アニミズム

 日本人は無宗教だから(笑


 本当ですか?


 正月には神社に初もうで、結婚式は教会で、葬式はお寺で。

 パワースポットと聞けば何はともあれ行ってみる。


 節操がない。


 だから、無宗教?


 逆ですよね。

 そう、実は。

 信じているからこそ、あらゆる神様仏様から力なり祝福なりを受けたいんですよね。


 違う違う!

 って意固地に首を振りますけど、本当ですか? 本当に信じていないならそんなものすべて蹴飛ばいいだけのこと。


 ……出来ます?

 たたられますよぅ。


「アニミズム」


 精霊信仰や祖霊信仰と訳されますが、要するに、


「万物自然、すべてに魂が宿る」


 だから、もったいないと物を大切にする、人間の理解を超えたパワーが存在すると信じる、粗末にすればたたりもあると震える。すべて人間と同じ魂を持つ。いや、人間も自然の一部に過ぎない。だからこそ、「器物百年経て」長く使った道具にも魂が宿る。小さな虫や路傍の石ころだって、魂あるものとしては人間と何も変わりない。


 昔話の中では動物が人と対等であり、動物と話ができることになんら不思議を感じない。


 それを自然と受け入れている、今でも。それがつまり、日本人の心の中に深くアニミズムが息づいているあかし。


 一神教からはさげすまれて「アニミズムは原始宗教の一形態」などと言われますが、とんでもない!


 すべてに魂が宿る、ともすれば人間のほうが自然の中では下位の存在ととらえる。


 だからこそ、自然に、すべてに、敬意を払える。


 素晴らしいじゃないですか!


 道の端にたたずむお地蔵様に手を合わせるのも、宗教儀式ではありません。


 ただ、感謝をささげる。


 交通指導員のおじさん、いつもありがとう


 それと全く同じ。


 日本人の心の奥底には万物に対する感謝が常にある。

 人間は自分勝手に生まれ、自然はすべて人間の従属物、万物の長は人間なのだ! なんて、みじんも思っていない。だからこそ、神様にも、仏様にも、お地蔵様にだって、もちろん同じ人間にも感謝と祈りを捧げられるのです。


 何の分け隔てもなく。


 無宗教と胸を張るよりも、日本人の心に眠るアニミズムの精神こそ誇りましょう。


 愛を語りながら異教徒を敵視する宗教よりもよほど、その心は広くすべてを愛せるものなのですから。

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