第三章 内通者

呼び出し

完成が湧くと同時に何人かの保安部の武装した職員がフォルスを囲い込みフォルスを拘束する。


「ええい!離せ!!」


拘束されたフォルスは抵抗するが、数人で抑え込まれてどうにもならず、そのまま連れていかれてしまった。


それを横目にスイッチとゼノの前にユビキタスが現れる。


「五体満足だな、2人とも」


「ユビキタスさん!」


ゼノが嬉しそうに言うとユビキタスは微笑む。


「よく頑張ったな、皆が異動部のオフィスで待ってるぞ」


そう言うとユビキタスはスイッチの方を向く。


「お前はルーメン一等官がお待ちだ、フォルスの件で話があるとのことだ」


「やれやれ、これじゃあしばらくは報告書地獄だな」


スイッチはそう言いいながら歩き出す。


「それじゃ、僕は行くぞ」


「あの!」


ゼノが呼び止めるとスイッチは立ち止まり、首だけ向ける。


「色々、ありがとうございました」


ゼノが感謝を伝えるとスイッチは少し笑みを浮かべる。


「……ああ、またな」


そのまま人混みに紛れて消えていった。


アークはそれを見届けるとユビキタスの方を向く。


「戻る前に、我から伝言だあぁぁ……デス」


「ん?何だ?」


ユビキタスは首を傾げる。


「テラ一等官が『ゼノ三等官を保安部まで連れて来い』だそう…デス」


「了解した、レプスによろしく言っておいてくれ」


ユビキタスは敬礼をするとすぐにゼノの方へと歩き出す。


「まぁ、そんな気負うな、軽く話を聞かれるだけだろう」


「はい……」ゼノは不安になりながらユビキタスの後をついて行く。


(うう、怖いなあ……)


そんなゼノを見てユビキタスは笑みを浮かべた後に優しく言う。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だ」


「ほ、本当ですか?」


ゼノは恐る恐るユビキタスに尋ねる。本当に大丈夫な気がしないのだ。


「ああ、俺も初めては緊張したものだ」


「……え?」ゼノは思わず足を止める。「ユビキタスさん、前に呼ばれたことあるんですか……?」


「あぁ、しょっちゅうな」


さらっと答える。


「なんだ?そこまで心配か?」


ユビキタスは不思議そうに尋ねる。


「だって!保安部の人達って怖いじゃないですか!」


(しかも、あんな大きな事件があった後に呼ばれるなんて……絶対色々言われるよ)


「否定はしないがな……さて、着いたぞ」


ユビキタスが足を止めた。


目の前にはガラス張りの扉があり、扉の上には『保安部22番入口』と書いてある。


「22番……どんだけ大きいんだ」


ゼノは怯えた目で扉を見ながら呟く。


「ほら、行くぞ」


ユビキタスは扉を開けるとゼノを引っ張るように中に入る。


保安部のオフィスに入ると、そこには巨大な空間が広がっていた。


周りを見渡すが広い故かチラホラとしか職員の姿は見えない。


(どうしよう……)


そんなことを考えていると大きな声が聞こえビクッとする。


「キミがゼノ三等官だナっ!!」


「うわっ!!」


そこには赤いマントに一本線のゴーグルを着けてヒーロースーツに身を包んだ金髪の男性がいた。


「失礼、驚かせてしまった様だね」


ヒーロースーツの男は手を差し伸べる。ゼノが手を掴むと引っ張り上げてくれた。


「私はOCO保安部所属ユースティティア三等官だ、よろしくな」


「よ、よろしくお願いします」


「それじゃあついてきてくれ!」ユースティティアが先導して歩く。


ゼノはユビキタスと共について行く。


(やっぱり真面目っぽい人ばかりだなあ……この人を除いて)


ユースティティアのヒーロースーツは周りの保安部の職員の格好から明らかに浮いている。


本当に保安部の人間なのだろうか……?


そうこうしているうちに、オフィスの一番奥の部屋の前まで案内される。


「さあ!ゼノ三等官!!ここがテラ部長のオフィスだ!」


ユースティティアは元気良くドアを指差す。


そのドアは重々しい木製の扉で、横の壁には『部長室』と書いてある。


「ノックをして入りたまえ!中で部長がお待ちだッ!」


「し……失礼します」


ゼノは緊張しながらノックをしてドアを開ける。

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