第7話 時の流れ


はじめてのだんじょん。が終わった。


あれから俺は毎日ダンジョンに通っている。

ダンジョン入り口までは徒歩で30分ほどなのでちょうどいい準備運動になる。


マークスと一緒に軽くジョギングしてダンジョン前へ。

コイツはウチの執事なのだが、毎日俺のダンジョン修行の旅に同行している。暇なんだろうか?


ダンジョンに行ってもやることはほとんど毎日同じである。

1階層に入ってミミズと大乱闘を繰り返し、飛来する蝙蝠には魔法を当てる。これだけだ。


蝙蝠には魔法を当てるといったが、まあそう簡単には当たらない。

飛んで回避する敵に矢を当てるのは並みの苦労ではないのだ。


『当たればいいな』程度で連射するとそのうち当たる、ってのが正しいところだ。

これが面で攻撃できるようなものならいいが、細い矢である。

まあなかなか当たらん。


一撃喰らうと酷いことになるような相手じゃ勿論この戦い方はできないが、相手は雑魚の代名詞のようなふわふわバット。

そのふわふわっとした体当たりはちょっと幸せな気分になる程度で何てことはない。

何なら持って帰って飼いたいくらいだ。

蝙蝠じゃなくて犬猫なら本格的に持って帰ることを検討しただろう。


「クソ!当たれ!」

「当たりませぬなあ…」

「うるせえマークス!だまってろ!わっぷ」


喋ってると顔にふわふわが。クソ!なんだか気持ちいいな!

しかもちょっといい匂いが。すんすん。


こんなふわふわでモフモフを倒さなければならない。

なんと言う悲しいことか…まあレベル上げのためには倒すんだけどね。


「あれ?なんか時間たつの速くない?」


何とかふわふわを3匹やっつけて地上に出た。

外に出たらもう夕焼け空がまぶしいのだ。


あれ?俺ってそんなにダンジョンに熱中してた?

モンスターを倒すことにも慣れてきたし、それほど手間取って時間がかかっている気がしないのだが。

…まあ時間はかかっているとは思うよ。

思うけどね?最初よりは、ず~っと時間かかってない、はず!


朝起きてダンジョン前までジョギングして、ダンジョンに入って2~3回戦闘をしたらマークスに止められてタイムアップ。外に出ればもう夕飯時である。


「こんなに時間過ぎてるっけ?お腹は…」


腹時計はまだ昼飯前を指している。

それほど腹も減っていないのだが。


「おや、坊ちゃんはご存じなかったのですね。実は、ダンジョン内と外は時間の流れが違うようなのです。」

「へー!そいつはすごいな!」


あれ?今まで気づいてなかったの?って顔をしながらマークスが言う。

うっせえ!

気づいてなかったよ!


しかし、時間の流れが違う、か。

時間の流れが遅いならいくらでも修業出来ちゃう。

レベルがモリモリあげられるドン!である。

サイコーかよ。


「…と研究者は言っております。実際に体感でも、簡易な時計を持ち込んでみてもダンジョン内は時間の流れが速く…」

「なに?今何つった!?」


何か恐ろしい事を言っていた気がする。

俺の常識とはだいぶ異なる何かが…?

マークスはきょとんとした顔で先ほどの説明を繰り返す。


「…ダンジョン内部は外より時間の流れが速いのです。階層によりその条件も異なるようですが、およそ5~10倍ほどダンジョン内部の方が時間が早く流れます」

「……えええ?」


ありえんだろ。

何を思ってそんなシステムにしたんだ。開発者はアホか?


じゃあ何か、ダンジョンに潜ってたら実家が火事になってもわかんねーじゃねえか。

それどころか敵が攻めてきたりしても分からないし…ダンジョン制覇してやったぜって帰ってきたら領地が無くなって浦島太郎みたいになってるって事もありうる。


「ダンジョンおっかねえ」

「そうでしょう。もう少し大きくなってから挑むべきかと」

「…まあソレはソレだ」


折角の良い遊び場である。

存分に楽しませてもらわないとな。

うんうん。毎日ダンジョンに通うどころかここで生活してもいいんじゃないか


「体の成長は周りより遅くなります」

「それはイカン。毎日ちゃんと家に帰ってよく寝よう」


アシュレイにこれ以上身長で置いて行かれるのは困る。

背を大きくするのは適度な栄養と睡眠だってどこかで見た。よく食べてよく運動してよく寝よう。運動の方はまあバッチリに近いだろうから、あとは食事と睡眠だ。


マリアに肉と魚をいっぱい出してもらって、良く寝る。

うん、サイコーだな。

ああ、でもレベルアップすればヒョロガリも改善されるかも…難しい所だ。

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