再会

何日か後の朝、ドアを叩く音で目が覚める。


「おはよう!ゼノおきてる?」


「はい、今起きました……」


ゼノは大きな欠伸をしながら答える。


「さ、早く準備しなよ、今日はやっと、冒険者ギルドに行けるよ!」


「おぉー……」


ゼノは眠い目を擦りながら着替えを済ませると、サランと一緒に宿を出る。


「よし。今日やる事は、クエスト受注と装備集め、あといい加減その珍しい服装を何とかしないとね、みんなに見られてるし」


確かに周囲の人はファンタジー風の服装なのに自分だけやや薄汚れた現代文明の格好をしているのは目立っていた。


「さ、早く行こう!」


「はい!」


2人は再び街に出ると、ゼノはサランに連れられて武器屋に入る。


「いらっしゃい!」


店主は筋骨隆々のスキンヘッドの男で、見るからに強そうだ。


「こんにちは、おっちゃん!」


「お、サランちゃんじゃねぇか!久しぶりだな!最近は顔を見せなかったが、どうしたんだ?」


「まぁ、ちょっとね。ところで今日はこの子の装備を買いに来たんだけど、見繕ってくれない?予算はこれくらい」


サランは金貨の入った小袋をカウンターに置く。


「あいよ、任せときな!」


「じゃあ、よろしくお願いします」


「おう、坊主、お前さん名前は?」


「ゼノです」


「よし、ゼノ。こっちに来い」


ゼノは男について行く。


「さて、どんな手を使ってサランお嬢を口説いたんだ?え?」


男はニヤリと笑いながら問いかける。


「違いますよ……ただ昨日森で迷ってたところを助けてもらっただけです」


「ほぅ……ま、そういう事にしとくぜ」


「信じてないですね……」


「当たり前だろう、余り大きい声じゃ言えんが、あの子は貴族の娘だ、そう簡単に行くと思うなよ?もし下手に手でも出したらたら親父さんにザックリだからな」


「はい、それは重々承知しています」


「なら良い。さて、ようこそ訓練場へ……」


男はそう言うと、大きな扉を開く。


そこには広いグラウンドがあり、様々な武具がラックに置いてあった。


「ここは俺の店の訓練場でな、好きな物を選びな。サランお嬢から貰った金ならどんなもの選んでもお釣りが返ってくるからな」


「えっ!?」


ゼノは驚くと、窓越しに悪戯っぽい笑みを浮かべているサランに気づく。


「……」


ゼノはラックに置かれている武器を1つずつ手に取って確かめていく。


剣、槍、斧、弓、杖……どれも重く、自分の力で扱えるか不安になる。


その時、壊れた武器や鉄くずが乱雑に放り込まれた小箱が目に入る。何故か、その中身に興味が湧き、中を見てみる。すると、1本のナイフを見つけた。


「これは……」


そのナイフを拾い上げると、間違いない。


これはOCO採用試験でフォッサに貰ったナイフだったのだ。ゼノはそのナイフをベルトに着いている鞘に差し込む。


「これにします」


「ほう……そいつは!無くしたと思ったらこんな所に落ちてやがったのか!」


「何か訳ありですか?」


「いや、妙な男がそれを売りに来てな、いい出来だったんで買ったんだがそのあとすぐにどこに置いたのか忘れちまったきりだったんだよ」


「武器が人を選ぶと言うのはよく聞く話だ、それはお前が持つのに相応しいものなのだろうよ」


男は店の奥に入ると、しばらくして戻ってきた。


「ほら、こいつはサービスだ」男が持ってきたのは革製の短いマントだった。


「ありがとうございます!」


ゼノは頭を下げると早速身につける。


「得物は決まったか?ゼノ?」


サランは腕を組みながら尋ねる。


「はい!このナイフにしました!」


ゼノは腰のそれを抜いてサランに見せる。


「へぇ〜いいじゃん!おっちゃん!いいの選んでくれてありがとう」


サランは笑顔を見せる。


「いーや、選んだのはソイツだからな、俺は何もしてねぇよ」


「また言ってるよ、はいじゃあこれお代ね」


「まいど!また、いつでも来てな」


「はーい。よし、それじゃあ次は服、それから冒険者ギルドだね」


「はい、お願いします」


一通り服を揃える終える頃には昼前になっていた。


ゼノはサランと共に冒険者ギルドに到着する。


「ここが……」


ギルドの中はかなり広く、酒場が併設されていた。


まさにファンタジー世界という感じだった。


2人は掲示板へとに向かい、サランと一緒に依頼を確認する。


「ここが、依頼掲示板。魔物討伐から薬草採集果ては人探しとか」


「依頼と言ってもいろいろあるんですね」


「そう。黒スライム捜索のついでに、こういうのもやるとお金貯まるよ」


そう言うとサランは1枚の依頼書を掲示板から剥がし、カウンターへと持っていく。


ゼノはその間掲示板を細かく読むことにした。


「……ん?」


1枚の依頼書に目が止まる。


読めないが人探しらしい文章と共に描かれた絵はどこかゼノに似ていた。


もしかして、ユビキタスさん達が助けに来た!?


そう心の中叫び、依頼主の名前見るが勿論読めない字で書いてあったのでゼノが少しガッカリしているとサランが依頼を受注して戻ってきた。

「お待たせ!じゃ、行こうか!」


「あっ、はい!」


ゼノは慌てて返事をする。


そして2人で馬に乗り街の外へと向かった。

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