シュレディンガーの『門』

「あ、危なかった……」


ゼノが安堵のため息を漏らすとスイッチはもう一本バインドを出し、川岸へ固定する。


「しっかり捕まれ、向こうまで行くぞ」


ゼノがスイッチの手を掴むと一気に反対の川岸へとたどり着き2人は岩に掴まりながら水面から上がると、スイッチが興奮気味にゼノの肩を叩く。


「本当に良くやった!僕1人じゃ逃げるのが精一杯だっただろう!」


「い、いえ……それほどでも……」


少し照れくさそうに答えるとスイッチは満足そうな顔をする。


「飛びだしながら正確なバインドを撃つ冷静な判断、流石ユビキタスの部下って訳か……」


ゼノの頭にはユビキタスの顔と同時にアルの顔が浮かび上がる。


心配させているだろうか、帰ったら謝らないといけないな、とゼノは心の中で呟いた。


「そ、それよりさっきの人が言ってた『門』って……」


話を逸らすようにゼノが言うとスイッチは頷く。


「あまり信じたくないが……あの隠し扉の先には『門』がある可能性が高いな」


そう言うと深い溜息と同時に頭を抱え


「『門』の仕組みはOCOの最高機密、ディヴィデがそれを持ってるとなると……あまり考えたくないな」


「内通者……とかですか?」


スイッチは深刻な表情で頷く


「でも、確定してるわけじゃないんですよね?」ゼノが尋ねるとスイッチは再び頷く。


「一応な……『門』の謎は多いからな、なんせ開発者すら不明で装置そのもの構造を把握してるのはほんのひと握りの筈だ……新しく作った可能性もあるしな。とりあえずは」


スイッチはそう言って隠し扉に手を当て握っているスイッチを押す。


「真相を確認しに行こう」


その言葉ともに扉が重々しく開かれ、暗闇が大口を開けた。


「行きましょう」


ゼノは覚悟を決めた様子でそう言うとスイッチと共に暗闇の中へ駆け込んだ。

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