異世界でダンジョン前にコンビニを開いたら大繁盛!

オーバエージ

第1話 胎動

私、加奈は3D制作の専門学校に通いながら、コンビニでバイトをしている、まぁどこにでもいる女。専門学校の方はまぁ面白いけど、最近入ったコンビニ、これがもう大変!お客さんだった頃は、だるい店員がレジやってるイメージしかなかったけど、いざ始めてみると、接客、新しく入って来る商品の品出し、宅配便、お客さんの支払い方法、ソフトクリーム作り、ソフトクリームの機械の清掃、ホットスナック揚げ、商品の発注などなど、あらゆる仕事が多すぎて辞めようかどうか迷ったくらい。


そんなわけで今日も夜からバイトに行くために自転車でバイト先に向かう途中、向こうからまばゆい光がやってきて、そこからの記憶がない。


気がつくと夜の街の外に倒れていた。ただの街じゃない。全てレンガで出来ていて、明らかに現代とは違う奇妙な街だ。なぜ私はここにいるんだろう。

周りを伺っていると、遠くからフラフラと歩いてくる人物(?)がやってきた。

よかった!私は立ち上がり服の埃を払うと、その人に近寄って行った。

その人は人間ではなく、キツネが2本脚で歩いていた!片手には瓶を持っていて、アロハシャツのような服を着ている。

「あの…」

「んん?」

キツネはこちらに気がついたようだ。

「お嬢ちゃんどうしてこんなとこにいるんだい?」

「あの、ここはどこですか?」

「…それは何かのテストかな?」

そう言うとキツネは瓶に口をつけた。

「ここはイスカンダル大陸のセントワ―ル街だよ、お嬢ちゃん」

「イスカンダル…」

どうしてこんな異世界にきてしまったのだろうか。理由は全く理解できないけど現実は受け止めなければならない。

キツネはフラフラと向こうの方へ行こうとしていた。私は慌てて引き留めた。

「あのキツネさん!」

「儲け話はある?ない?…ない?じゃあサヨナラ」

「ちょっと待って下さい!」

「あのねぇ私はこれでも実業家なんだよお嬢ちゃん。早く家に帰って寝たいんだ」

何のあてもない私は、必死にキツネさんに呼びかけた。

「儲け話、あります!」

キツネからはじめて笑顔が消えた。

「ほう…聞こうか」

「不便な場所に、コンビニを開店するんです」

「コンビニ?なにかねそれは」

「小さい場所に、ありとあらゆる色んな商品が並んでるんです。それこそハサミからパンから飲み物、アイス、ホットスナック、雑誌まで色んな物が集まってるんです。不便な場所にあれば、大儲け間違いなしの素敵な商店なんですよ」

「その店を開店、営業した経験はあるのかね?」

「あります!ですからもしキツネさんが本気なら私、手伝います!」

「コンビニか…ふむ」

キツネは持っていた瓶を遠くに投げ捨てた。

「ここは獣人だけじゃないぞ、トカゲ族、ドワーフ、エルフ、人族、色んな人種が入り混じっているんだ。皆が満足するようなお店になるかね?」

「そこは商品の数で決まります。多ければ多いほどニーズにつながります!」

キツネはしばしウロウロしながら考えていた。

「そうだ、ダンジョンの入り口前にあったら便利だなぁ」

それからキツネは加奈の前まで寄って来た。

「私はトッド。君の名は?」

「カナです」

「カナ君、いっちょそれ、やってみようじゃないの」

「わぁ!」

カナはやっと生き返った気持ちになった。偶然生きがいを見つけた。嬉しくてピョンと飛んだ。

「じゃあ明日、綿密な打ち合わせをしよう。この街の真ん中に噴水があって、その前に宿がある。そこで昼に計画を練ろうではないか」

「わかりました!」

「じゃあ、そういうことで!」

そういうとトッドはフラフラと自宅へと戻って行った。


絶対にコンビニを成功させなければいけない!

カナの鼻息は荒かった。こんな異世界でめぐるましく時が動いている。カナは絶対の自信を持って臨むことを決意した。

しかしここで気づいた。お金を1銭も持ってないことに。それでも仕方なく宿屋に向かい、主人に聞いてみた。

「うむ。宿の掃除、食事の手伝い、皿洗いなどするなら1、2日は泊めてやってもよいぞ」

「わぁ!やりますやります!」

こうして首の皮1枚をつなぎながら、何とか生活することに成功していた。

明日のお昼はいわばプレゼンだ。皿洗いをしながら、気合いのアンテナがビンビンと立っているカナなのであった。

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