぁ会場はこちら!1等はまだでてないよ~!」

ピンクのハッピを着た町内会の人が客引きをしている。

ミカはカバンから抽選券をドサリと出した。

「52回分、うちのバイトがひかせてもらうわよ」

周りは突如ざわつきはじめた。コンビニの店長じゃないか、とすぐに噂が広まってゆく。ハッピの人も、えらい人がきたなという感じで、

「はいミカマートさんが1等を取るのか?どうぞ!」

ロボットバイトが1回目を回す。ポロリと玉が出て来る。

「はい7等のティッシュね!」

「これからよ!頑張りなさい!」

30回やってもティッシュしか出なかった。他の等もあるはずなのに、ずっと7等しか出ない。

「あんたよっぽどくじ運ないんじゃないんの?どうなってるのよ」

50回目もあえなくティッシュだった時、ミカは限界を感じ、

「ちょっと貸しなさいよ!」

51回目をミカが思わず回す。と…。

違う色の玉が出て来た。ピンクハッピ男が息を飲む。

「1等~~!!!」

ガランガランとベルを鳴らす。

「やった!」

「ヤリマシタネ」

14日間の世界船旅が見事当たった!

「さっそく明日から行ってくるわよ!店をよろしくね」


街を抜けて少し行った所に港がある。そこに豪華な大きな船が泊まっていた。ミカが乗る世界一周用の船だ。ミューミューに荷物を乗せたミカは思わず、おおっと声がでてしまう。14日と少し短めだけど、刺激がいっぱいつまっていそうだ。ミューミューを走らせて船へと向かって行った。空は晴天で、よい旅になる予感がした。

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