第10話

ーアルフォート領 ビスケ城内 訓練場ー


「さぁ!若様今日も訓練を始めますよ」

ルマンドさんは今日もやる気マンマンだ。


「ルマンドさんお手柔らかにお願いします。あと若様はやめてください。」

オレは内心諦めながら一応やめるよう言うが効果が無い事はこの1ヶ月でよく分かっている。


「何を言いますか。私はアルフォート様のご子息を立派に育てるのが夢なのです。

なのでご子息候補の談吾様を若様と呼ぶのは何も可笑しくないですよ。」

毎度この調子で何がいけないのか理解していないのだ、もしくは理解しないようにしているのか……まぁもうルマンドさんに関しては諦める事にする。


「それにですな若様は固有スキルの為か教えた事をスルスル吸収してすぐに出来るようになりますので教える側としても嬉しいのですよ。」


確かにルマンドさんの言う通りオレの固有スキル『超早熟』のお掛けで適正武器の槍術もすぐに中級になったし、ルマンドさんも持っている『受け流し』のスキルも覚える事が出来た。


適正武器を調べた後は武器を使った訓練がしばらくなかったので少しガッカリしていたがまずは受け身や攻撃の避け方などを学んで何かあった際に生き残れる確率を上げれる技術を得るのが優先だとルマンドさんは言っていた。


実際、『受け流し』と言うスキルは防御としてはとても優秀で読んで字のごとく、相手の物理的な攻撃を受け流せるので有効打を受ける事がないのだ。もちろん無敵ではなく続けていれば疲労で隙が出来る事もあるし、受け切れない程の威力の攻撃ならば通用しない。

それでも地道に訓練を続ければ誰でも覚えれる簡単なスキルだとルマンドさんは言って居たが後でアルフォート様から聞いた所このスキルは本来は地道な訓練を数年継続しないと取得出来ないスキルで、ルマンドさんは1つの事を永遠に出来る性格の為、取得出来たが本来は熟練の騎士や冒険者でも持っている人が少ない割と取得が難しいスキルらしい。


オレが取得出来たのはスキル保持者のルマンドさんの指導と超早熟の効果があってこれだけ短い期間で取得出来たそうだ。


ちなみにオレが『受け流し』を取得した時にはルマンドさんはやっぱり簡単に覚えれるスキルだとドヤ顔をしていてそれを見たアルフォート様とバースさんが引いて居たのが印象的だった。


受け流しを覚えた後に適正武器の槍の訓練を始めたがこれも超早熟のお陰で中級までが直ぐだった、基本的な動きを教えて貰った後はひたすら反復練習。

と言うかルマンドさんの訓練は基本の反復練習が主体でオレが槍を振ってる時もルマンドさんは適正じゃない槍を一緒に振っている。


ルマンドさんは防御のステータスが元々高く長所を伸ばそうと武器ではなく盾を使った防御技術を訓練しその結果スキルとしては珍しい盾術と言うスキルを取得出来たらしい。


戦闘スタイルとしては盾で受け流して相手の体制が崩れた所を盾で叩きつけると言う感じで受け流しと盾術の組み合わせが良くまた『鉄壁』と言うHPを犠牲に一定時間一切の攻撃が効かなくなるスキル持っていてその関係で『鉄壁のルマンド』と呼ばれて王国の騎士として名が通っているそうだ。


「さて今日はこの位にしてましょ」

ルマンドさんは涼しい表情でそう言った。


「わかっ……りました……。」

オレはまだまだ体力的な余裕がないので武術系の訓練後は毎回喋れなくなる程へばっている。レベルやステータスの差があるとは言えオレの訓練の3倍位の量をこなしているルマンドさんの体力は流石の一言だ。


「若様、次の指導は明後日ですが毎日の訓練は欠かさないようにお願いしますね。」


「分かっていますよ。オレには訓練をサボれる程の余裕はないですし出来るだけ早く体力を付けてバテないようにしたいですから。」


「その意気です!頑張って早く私と模擬戦が出来る位にはなってくださいね。」

ルマンドさんは指導の最後に毎回早く模擬戦をと言ってくるのだ、ビスケには騎士や兵士などは最低限しかおらずルマンドさんと模擬戦ができる人が居ないらしい。


そこで超早熟を持っているオレを育てて自分の模擬戦相手が出来るようにと思っているみたいだ。


「オレも模擬戦はやって見たいですがルマンドさんはとはまだまだ早いですよ。」


「そんな事はないですよ。少なくても技術だけならビスケの一般兵よりも断然上ですし騎士ともいい勝負が出来るかもしれません。」


「技術だけならね!模擬戦をするならもっと体力がないとキツいからまだ先かな」


「まぁ焦っても仕方ないですしゆっくりとやっていきましょう。」


ルマンドさんが早く模擬戦をって言うのに焦るなと?まぁルマンドさんらしいですけど


「そうですねゆっくりやります。また明後日もよろしくお願いします。」


今日のルマンドさんとの訓練は終わり、明日はバースさんとの魔法の訓練と勉強の日だ。


オレの生活サイクルを説明しておくと

この世界は前世の世界と時間感覚はほぼ一緒で1日は24時間、1週間は6日、1ヶ月は30日、12ヶ月で1年と言う感覚。


1日交代でルマンドさんとの武術訓練とバースさんとの魔法訓練と勉強があり、その他に何かあればその都度予定が変わる感じだ。


こうした生活サイクルで1ヶ月が過ぎた。

今後はレベルが10になったら街の外に言ってモンスターを倒しに行ってみる事になっているのでそれが当面の目標であり楽しみになっている。

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