第10話 お名前は?

子犬のご飯を準備しようとした際、入れ物がないことに気づいたため、必要経費だということでオーダーで深めのお皿を購入。

犬用の皿でもよかったが、こちらにそういったものがない可能性もあったので、無難に白い陶器を選んだ。なかなかいいお値段で、4000リンだった。5倍の値段は本当に必要なのか…世界を超えるための手数料みたいなものなんだろうか。


子犬のご飯を準備しながら、そういえば自己紹介をしていなかったと気付く。


「そういえば、自己紹介してなかったな。俺は立花正義。こちらの世界では、マサヨシ・タチバナになるのかね。マサヨシとかマサとか…まぁ、好きに呼んでくれ。お前の名前は?」

子犬の目の前に水割り牛乳を置きながら問う。水割り牛乳、言葉だけ聞くと美味しくなさそうだ。


「こちらのせかい?」

「ああ、さっきも言ったが俺はこの世界に来たばかりなんだ。信じられんかもしれないが、俺はこの世界の人間ではない。魔法がない世界に居たんだ。だけど、何かの拍子にこちらに来てしまったらしい。傷だらけのお前を見つけた時が丁度、こちらに来た時だったんだ。」

子犬はまた吃驚した様子だったが、「おどろいた、けど、しんじる。」と頷いた。


「ぼくのしらないこと、たくさんあるから。しらないなかのひとつだった。マサヨシ、すごいね。」

なんだこの良い子は。思わず頭を高速でよしよしと撫でてしまう。


「俺がすごいわけではない、けど、信じてくれてありがとう。それで、お前の名前を教えてくれない?」

「ぼくのなまえ、ないよ。あのね、まものはみんな、なまえない。にんげんとけいやくしたら、にんげんになまえ、つけてもらうの。」

「ふむ、なるほど。…名前はないと不便だし、これから一緒に旅に出る仲間。よければ、俺と契約しないか?」

告白しているようで、少々緊張する。


「ぼ、ぼくとけいやく、してくれるの?なまえ、くれるの?」

「ああ、お前さえよければ俺は契約したい。ついでに、お前のステータスも鑑定させてくれると嬉しいな。お前も俺のステータス見たければ見せるよ。」

子犬は嬉しそうに尻尾をゆらゆらと揺らしている。

「ん、けいやく、する。したい。すてーたすも、みていいよ。マサヨシのすてーたすはね、べつにみなくてもいい、かな。」

一生懸命返事をしてくれるモフモフが可愛い。あと、先ほどから牛乳が気になるのか、チラチラと視線を向けている。


「腹が減ってる時に長い話をしてすまん。先にステータスを見たいし、飯にしよう。口に合わないかもしれないけど、その時は別のものを準備するから言ってくれ。」

どうぞ、と皿を子犬の方に押すと、待ってましたと言わんばかりに顔をお皿に近づけてふんふんと匂い嗅ぐ。そしてペロリと舐めると、美味しかったのか一生懸命舐め始めた。

少しの間その可愛い様子を眺めていたが、自分も腹が減っていることを思い出し、おにぎりを食べながら子犬のステータスを確認することにした。

ついでに、手をかざしたり声に出さなくてもスキルが使えるかの実験もしてみよう。

おにぎりの封を開けながら子犬に視線を向け、鑑定、と心の中で唱える。すると、先ほど見たホログラムが目の前に現れた。

ふむ、手も口上もいらんのか。便利だな。

「んで、肝心なステータスはっと。」


――――ステータス――――


【 種族 】フェンリル(亜種)

【 年齢 】134歳

【 Lv. 】3

【 HP 】105/105

【 MP 】342/342

【 能力 】風魔法Lv.3 火魔法Lv.1 闇魔法Lv.1 空間ボックスLv.2 感知Lv.3 自己治癒Lv.8

【 異能 】番犬 変容自在


―――――――――――――


3レベルにしては強すぎませんかね?

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