追跡防止

「行きましょう」


ゼノは覚悟を決めた様子でそう言うとスイッチと共に暗闇の中へ駆け込んだ。


その瞬間強い揺れと同時に空色がかった虹色の光に包まれる。


「この光!まさかッ!」


ゼノにはこの光に見覚えがあった。


「間違いない……これは『門』の起動」


光に包まれながらスイッチは苦虫を噛み潰したような顔をする。


「止めましょう!スイッチさん!」


「無理だ!下手に触ればこの世界の宇宙が崩壊する!」


スイッチの苦し紛れの言葉にゼノは愕然とする。


「緊急停止ボタンとかはないんですか!?」


「そんなものあるならとっくの昔に押しに行ってる!!」


ゼノは冷や汗をかきながら考える。


(どうする……どうやって止める!?考えろ!)


その間も『門』の稼働音は上がって行く。


その音に混じって頭の中に何かが響く。


そして、彼の頭の中にひとつ考えが存在しないはずの知識から生まれる。


「スイッチさん……逆の力をかければ『門』は閉じますか?」


ゼノは覚悟を決めたような表情で言うと、スイッチは驚きながらもすぐに頷く。


「逆?何を言って……まさか!?」


「はい……装置の停止は無理でも『門』を閉じる事は出来るはず」


ゼノがそう言うとスイッチはフッと笑う。


「無茶苦茶な事を言いやがる……だが、面白いッ!」


そう言ってスイッチは腰からオレンジ色のラインが入った小型爆弾を幾つか取り出すとそれを後ろに投げる。


「スイッチさん!?」


ゼノが驚いて駆け寄るとスイッチは苦笑いする。


「安心しろ、お前が考えた無茶に付き合うだけだ……それにスピードは大事だろ?」


「い、いや……それは流石に……」


ゼノはそう言って止めようとするがスイッチは聞かない。


「行くぞ!翔べよッ!?」


スイッチの掛け声と共に彼は腰の小型爆弾を一気に点火する。

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