あとがき

著者が『多重人格』という言葉を初めて目にしたのは、約30年前くらいだと記憶しています。『24人のビリーミリガン』という本を読んだのがそれでした。


当時は普段の生活の中でも、アイデンティティーを保持するために、一方では理解に長けた顔を見せ、他方では独りよがりな顔を見せ等、所謂、『あの人は二面性が強い、あの二重人格みたい』といわれる人は多くいました。著者もそうだったかもしれません。


しかし、『24人のビリーミリガン』では、一人の人間の中に多数の人格があり、その個々は、声色、言語、行動様式が変貌すると綴られており、著者はカルト的な感覚、非日常としか捉えきれてませんでした。


しかしながら、昨今、ジェンダーレスをはじめ、多岐にわたる『マイノリティー』を認め、人たる多様性を普遍とするパラダイムが確立しつつあります。


これは、良き時代の流れと思える反面、益々、人間社会が複雑化しているともいえるでしょう。すなわち、社会的平等の水準が高められたと考えるのです。


矛盾するかもしれませんが、平等を追求しようとすればするほど、実は不平等が膨らんでしまうのです。というのは、物事を見やすく、分かりやすくする手段に数値化があります。この数値化は大いに見誤る可能性を秘めています。

例えば、平均値には多くがそれに該当すると捉える場合が多いです。でも、その中にはバラツキが存在します。標準偏差や標準誤差を踏まえて、その平均値を見ないと偏った平均値になるのです。


我々の社会の複雑化が進むと、我々自身の見る目を肥やす、知識を得て、体験し、身につける。より高水準な生きるスキルを持たなくてはならないと考えます。


今回の『ろくじん』の主人公である正田睦基には、人間としての社会学的、生物学的成長の折々に高いスキルを持たせていきました。それに影響される周囲の人々の成長も垣間見られるかと思います。


是非、多くの人に目を通して頂き、ご意見、ご感想を寄せて頂ければ幸いです。

著者自身、益々、高いスキルを身につけるべく精進したいと考えます。

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ろくじん H.K @st3329

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