第10話 遊びに来たぞ



アーク歴1493年 参の月

リヒタール領


「遊びに来たぞカイト」

「きたのじゃバカイトー!」

「うっせえアホリス!」


参の月、まだ寒い時期にアシュレイとアシュレイの妹であるアフェリスがリヒタール領へ遊びに来た。

一国の王女が揃ってホイホイと遊びに来ていいのかと思うが、まあ事情があるのだ。


アシュレイたちが遊びに来るぞって聞かされたから、お姫様がホイホイ遊びに来ていいのか?って父上に聞くと、何でも魔王城内部が少しきな臭いって事だ。


人族との戦争がどうとかではなく、魔王城の内部に問題があるとの事で魔王の子であるアシュレイとアフェリスがこっちに来るらしい。と言うか来たんだけど。


ウチは代々アークトゥルス魔王家に仕える名門だから安心安全…?か…?

普通きな臭いって言えば内乱とかだろうし、そうするとウチが安心ってなんでわかるんじゃろ?

まあ王妃様の姉妹が嫁いでたところだし?たぶん俺とかもいい遊び相手になるだろうし?って事なんだろうけど…よくわからないことは放置だ。



分かること、分かっていることといえば…


ウチの領民はほとんどがいわゆる魔族だ。

魔族、と一口に言っても範囲が広い。

魔人族、鬼人族、堕天使族に夢魔族、それから吸血鬼なんかもそうだ。


ウチの領地にはいないが竜人族もいるらしい。

それにこの世界にはドラゴンもいるらしい。

ぜひ生ドラゴンを見てみたいものだ。


KoKのゲーム内では種族によって立ち位置がおおむね決まっていた。


魔族、つまりカオスサイドのユニットは先にあげた魔族がほとんどだ。

神族、つまりロウサイドのユニットは神族、天使族、そしてほとんどの人間族。


それからニュートラル、中立のユニットとして獣人族、リザードマン、エルフやドワーフなんかもいる。


そしてよほど排他的な土地以外は魔族の領地にも普通に人間は住んでいる。人間の領地にも魔族は少し住んでいる。

もちろん、迫害や差別の有無については推して知るべしである。

人間同士でも色の違いや民族の違いで差別、迫害はあるのだ。はっきり種族が違えばどうなるかは目に見えている。


第二次人魔戦争の後、人間界の方は大小問わず戦争がずーっと続いているらしいが、魔界の方はここしばらく大きな戦は無い。

あるのは小競り合いや盗賊の討伐くらいだ。


というのも、統治機構が割としっかりしているからである。

魔王が3人と貴族が複数おり、そしてそれら全てを統べる大魔王様がいる。


この大魔王様は前回の人魔大戦を終わらせた英雄であり。

ぶっちゃけるとゲームKoK第2作の主人公だ。

前作主人公様である。

つまりこいつもクソチート野郎だ。会った事は無いけど。


俺のやったゲーム内では登場…したんだっけな?

たぶん登場しなかった。


確か、大魔王様が死んで人魔間の戦争が解禁されてからゲームスタートの筈だから…分からん。

覚えてないなあ。

それから、アフェリスは…


「カイト、なにして遊ぶ?」

「ん?何でもいいぞ」

「おままごとが良いのじゃ」

「うーん、おままごとか…おやつの時間までな?」

「うん!」


まあ俺はおままごとは嫌いなんだけど、アフェリスには何回も付き合わされている。

アシュレイもいやそうな顔をしつつ、付き合う。

だからせめてもの抵抗で時間を短く区切るくらいはさせてもらおう。


ちなみに俺にアシュレイたちが来ることを教えてくれたおばちゃんはウサギ獣人である。

庭師のパリスの奥さんで、若いころはさぞ愛らしかったのだろうと思うが、きちんと可愛いウサ娘ちゃんも年を取ればウサギのオバサンになってしまうのだ。

悲しいことこの上なしじゃあ。


まあウサギおばちゃんの話はどうでもいいか。

問題はどうして領主の息子である俺が知らないことをおばちゃんが知っているのかだ。

何処かで情報が漏洩していることは間違いない。

由々しき事態である。そうおもっていると、


「おう、アシュレイ様たちは来ておるか?お前には言い忘れておったな。ワッハッハ」

「父上…」

「ん?10日ほど前に皆を集めて周知していたのだが、お前はその時裏山で何やらしておっただろう?その時は後になれば儂からいうと言ってあったのだがな。忘れていたのだ。ワハハ」


あー、裏山開拓しようとして下見してた時の話かあ…

なーんだ、良かった良かった。情報漏洩じゃなかった。


俺への連絡だけ忘れられてただけだったのだ。

良かった良かっ…良くねえよ!


「父上。アシュレイたちは情勢不安があるからこちらに逃れてきたのでしょう?ならばそれをペラペラと喋ってはいけません」

「お、おう」

「人の口には戸は立てられぬと言います。父上が話したことでこの館の者以外にもアシュレイたちの動きを知るものが現れます。そこを狙って誘拐などが起こったらどうするのです」

「それは…我が民を疑うのか?」

「そう言うつもりではありませんが、今が危急の時だという意識は持つべきだと思います。古文書にも今と同じような事例があります。政情不安の折に某国の皇位継承者が襲撃されて、それから世界に戦いが広がったそうです」


古文書にはそんなもんない。

俺の頭の中の知識にはあるけど。


「…わかった。少し気を付けてみる。お前もアシュレイ様たちに気を配ってくれ」

「わかりました」


分かった。

出来るだけ一緒に行動をして…そうだな、庭の畑でも手伝わせよう。

いい加減俺一人じゃ無理があるからな。


あー、一緒にダンジョン連れて行ってもいいな。

アホリスはもちろんお留守番で。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る