目が覚めたらケンタウロスになっていた

 事故に遭ったのがきっかけで、同意なく勝手にケンタウロスにされちゃった人のお話。

 思考実験的なSFでありながら、コミカルなモノローグが楽しい作品です。
 失った下肢の代替として、馬の首から下をくっつけちゃう医療技術が普通に存在している、ちょっと未来の世界のお話。

 こういうのは実際に身をもって経験してみないとわからないもので、体が馬になってしまうことの不便が、経験者の視点から仔細に切々と語られています。
 いや、実際にはもちろん「ない」体験なのですけど。
 それがこんな説得力たっぷりに、というのがもう楽しい。
 主人公の性格というか、語り自体の軽妙さもあって、なおおかしいのがまた素敵。

 人なのか馬なのか、という観点から人権の問題にまで波及する等、思考実験的な楽しさがみっちり詰まった作品。
 最終的にはアイデンティティの問題にもつながる、コミカルなのに真面目なお話でした。