G・D・O・S ~ジディオス~

 闇の大陸・ジディオス

 陽の光が射す時間が、他の大陸とくらべて極めて短いために、闇の大陸、そう呼ばれる。


 大陸は4つの国に分断されている。


 現在は4国が集まってコントラクトの腕を競う、交流戦のさなか。



 ――準決勝。

 ★場面1――試合会場。


ダダリオ「―――ッ」

 ウィリプス、必殺技発動。


観客「出たあっ必殺! ×字斬り・ジャンクション!!!」


ティルナ「ダダリオの勝ちねっ」




表紙タイトル

 『G・D・O・S -ジディオス-』




 ★場面2――出場者控室。


ティルナ「ダダリオ、お疲れ様。はいドリンク」

ダダリオ「ああ、さんきゅ」


ティルナ「調子よさそうじゃない。指揮にキレがあるっ」

ダダリオ「そうかな。まあ、大切な大会だからね」

ティルナ「次は決勝だねっ」


ダダリオ「――うん。相手はやっぱり、ファルクかな」


ティルナ「たぶんね。あっちも準決勝、そろそろはじまるんじゃないかな」


ダダリオ「――見に行くよ」

ティルナ「あ、私も行くっ」



 ★場面3――第二試合会場(観客席)


ティルナ「ん、今からみたいね。ほらっファルク出てきた」

ダダリオ「……相手は、鬼国か」


 ファルク、ダダリオにふと気付く。


 ダダリオ、がんばれよ、と思いながら拳を握ってみせる。

 ファルク、うなずく。


審判「バトルスタートッ!」


鬼国「決勝に行かせてもらうぜっ。鬼恐・バンガード――コントラクトッ!」


ファルク「死神・ジングルベル――コントラクトッ!」



ファルク「悪いな、ダダリオとやるまで、集中力を残しておきたいんだ。一撃で終わらせる」


鬼国「こっちもだっ! やるぜ!」必殺技発動「隕石の落下(メガ・インパクト)!!」

 ※力をこめた拳を振り下ろす。


ファルク「おそいなっ」


観客「ファルクも出すぞ。あの構えは、瞬殺一閃」


ファルク「死神の聖歌っ(デスキャロル)!!」

 ※素早い動きで一刀両断。奥薙ぎ


ティルナ「ファルクの勝ちだあっ!」


観客「決勝は死神国と霊国かっ」


 ダダリオとファルク、目があう。

 互いに笑いあう。



 この世界には、コントラクト、通称コントラという化身を扱う、指揮者と呼ばれる人間がいる。

(※指揮者は細い指揮棒のような道具でコントラをあやつる)


