第5話 あの夏の回想

ビルの壁を夕日が染める。心が燃える色。夏の一日が煙になって溶けていく。街の景色は硝子細工のオブジェになる。古い歌が、頭の中にずっと流れている。全部幻になったはずなのに思い出は残ったまま。風の匂い。川の色。優しかったあの子の横顔。打ち上げ花火が輝く夜空。もう一度、戻れたらいいのに。

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