第8話 こんにちは

「次は、オーダーか。…注文?」

オーダーというアプリをタップする。

するとそこには、かの有名なアマゾネスとよく似た通販サイトが!


「おお、これはすごい!こっちでも日本のものを仕入れることができるってことか。便利だな!」

上のタブには『ようこそ、マサヨシ・タチバナ様』と書かれており、左側には食材、飲料、雑貨にペット…などなど様々なタブがある。

これは良いもの。最高。実は日本のものが今後一生食べられないのかもと思うと、悲しすぎて考えないようにしていたのだ。

でもこれで食糧問題は解決だな!!と感動しつつ、ふと下の方を見てみると『0リン(チャージする)』と書かれていた。


リン?前に数字がついているということは、これはお金の単位なんだろうか。そういえば、お金はどうしたらいいんだ?

何気なくリンと書かれた部分をタップすると、『1円=1リン』と出てきた。


「なるほど、この世界の通貨単位か。大きさは日本と変わらなくてよかった…ドルなんて言われると計算が難しそうだったしな。このチャージするを選べば、チャージできるんだろうか。」


タップすると、数字を記入する欄が小さなホログラムとして横に出てきた。

試しに100と記入し、決定を押す。すると『空間ボックス内の金額が足りません。空間ボックスにお金を入れてから、再度決定ボタンを押してください。』と出てきた。


「空間ボックスにお金を入れていれば、ここでチャージした分だけお金が抜き取られる仕様か。便利だな。そういえば忘れてたけど、俺の鞄やらも空間ボックスに入れておこう。ついでに財布も…たしか財布には1万ほど入ってたはずだけど、これはチャージできるんだろうか?一応1万リンとも変わらないし、試してみる価値はある。

空間ボックスの使い方は、さっきのアニマルヒールと同じ使い方で良いんだろうか。」


アニマルヒールと同じように右手のひらを前に突き出し「空間ボックス」と呟く。すると、少し空間が歪んだことが分かった。

試しに歪みに指を突っ込んでみると、その横にゲームのインベントリのようなホログラムが出てくる。指を引っこめてもホログラムは消えず、空間ボックスを消えるように念じるとホログラムも一緒に消えていった。


「なんと便利な…魔法ってすごいな…」


これは日本にいた時から欲しかった、なんて思いながら再度空間ボックスを開け、鞄を入れて閉じる。

鞄を入れると、ホログラムには鞄と使用済みの包帯やガーゼ、財布、お菓子×12個、そして下の方に13,783リンといった感じで記載された。

下に金額が出てくるのはわかりやすい。というか、円で入れたのにリル表記になっている。


「13,000リンもあったら、結構なものが買えるだろう。」

そしてオーダーを開き、1万リンをチャージする。とりあえず何か食べるものでもいいかな、と食材のタブからおにぎり3つと500mlの水、200ml牛乳を選択して決済画面へ。言わずもがな、牛乳は子犬用である。

「って待て、何だこの値段は!」

普段コンビニに売ってある120円のおにぎりと変わらないのにも関わらず、1つ600円もした。120円のおにぎりが600円…た、高すぎる…!

水や牛乳もあわせて2700円ほど。


「節約のためにも、あまりこれは使わない方がいいかもしれない。5倍の値段は高すぎる。すぐにお金が無くなってしまう。せっかくの通販サイトだけど…!」

思わず目を右手で覆ってしまう。悲しい。こちらでも、思う存分に日本の食べ物を食べられると思ったのに。


「いや、逆に考えよう。こっちの世界のものをたくさん味わえばいいんだ。こっちにもきっと美味しいものはたくさんあるはず。帰る方法を探しつつ、美味しいものを探す旅にでるのもいいな。」

楽しそうなことを想像し少し元気が出てきたところで、決済決定のボタンを押す。

すると『ご購入ありがとうございました。商品は空間ボックスへお送り致します。』という文章が。

空間ボックスを見ると、確かに購入したものが詰め込まれていた。


「便利や便利。おなかも減ったし、腹ごしらえだな。」

片手ではおにぎりの封は破けないため、失礼して左腕を引き抜かせて頂こうと子犬の方を見ると、真ん丸な赤い瞳がこちらを見ていたのだった。

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