第33話 狩りはおしまい

熊の血抜きをしながらアシュレイの回復待ちをしていると今度は狼がいっぱい迫ってきた。


マークスはホイホイと短剣で狼を倒すし、猟師のオッサンも矢でホイホイ倒す。

この世界の猟師はつええんだな。

マークスが強いのはなんとなくわかってたけど。



狼をいっぱいと熊1匹とつぶらなかわいい目をした鹿を1匹獲ってしまった。

問題はどうやって持って帰るかなのだ。


「うーん、どうやって持って帰る?」

「人を呼びましょう。折角の収穫物を捨てるのももったいないでしょうし」

「そうだな。おい、アシュレイ。大丈夫か?」

「ああ、私は問題ない…持ち帰る方法ならある。これを使え」


アシュレイが出してきたのはいつも使ってるリュックだ。

アシュレイが使うにはやや大人っぽいデザインだが、大きさはまあどう見てもそれほどではない。

お前、これじゃあ鹿1匹もはいんないだろ??


「そう見えてマジックバッグだ。便利だぞ」

「おおお…マジか。すげえ。こんなの王族くらいしか…ああ、こいつ王族だったわ」

「うるさいバカイト」


そういやこいつ王族だった。

ちなみに俺も軽く王族だったわ。

一応継承権もあるんだっけ?わっかんね。


どうせぶっちぎり1位のアシュレイが次代の魔王だし、じゃなくってもアフェリスがいるし。

この国は普通に女王もいるし男系も女系も継承権がある。


システム上そういう世界なのだ。

まあ俺とかむしろおかんの方のエルフの国?の方が継承権高いくらいなんじゃないかな?ってレベル。



でまあ、それは良いとしてマジックバッグだ。

仕組みはよくわからんが、ダンジョンから偶に産出されて見た目に反して物がいっぱい入るって代物だ。

一応生き物はダメって事になってるんだけどそれを言うと細菌やら微生物はどうなるのか。


例えばウンコを中に入れるとして、ウンコの中に当然含まれている腸内細菌やチョイチョイ含まれる寄生虫はどうなるのだろうか。

疑問が絶えないところである。

そうなるとウンコを肥料に使おうと思った場合、一度マジックバッグに入れたら折角の菌が死ぬと思えばいいのか、それとも寄生虫や危なっかしい菌が死んでくれるから丁度いいと思えばいいのか??


前世に趣味でアクアリウムをやっていたが、水槽立ち上げの時は最初にパイロットフィッシュと言って、安くて丈夫な魚を入れて水を作る。

水槽の循環システムには物理濾過と生物濾過がある。

物理的にゴミを漉し取るものと、微生物に頼って不要物を分解してもらうという物である。

だが、水槽の立ち上げ時には微生物はいない。

水道水やカラカラに乾いた石には微生物は暮らせないからだ。


そのため、微生物を水槽に定着させるために使うのがパイロットフィッシュである。

これはつまりその魚についていたり、魚から排泄するウンコの中にいる微生物が水槽に適応して住み付き、そして最終的に水をきれいにするのだ。

って事でウンコの中の微生物がマジックバッグでどうなるかが俺にはスゴ~~~く気になる。


まあでも。

ウンコに対する疑問を上げるとキリがないが、とりあえず狼を入れてみるか。

アシュレイが何やってんだってじっと見てるし…


「じゃあ入れてみよ……おい、入らないぞ」

「認証が必要なんだよ。カバン盗られたら大変だろが。それに…」


そりゃそうだ。

もし夜中に泥棒が入ってマジックバッグを持っていったらどうなるか。

中に詰め込んだ貴重品から趣味の品まで全部盗られて大変なことになる。


たしかにまずい。そう思うとアシュレイは顔を少し赤くしている。

ふむ。この中にはアシュレイの私物がいっぱいあるのか?

パンツやら下着類、それとは別に見てはいけない何かがが入っているのかも知れない。

よし、そうと分かればちょっと中をチェック…


「中を見ると殺すぞ」

「ハイ」


まあそうだよね。プライベートを覗き見するのはよくないよね。

俺らはさくっと婚約したけど、だからってなんでも覗いて良いってもんでもない。


このバッグはしかし、危険物がいっぱいなんだな。

もしこれのセキュリティがグダグダだったらどうなるか。

盗まれたら金や貴重品はおろか、人には見せられないあれやこれやもぶちまけられることになる。

もし、死後に勝手に他人に覗かれたら……ってか俺の部屋のPCの中身どうなったんだろ?


とても思い出してはいけないことに気が付いてしまった。


あのPCの中のエロフォルダは本格的にヤバイものもある。

興味本位で集めちゃう癖があるせいでアブノーマルなのもいっぱいあるんだよなあ!


「あああ!やばいいい!」

「うるさい。早く手を貸せ」

「お、おう」


脱線する思考。

それに慣れ切ったアシュレイは全く気にせずに俺の手を握ると一緒にカバンの紐を掴む。


「魔力を意識しながら紐を引け」


言われたとおりにするとカバンが青白く輝きながら開いた。


「ふう。おいカイト、狼突っ込んでみろよ」


言われたとおりにカバンに狼を突っ込むとしゅるっ!と入った。どう見てもカバンの大きさより大きい狼がカンタンに入ったのだ。


「ぱねえ!」

「すげえだろ?」

「すげえなこれ!うへへ。どんどんいこ」


その辺に転がってる死骸をポイポイポイっと。

数えながら収納していた狼は全部で13匹。それに熊と鹿。いやあこれいいわ。全然重たくなってないし!


「これいいな!くれ!」

「やる訳ないだろ。今ちょっと貸すだけだ。…だが、まあ正式に婚姻してからならいいぞ!」

「こいつめ…」


顔を照れっ照れにして言う事がそれか。

かわいいじゃねえか。


まあ将来の楽しみにしておこう。

中にはアシュレイの他人には見せられない魔王様の秘事がいっぱい込められていることだろう。

美人魔王様の他人には言えない〇〇。

とても楽しみなことだ。


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