第4話初恋は自分で終わらせないと未練になる



「それが未練だったんだろうな」


 呟く私の声は大人でなく子供の高い声だ。


 私は小学一年生の祖父母の家に引っ越した直後にタイムリープした。

 引っ越した初日に高熱を出して二日寝込んだ間に前の私の記憶を思い出した。

 熱が引いたあとも念のために一日休みになり、その間にタイムリープした原因を考えた。


 おそらく死ぬ最後に思い出した天宮都への初恋のせいだろう。自分で諦めた後悔より、いつのまにか手遅れになった初恋への未練のほうが強いとは、我ながら情けなくて涙がでそうだ。


 運がいいことに寝込んだおかげで過去を変える余裕ができた。元の過去のままなら引っ越した翌日には天宮都の班とは違う私が仲が良かった人物たちがいる班になるとこだったのだ。

 

 私は熱が引いたあとの念のための一日で状況を把握し、母に本当の班で通わせほしいことを願った。

 母は内密に班を変更していたことを私が知っていたことに驚いていたが、その日のうちに連絡を取り合って再び変更してくれた。


 あとの問題は私が前世?で鬱と対人恐怖症を発症していたのでまともに対応出来るかだが、子供相手だったのでなんとか乗り越えることができた。


「なに?どうかした?」

「いえ、なんでもありませんちょっと緊張しているだけです。緑お姉ちゃん」

「もうっ、どうしてそんな嬉しいこと言うかな」


 ギュッと抱きしめられた。

 

 今の私は学校に行く登校途中だ。

 登校中は上級生が下級生の安全の為に手を繋がないといけないらしい。

そんな記憶は無いんだがな・・・。


 私のいる班は二人の六年生、二人の一年生という組み合わせだ。

 ただ、困ったことに男は私一人しかいないのだ。おもちゃにされるのは確定だった。


 班長の緑さんに副班長の真津美さん、二人ともいい人だ。緑さんは私を、真津美さんは天宮とまだまだ落ち着きのない一年生を守るために手を繋いでいる。すこし邪な気持ちも見えるが上級生としての役目は果たしていた。

 お姉ちゃん付けは緑さん、真津美さんの要望である。決して四十過ぎの私から言い出したことではない。本当だ。


 後ろを振り返ると真津美さんが天宮と手を繋いでいる。

 天宮と目が合うと驚いた顔をして背けられた。

 嫌われたのだろうか、それでも前の無表情で顔をあわせることもなかったよりも全然ましだ。

 

「はい、校門で解散ね。貴くんは今日が初めての班登校だったけど大丈夫だったかな?」


 引っ越す前の住んでいた場所の事や、いろいろと緑さんと話し、たまに真津美さんが尋ねてくるのに合わせているとあっという間に学校に着いた。


「ありがとうございます緑お姉ちゃん、真津美お姉ちゃん」

「もぅ~この子ったら!」

「うん反則」


 上級生の二人が身悶えしている。

 ふっふっふ、自称年上キラーを舐めないでいただきたい。


「都ちゃんもありがとうございます。同級生がいてくれて緊張しなくてすみました」


 天宮に頭を下げる。

 小学生男子ならプライドが邪魔するだろうが、こちらは四十過ぎたおっさんの精神だ。しかもプライドなんて何の役にも立たないと知っている。


 なのだが天宮はブスッとした顔でこちらを無視して校舎に向かって走っていった。


「さすがに一年生じゃ女の子の気持ちはわからないか」

「まだまだ子供」


 上級生女子二人にニヤニヤと笑われていた。


 よくわからないが嫌われたのかもしれない。

 それでいいのだ。

 私の初恋は私の行動で終わらなかっことが、私のたった一つの未練だったのだ。どうせ同じ班なのだ。いつか友達くらいにはなれるだろう。


もう一度上級生達に礼を言って、校舎に歩き出した。


 なぜこのタイミングにタイムリープしたのかはわからない。だが、こうして唯一残っていた未練は無くなったのだ。

 あとは残りの長い人生をどう生きるかだ。前回の人生を反省して真面目になる?いやいや、私は自分の事をよく知っている。そこまで人は変わらない、タバコは体を壊すとわかっていても吸う人はいる、ギャンブルで破滅に向かうのを止めらない人もいる。

 ただ両親に後悔させない生き方はしよう。前回は嫌な事から逃げ続けた人生だったが、今回はそんな嫌な事も四十代の精神があれば乗り越えられるかもしれない。・・・多分、少しは、無理かな・・・。


 まあ確実にわかったことはある。

 私の初恋は終わり、俺の過去は不安定なったということだ。



ーーーーーーー

ここまでが貴久の真面目に未練を解決したところです。あとはただただ自分の為だけに暴走していきます。

恋愛はあるのかな・・・。

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