 種類は4つ、死神、悪魔、霊体、鬼恐。


 コントラはずっと、国の統治や生活力の糧として存在してきた。

 ――だが、しだいに指揮者の力は戦に使われるようになる。


 その戦はいずれ、4つの属性のどれが一番強いのか、というバトルに発展していき、戦は数を重ね、しだいに属性の溝は深まり、決着はつかないまま最後には4つの国に別れた。


死神――グリムリーパー G

悪魔――デーモン D

鬼――オーガ O

霊――スピリット S


 4つがバラバラなこの闇の大陸はいつしか


 G・D・O・S ― ジディオス ―


 という名前で呼ばれるようになる。



ティルナ「やっぱり決勝はファルクとか。開催のきっかけをつくった者同士なんだから、いい試合しなさいよ、ダダリオ」

ダダリオ「……そうだね」


ティルナ「やっと実現したんだもんね、4国交流戦。ダダリオとファルクが4国平和を呼びかけなけりゃ、あり得なかったよ」



ティルナの心中……


 4国は今だ不仲で戦は続いている。

 コントラに目覚めた者は、その種類によって同じ属性の国に送還される。


 たとえ家族が、バラバラになろうと。


 ダダリオも死神国に生まれたけど、霊体コントラに目覚めたことによって私が住む霊国に送還されてきた孤児。家族はもちろん、親友だったファルクとも離ればなれになった。


 皆が属性にかかわらず、好きな国で過ごせるように、ダダリオとファルクは平和を呼びかけた。


 そしてやっと、交流戦という形で4国共同イベントが実現した。


ダダリオ「でもまだ、参加者は18歳まで、の制限つき。肝心な上層部のやつらは認めちゃいない。子供の運動会くらいにしか考えていないよ」


ティルナ「それでも考えられなかったよ、共同イベントなんて。さすが天才指揮者、ダダリオだね。この若さで実現してしまうなんて」

ダダリオ「天才はファルクのほうさ。あいつの力は偉大だ」

ティルナ「きっとファルクもそっくり返すよ」


ファルク「ああ、返すさ」

ダダリオ「ファルクッ! お疲れ様っ」

ティルナ「お久しぶりですっ。交流戦の打ち合わせ以来だね」


ファルク「なあ、ダダリオ」


 ファルク、一帯を眺める……。


ファルク「見てみろよ。他国の奴らが、楽しそうに話してる。同じ場所で」

ダダリオ「……うん」


ファルク「……いい、眺めだな」

ダダリオ「……うん」


ファルク「ダダリオの家族を呼べるような年齢制限のない大会が、いつか開かれたらいいな。きっと立派になったお前に涙するぜ」

ダダリオ「家族か……会いたいな。元気にしてるか」

ファルク「ああ」


 観客席の一角……


 悪魔国、上層部の人間2人が座って会話をしている。


ザボラ「ふんっ。悪魔国のコントラ使いは怠けているのですかっ、決勝に残れないなんてっ。我が国の強さを見せつけようと思って交流戦に賛同したのにっ」

部下「どちらが勝っても、悪魔国にメリットはありませんね。せっかく監督国に選ばれたというのに、逆に恥です」

ザボラ「こんな結末、認めませんっ。そもそも私は反対だったのですよ、交流戦なんてっ」

部下「わたくしもでございます。……ったく、あの2人ときたら」


 2人はダダリオとファルクを見る。


ザボラ「目障りですねえ……あの2人」


部下「ザボラ様のコントラなら、2人を一掃できるでしょうね。天才とうたわれても、まだ子供です」


ザボラ「……奴らが死ねば、こんな茶番も、もう二度とないでしょうねえ」



 原作『2』へ


★場面5――試合会場。


 ――決勝戦。


 両者、入場する。


ダダリオ「ファルク、まだまだ4国が1つになるには遠いけど、ありがとう」


ファルク「なあに、こちらこそさ。……いつか必ず果たそうな。――さて、この大会を盛り上げないとな」



2人『正々堂々とやろうっ』



ティルナ(試合では指揮者への直接攻撃は禁止。コントラが敗北したり、集中力が切れて消えたりしたら負け)



 ダダリオ、指揮棒でSと空中に描く。


ダダリオ「霊体・ウィリプス――コントラクトッ!!!」


 同じくファルク、Gと描く。


ファルク「死神・ジングルベル――コントラクトッ!!!」



観客「バランスタイプの霊体とスピードタイプの死神……どっちが勝つ」


 武器がぶつかりあう。



観客「――どっちもうまいっ」

観客「おお、いい指揮だっ!」


 しばらく好戦。


 そこへ、ザボラが乱入。

 試合は中断する。


ファルク「なんだ……お前」

ダダリオ「あんたは、監督してる悪魔国のザボラさん」


ザボラ「目障りなのですよ。こんな交流戦など、無意味です」


ダダリオ「なっ」


ザボラ「戦争は国を潤します。必要なものです。滅ぶのが嫌なら勝てばいいのですよ。皆さんも本心では、分け与えるより、自分こそが富を得たいでしょう?」


ダダリオ「黙れっ!」

ファルク「この野郎……変な話、吹き込むんじゃねえ。この交流戦の実現で、どれだけの人が喜び涙したか。実現のために、どれだけの協力があったか」


ザボラ「くだらない。今まであなた達のような活動をした人がいなかったとでも思っているのですか? 馬鹿はいつの時代にもいるものです。しかしなぜこの大陸は変わっていないのか……戦争が望まれているからですよ。すでに引き返せないほどに、全ての国は憎悪で溢れているのです」


ダダリオ「……くっ」


ザボラ「さあ、私が教えてさしあげましょう、戦はすばらしいと。力こそが大切なのだと。――平和などを願えば他国に付け込まれこうなるのだと、私が大陸を代表して教えてあげましょう」


