第4話 設計図と冒険

次の課題はコンビニの設計図を書いて欲しいというものだった。カナは大いに悩んだが、ここは正攻法で行こうと決めた。

まず入口のガラスの所には雑誌を置く。すると当然立ち読み客が増えるわけだが、これが外から見ると繁盛している風に見えるわけだ。

雑誌を通り過ぎると、そのまま飲み物のコーナーに通じている。そこでお客さんは飲み物を買う訳だ。隣にアイスコーナーもあり、溶けない氷でキンキンに冷やしてある。ちなみに飲み物のバックヤード(後ろ)では溶けない氷を3つ置いてこれまたキンキンにひやしてある。飲み物の次の段には、これまた人気のパンが並んでいる。パンは売れやすいので卸業者が絶え間なくやってきては、パンを並べてゆく。

そこからは、そんなにたくさんは売れない化粧水や鉛筆やタオルなどが所狭しと並んでいる寸法だ。

完成したので、トッドさんを介して業者に頼み、設計図通りに棚を作ってもらう。そうしているうちに、卸業者に頼んだ商品がわんさかやってきたので、棚ができた所から順に並べていった。

「いいぞ…これでダンジョンにいく前や後に寄ってくれる人がたくさんくる!」

作業は夜過ぎまで続き、やっとなんとかほとんどの品を並べる事ができた。6時間もすれば、飲み物もアイスも冷えるだろう。

そんな状況をトッドさんがフラフラと伺いにきた。相変わらず片手にはお酒を持っている。トッドさんはぐるりと1週すると、

「いいねえいいねえ!グッドだよ」

そう言ってカナを褒めてくれた。

「あ、でももうひとつ」

トッドはカナに呼びかけた。

「ダンジョン民はドリップコーヒーが好きでねぇ。そういうのをつくれる機械をどうにかして設置できないかな」

「そうだったんですか…調べてみます」

カナはメモを取った。

「あとこれね」

そういってトッドは灰色のローブと杖とショルダーバッグを地面に置いた。

「えと…なんですかこれは」

「カナもダンジョンで少しはお金稼ぎしてもらわないとね。それに、ダンジョンがどんなものか知ってみるのもいいでしょう。それに毎日行けと言ってる訳じゃないんですから」

「ええーー!!」

思ってもいない出来事だった。

「だってトッドさんお金持ってそうじゃないですか」

「そりゃ持ってるけど、少しでも資金は多い方がいいからねぇ。魔術師だよ、いいだろう。1人じゃダンジョンにいけないから、ギルドで初心者パーティーを募って行くといい」

いきなり冒険の旅に出る事になってしまった。

「何も最深部に行けと言ってるわけじゃないんだよ、そこそこの階でもお金は出るからね、それとコンビニにはバイトも雇うから安心して行ってきていいよ」

何だかなぁ…。私は灰色のローブを着てショルダーバッグを背負い、杖を持った。

「じゃあギルドに行ってきます…」

「いってらっしゃい」

何だか大変な事になったけど、これもコンビニの事と思えば勇気だけは沸いて来る。トボトボと歩いてギルドへ向かうカナなのだった。

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