第46話 ウ〇コ回

アーク歴1498年 肆の月


ヴェルケーロ領




内政は順調だ、と思いたい。

領民は1000人程度。


おっと、俺が連れて来たのを含めて1100人程度、だ。

1100人が領主館のあるヴェルケーロの町…という名のプチ大きな村に800人ほど、後は小さな村に100人ずつくらいで分かれて住んでいる。



到着して初めにしたことは戸籍作りだ。

何人住んでいてどんな状況で、どんな村があって…何もわからないところからなのでまずは現状の把握に努める。


だが、開拓地の村人は識字率が低く、日付の感覚もあいまいなために自分が何年何月生まれの何歳かがはっきりしない。

さらに孤児だと全く分からないというケースも多い。



これはかつて地球でも戸籍を作るときにあちこちの国で起こったことらしい。

だから1月1日生まれがいっぱいいただとか、何年生まれかもかなり適当で5年刻みの生まれがやたら多かったりだとか。


んで、うちの領も当然のようにそうなった。

ヴェルケーロ領に新たに作られた戸籍では各月の1日生まれが300人いる。

総数1100人しかいないのに…まあいいか。


大体の日付が分かれば今はそれでいい。

今日から生まれた子供がしっかり記録出来てりゃまあいいだろ。


まあ戸籍については人数と大体の年齢、何処に住んでいるかが把握できれば細かいところはぶっちゃけどうでもいい。

目下の課題は食料、衣服、住居にインフラだ。

いわゆる衣食住である。

衣食足りて…と言うが、たかが1000人程度の町で戸籍や衣食住に苦労しているようでは次のステップには進めない。


そんなわけで戸籍は連れて来た領民の中の字が書ける奴に放り投げて、俺とロッソたち兵士は…開拓事業に入る。

具体的に言うと森の木を俺がスポスポ引き抜いて、力自慢たちが木を運んで、大工が木材に加工して、そして鍬や鋤で畑にする。

道を作り、溝を掘って水を引く。

そして加工した木材で建物を作る。

前に俺とアシュレイをメインに暇そうにしてる奴らと孤児たちとでやったことだ。


『暇そうにしてる奴ら』の中には兵士も子供もジジババも、オッサンやオバハンも含まれていた。

当然今回連れてきている100名の中にオッサンもオバハンも子供もジジババも沢山いるのでそいつらと一緒に作業。

領民は最初は見学させていたが途中からは普通に参加させた。

木を伐り、根を引っこ抜くという作業がないだけで随分と楽らしい。



木材の使用方法だが、とりあえず厩舎を作って連れて来た馬を入れた。

人間よりお馬様なのだ。


次に、連れて来た100名の分の長屋を作り、元々の領民の家で酷いのを新築し…最後は領主館だ。

大して雨漏りもしないし壁の穴も土魔法で塞げるしで木材をそれほど必要としない。

まあ必要であったとしても領主館を一番に直すなんてことはやんないけどね。


木材にならないようなのは薪に、次に炭に加工する。

炭は売れるが、行商人が来ないと金にすらならん。自分で使うのはもったいないし…。

薪にも炭にもならないような小さな木や小枝は燃やして元の土地に返す。

箸にしてもいいが、この世界で箸を自由自在に使えるのが俺以外に何人いるやら。


その後、人数を集めて石を取り除き、グルグルと土と水を掻き混ぜれば畑の出来上がりだ。

ただし肥料は無い。

灰と水しか混ぜてない土地だからはっきり言ってかなり痩せた土地だとは思う。

ってなわけで芋やソバ、粟稗にカブや大根を適当に植える。

上手く採れたらラッキー程度である。


勿論並行して堆肥づくりも進める。

人間のウンコを使って作った肥料はきちんと発酵させれば問題ない。

きちんと発酵させない場合は寄生虫の温床になるから注意が必要だ。


現代日本だと肥料と言えば化学肥料、それから牛糞や鶏糞を発酵させた堆肥を使うのが一般的だ。


あまり見ないが豚糞堆肥というものもある。そりゃそうだ。

あれだけ豚さんを飼って増やして、食べているのだから堆肥くらいいくらでも作れるのだ。


でもうちの領地には牛も馬も豚も、今やほとんどいない。

置いてくことになったからな…くそっ!

すごく不本意だし嫌だが、わがまま言ってらんない。

集めた人間のウンコを使って…使って…くせえ!くっそーう!


考えたくないからしょうもないダジャレに走ってしまったが、まあ要約すると。

『ウンコをうまく発酵させて堆肥を作って、堆肥のパワーで大きく育った野菜を美味しく食べる。』わけだ。


これを略すと『ウンコを食べる。』だ。

クソが!

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