第27話 2年目の春


2年目の春がきた。


懸念していた食料問題は割と何とかなった。

冬の終わりごろ、何と川に鮭のような魚が遡上してきたのだ。


大きいし、数も多い。全部獲りつくしてむしゃぶりたいところだが、それはイカン。

出来るだけ産卵の終わった死にかけの個体をゲットし、来年に響かないように魚を獲る。間違えて獲った分は勿論美味しくいただくが。


そのまま焼いても美味いし、塩漬けにしてもいい。

鮭とばを思い出して保存食を作ってみた。

お城に届けてもらったら親父と魔王様が大変喜んだらしい。

もう無いのか、と聞かれたけどもうない。


鮭は孤児たちが、試験的に作った鮭とばは領内のオッサンたちがほとんど食ってしまったのだ。

しょうがないね。来年はいっぱい作って売りだそう。





夏には1000万zあったお金が秋には650万zになり、人が増えてじわじわ出費が増え…春を迎えるころには2000zになった。

万の霊圧が消えた…!?うん、金がない。


農機具を買ったり、パート代で出て行ったり、それから大きいのは街で牛を2頭ペアで、豚も5匹購入した。牛と豚のお金は実際それほどではない。


そして冬の間に突貫工事で豚舎と牛舎を作った。

牧場も隣接するなかなか立派な牛舎が出来た。


更地にした土地に柵をたて、牛の好きそうな草をその辺からブチブチ引き抜いた後は魔力をまた注ぎ込んで定着させる。あとは牛さんが外に出て適当に草を食べ、ウンコをプリプリと出すのだ。


牛さんのウンコは集めて堆肥に、堆肥が完成したら野菜に、野菜が出来たら人間が食べてウンコに、人間のウンコも堆肥の原料に。そしてその堆肥を使ってまたお野菜に…。


つまり世界は堆肥が中心となって回っている。天動説、地動説があるがそうではなかった。中心は天でも地でもなく堆肥なのだ!……まあヒトウンコ製の堆肥は領内外の農家に出荷するのだが。


大丈夫、きちんと発酵させれば安全性は問題ない。

気分の問題だけだ。

俺は嫌だけど。





何とか春に間に合ったので、とりあえずまた夏野菜をいっぱい作ることにした。簡単だし収穫が早いからね。後は実験的に少量の麦畑だ。


米を作りたいと思ったがダメだ。

稲作をしようと思ってもそもそもパッとわかるようなところに米がないからだ。

少なくとも領内で作っているのを見たことがないし、食べたこともない。そのうちみつけよう。


夏野菜で何を作るかと言うと夏野菜の代表格であるトマト、キュウリ、ナスや枝豆にピーマンにオクラだ。

ナス、トマト、スイカ、ニンジンは去年も作った。割と簡単だ。

それに今年は追加して枝豆ピーマンにオクラ。


この辺の夏野菜はそこそこの土に水さえ十分にやっとけばほとんど失敗しない。おまけに成長も早い。

後はサツマイモだ。これも簡単で痩せた土地でも大丈夫。


何故これらを選んだかと言うと一番は簡単であること。

次に収穫が早いから。

まだまだ食い物がないから早い方がいい。

つまり孤児たちの『はぢめてののうぎょう』のためだ。


日照りの時に水やりをさぼったり、真夏日の昼間に水をやると湯になるのでかなりアウトだが…まあ俺は前世の知識もあるのでまず失敗しなさそうなこの辺りをチョイス。

いきなり大失敗して破産すると親父にぶたれかねないからな。



というわけで森を開拓した土地に苗をホイホイ植えさせた。

数なんて数えてない。テキトーにいっぱい。屋敷で種をまいて、ホイホイと魔法で発芽させ、5~10㎝くらいになったやつを年寄りや子供を使って畑に植えさせた。

そこそこ芽が出て伸びてる奴なので、トマトなんかはすぐに花が咲き、小さい実をつける。

後は放っておいてもドンドン収穫できるのだ。


年寄りの農業経験者に子供たちを指示させて動かせる。年寄りは体が動かないだけで口は立つし無駄にでかい声も出る。子供らは耳を抑えながら手足となって動く。まだまだ動ける若いやつらも自分の所が終わってから手伝いに来てくれ、そして子供たちも自分らで出来ることを進んで…ええ奴らやで。




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