ダダリオ「――ッ」


 ザボラ、指揮棒をだす。Dを描く。

ザボラ「悪魔・バフォメット――コントラクト」


ティルナ「あれが悪魔国、上層部のコントラ……」



ファルク「くそっ消えやがれっ」必殺技発動「――死神の聖歌っ(デス・キャロル)!!」


 バフォメット、頭上に火が灯り、起動。

 必殺技が受け止められる。


ザボラ「くくくっ、ヌルい技ですねえ」


 ジングルベル、退く。

 バフォメット、頭上の火が消え、停止。


ファルク「ちっ、あたるまでやってやるぜっ」


ダダリオ「だめだファルク。必殺技の多用は体力を欠く。集中力が切れてコントラが消えたら終わりだっ」


ファルク「とは言っても、こっちは連戦後だ。持久戦もキツイぞ」


ダダリオ「ああ……しかし、おそらくここで奴とやりあえるのは俺達しかいない。なんとかしないと」


 バフォメット、頭上の火が点火、起動。


ザボラ「こちらからいきますよ」バフォメット必殺技発動「邪神の裁き(デモン・ジャッジ)」


 槍を振り回し、衝撃波を発生させる。

 ウィリプスとジングルベル、跳ね飛ばされる。


ザボラ「くくく……これは試合でなく実践です。指揮者も棒立ちというわけにはいかない」


ダダリオ「――ッ!!」


 バフォメット、2人に向かってきて攻撃を加える。


 かろうじて避ける。


ファルク「――まじかよっ、殺る気だぜっ」


ダダリオ「ジングルベルは、動くか……?」

ファルク「もう少しかかる」

ダダリオ「……おれもだ」苦笑


ファルク「……くるぜ」


 いくつか避ける。


 いずれファルクに攻撃がヒット。


ダダリオ「ファルクッ!!」


 助けに入ろうとするが、ダダリオにも攻撃がヒット。


 バフォメット、頭上の火が鎮火、停止。


ザボラ「おわりです。4国平和など、永遠におとずれない」



参加者「待てよっ」


 準決勝まですすんだ鬼国と悪魔国の2人が、怯えながらも飛び出してくる。


観客「準決勝までいった2人だっ」


鬼国「そいつらは、この大陸の光なんだっ。死なせるわけにはいかないっ」

悪魔国「ザボラさん、悪魔国を恥にさらす気かよっ」


 2人とも、コントラを出す。


ザボラ「勇敢ですねえ。しかし馬鹿です。わかりませんかねえ。あなた達では相手にもならないのですよ」


 バフォメット、点火、起動。


 バフォメット必殺技発動――

 断罪を遂げる火球 (ハッター・エシ)


 複数の火球が飛び出す――。


 2人のコントラ消滅。


 バフォメット、鎮火、停止。


 ダダリオ、そんなバフォメットの様子を観察。「……」


ザボラ「平和などを願うならば、あなた方も消して差し上げます」ダダリオを見る「こっちの2人を殺したあとにね」


 ダダリオ、ファルク、立ち上がる。


ザボラ「ここは闇の大陸・ジディオス。光はささないのです。さあ、エンディングです」


ダダリオ「……よし、コントラが動く」

フォルクス「……ジングルベル、来いっ」


 ウィリプス、ジングルベル、立ちはだかる。


ザボラ「まだやりますか」


ダダリオ「……ファルク、ああやって他国が助けてくれたんだ。俺達のやろうとしてることは間違っていない」

> ファルク「ああ、溢れる闇も、いつかは消えるさ……さあ、やるぞ」


ダダリオ「……考えたんだけど……1つ作戦がある……」


 説明される。


ファルク「よし……それでいこう」



 しばらく応戦する。


ザボラ「ふむ。さっきより良い動きです。天才指揮者、伊達ではありませんね」


ダダリオ「……」


ザボラ「しかし攻撃は当てなければ、意味がありませんよ。――滅びなさい」


ザボラ「邪神の裁き(デモン・ジャッジ)!!」


 バフォメットが必殺技を発動しようとする。


ファルク「今だっ。冬風のように翔けろっジングルベル」


 ジングルベル必殺技発動。

 聖夜に吹く凍風 (コールド・クリスマス)


 吹雪が巻きおこる――。


 バフォメットの頭にある火が消える。

 ――鎮火――停止。


ダダリオ「お前のコントラは動く時、頭上に火が燈る。だったら、消してやればいい」


ザボラ(こいつ――無理矢理、コントラの動きを停止にっ!!)「動けっバフォメット!!」



ファルク「――もう遅い」


ダダリオ「――まかせろっ」


 ウィリプス、必殺技発動。

 斬撃が出会う交差点 (ジャンクション)


 ×字に切りつける。


 バフォメット、消滅。


ダダリオ「俺はコントラで人を傷つけたくない。国に帰れ。そして伝えろ。4つの国は、必ずつなぐ」


 ファルク、ふっと笑う。


ザボラ「こ、この時勢にそんな願いを……いつまで持っていられるでしょうね」


 ザボラと部下、去る。


 観客から歓声があがる。


 ティルナ、目を潤ませる。

ティルナ「できる……できるよきっと」



悪魔国「悪かったな。でも勘違いしないでくれよ、悪魔国にも平和を願う奴らはたくさんいる」


ダタリオ「ああ、わかってるさ。逆に俺の霊国にだって戦を好む奴もいるんだ」


鬼国「後乗りで悪いけどさ、これからは傍観者じゃなく、協力するよ。あんたらの気持ち、なんだかわかった気がする」


 ファルク、ダダリオの肩に手をおく。

ファルク「できるかもな、本当に。やってやろうぜ……太陽の日は無理だが、心にくらいは、ずっと光が射すように」



 ティルナが遠くから叫ぶ。


ティルナ「あ、ちょっとふたりともーっ! なんだか一件落着みたいになってるけどっ! 決勝戦の決着がまだじゃんっ!」



ダダリオ「あ……そうか」


ファルク「……くたくただが、やるか?」


ダダリオ「……うんっ」


ファルク「格好いいこと言ってのけたんだ。ここで勝たなきゃ、お先は暗いぜっ」



 歓声があがる。



 ダダリオ、指揮棒をふる。


ダダリオ「霊体・ウィリプス――コントラクトッ!」


                              ~了~

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G・D・O・S ~ジディオス~ ウニ軍艦 @meirieiji

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