第3話初恋は角砂糖に群がる蟻のように削り取られた

 私は小学一年の二学期に引っ越しをした。

 父方の祖父母が立て続けに亡くなり、その家に誰も住む者がいなかったため私の一家が移り住むことになったのだ。

 運よく学区は変わることはなかった。


 祖父母の家にはよく遊びに行っていたし、近所の子供ともよく遊んでいた。

 そのせいで歪みが起きた。

 小学生の朝の登校はその地域の区域にしたがってどの班に入るのか決まっていた。

 祖父母の家は元の区域より隣の区域の傍にあり、友達もそちらの方でしかも班が集まる集合場所が祖父母の家の前であった。

 その頃の私は気弱なところがある子供だったので、両親は心配になり地域の大人に掛け合って友達がいた班に入れてもらったのだ。


 所詮は小学一年の私、何も知らずに楽しく友達と登校していた。

 それが終わったのは四年生になった時、昔は土曜日登校があって昼には集団下校することになっていたのだ。

 私はいつも通り友達の班にいた。自分はこの班だと思っているので仕方がなかったと思う。

 普段のように友達と下校が始まるまで会話していると、数人の先生が私の元にやって来た。

 何でここにいるの、規則は守りなさいみたいなことを言われた覚えはある。忘れられないのはいつも優しかった先生たちが、無駄なことをさせるなと言わんばかりの冷たい表情の顔だった。

 無理やり腕を掴まれて立たされ校庭にしゃがんでいる全校生徒の前を歩かせられる。


「あなたはこの班の班長なのよ」


 そう言われてある班の前に連れてこられた。


 そこにいたのは一年生の男の子二人と二年生の女の子が一人。

 そして初恋だった同級生の天宮京あまみやみやこが冷たい目で私を見て座っていた。


 混乱したまま班を連れて下校する。

 会話は無い。二年生の女の子がいつも集合する場所を教えてくれたのでそこで解散した。


 私が自分の状況を理解したのはその日の夜に母に教えてもらってだ。

 その時はしょうがないなと思っていた。


 ただ、学校はそのことを知らず、天宮京とその家族も知らなかったということだ。

 天宮のいた班は天宮が2年生の時には一人だけになり、近くの班に入れてもらったらしい。そのままなら天宮も友達ができたその班にいてよかったのだが、三年生になったときに新入生が入り強制的に元の班を学校側が復活させた。

 

 その時に私も戻ればよかったのだろうが、地域と学校側の連絡の不備で私には伝わらなかった。

 一年間、三年生の女の子が急に友達から離されて一年生の子を引率しろと言われてショックは大きかっただろう。そして、何も知らない馬鹿な私が勝手に他の班で楽しそうに登校しているのは嫌うには十分だったにちがいない。

 

 私は班の班長になり、彼女は副班長として三年間、班を維持した。

 下級生とはそれなりに交流はできたが、彼女とは一度も口を聞くことはなかった。

 おそらく彼女は私を恨み嫌っており、私は初恋の人に話しかける勇気は無かった。


 その上で全校生徒の前で私が天宮と一緒の班だということが知れ渡り。学校で一番の美人の天宮と一緒にいるということで私は男子に軽くイジメられた。

 

 一年ほどのイジメを受け、その原因が彼女と登校できることが理由だと知った小学生の私の初恋は蟻が角砂糖を削っていくように消え去った。

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