第9話 夏帆はまな板なんです。

7/30(土)気温30度

・成瀬家午前10時 リビング

「夏帆と秋、お昼ご飯はどうする?」

「僕はいいかな」

「私も」

「じゃあ、私もいっか」

今日はお昼ご飯を食べないで喋ることにした。

「夏帆、身長めっちゃ高くない?」

「まあね、毎日九時くらいにはもう寝てるから」

「はやく寝るとそんなに育つもんなのね、」

「けど彩希も育ってるって」

「この身長のど・こ・がっ!?」

「彩希の場合は身長の分の栄養が全部胸にいってるからなあ」

「これはしょうがないじゃない!私だってこんなに大きくなんてならなくてよかったわよ」

「理想はどんくらいだった?」

「理想は、そうねBカップくらいかしらね」

「で、現実は?」

僕はリビングで二人と離れて勉強をしていたが、僕は問題を解いているふりをして、耳を傾けた。

「、え、えふ」

Fカップ!予想通りっ!

「はあ、私はEくらいかと思っていたけど、ちょっと違ったなあ」

「そんなことで残念がらないでよ」

彩希は夏帆にあきれていた。

「けど私はよく男と間違われるからさ、」

「そりゃそうよ、高身長でそんなキリッとした目して胸もないし、完璧な男よ」

「あははっ!やっぱり言うと思った!彩希、私の彼女になってよ?」

夏帆は笑いながら彩希に言った。

「もう、馬鹿なこと言わないで」

「はーい、すんませーん」

夏帆は軽く謝ると、急に立ち上がった。

「な、なによ」

「ちょっとトイレどこにある!?」

「リビング出て左に曲がると突き当りにあるわよ」

そういうと夏帆はありがとっ!と言ってダッシュでトイレに向かった。

「彩希ねえ、なんか夏帆さん膨らんでなかった?」

「ん、膨らんでたって、、どこが?」

「えっと、ここが」

僕は声に出すのが恥ずかしくて自分のペニスの部分を指さした。

「私は、見てなかったわ、っていうか膨らんでるはずないじゃない」

「そっかあ、膨らんでた気がしたんだけどなあ」

「っていうかさ、あんた夏帆の何処見てんのよ!変態」

「だって気になって」

「無意識だって言うの?」

「うん」

彩希ねえはいつも通りあきれた顔をしていた。

10分後、、、。

「彩希ねえ、夏帆さん遅いね」

「お腹痛そうにしていたから、しょうがないんじゃない?」

「けど、流石に遅すぎない?」

「たしかにそうね」

そんなことを話しているとジャアーっ、とトイレを流す音が聞こえた。

ガチャという音がして、足音が近づいてきた。

「ちょうど出てきたみたいね」

「そうだね」

ガチャ。

「ごめん、マジで腹痛くてさー、」

「いいのよ、全然気にしてないから」

あれ、やっぱり僕の気のせいだったのかな。僕はさっき膨らんで見えていた部分を再度確認したがそこには膨らみなんてなかった。その視線に夏帆さんが気づき、僕に聞いてきた。

「お姉さんのここ、気になる?」

夏帆はからかうように秋葉に聞く。

「い、いえ、僕はそういうの苦手なので、、、」

「へえー、秋葉君は下ネタとか無理なタイプなんだ、ごめんね」

彩希ねえは嘘をついている僕を黙ってみていた。彩希ねえからしてもこの設定のほうが都合がいいらしい。まあ、確かに自分の弟がド変態というのも恥ずかしいだろう。

「だ、大丈夫です」

「けどなんでそんなに見てたの?」

「あの、気のせいだったんですけどさっき夏帆さんがトイレに行くときになんか膨らんでいるように見えて、、、」

そういうと夏帆は少しの間黙り、またすぐに笑い出した。

「やだな~!そんなわけないじゃん!」

「そ、そうですよね、あははっ」

僕の見間違えだったな。まあ、よくよく考えたら夏帆さんのアソコが膨らんでるわけないじゃないか。

「秋葉君ってさ、」

「はい?」

「ほんとに男だよね?」

え、何言ってるんだこの人。もしかして、この人も。

「バカね、どっからどう見ても男でしょ」

彩希ねえがそういうと夏帆さんが僕の顔をじーっと見つめてきた。

「こんなに可愛い顔してるのに?」

やっぱりそうだった。僕は中世的な顔立ちをしているからよく可愛いね、女の子みたいと言われる。昔の僕は可愛がられていてうれしかったけど、今はちゃんとした男として見られたくなっている。が、今までちゃんと男として見てくれたのはたったの2人だけだ。その2人というのは学校で僕といつも一緒にいるやつだけど。

「確かに可愛い顔はしてるけど、残念ながらこの子は男よ」

「はじめてこんなに可愛い顔してる男子みたよ」

夏帆さんはずっと僕の顔を見てくる。

「夏帆さん、その、じっと見られると恥ずかしいです」

僕は見られるのは割と慣れていたが夏帆さんに見られると少しドキドキしてしまった。

「恥ずかしがらなくてもいいのに~!」

「ほーら、秋にちょっかいかけないの」

「はーい」

夏帆は秋の顔を見ていると後ろから彩希ねえに引っ張られ、ソファに座らせられた。

「もう、せっかくいいとこだったのにぃ」

「いいとこ、じゃないでしょ!あんたは私と遊びに来たんでしょ」

「そうでした、てへぺろ」

「そんなことしても可愛くないわよ」

「彩希は昔っからつれないなあ」

「私を釣ろうとしないでくれる!?私魚じゃないし」

彩希の私魚じゃないし、という言葉に夏帆は爆笑していた。

「魚って、彩希ねえそういう意味じゃ、、、」

「じゃあ、どういう意味よっ!」

夏帆にさらに追い打ちがかかり夏帆は笑い転げている。

数分後・・・。

「あーっ、笑った、笑ったー」

「人を笑いものにしないでよね、まったく失礼しちゃうわね」

「彩希ごめんってぇ、今日の夜一緒に寝たげるから」

「マジ?」

彩希ねえの顔がいつにもましてガチの顔をしていた。さすがの夏帆さんも少しビビっていた。

「う、うん」

「ベッド一人用で狭いけどいい?」

彩希は食い気味で夏帆に聞いた。けど寝室があるから、寝室なら2人くらい余裕で寝れると思うけど、、。

「彩希ねえ、寝し、、」

「秋は黙ってて!」

「はい、すみません」

彩希ねえに寝室ならどう?と聞こうとしたが見事に遮られた。彩希ねえ、夏帆さんとくっついて寝たりしたいのかなあ。

「で、一人用でくっついて寝る感じだけどいい!?」

「い、いいよ」

夏帆は彩希の迫力に押されつつなんとか返事をした。やっぱりくっついて寝たいのか。返事をすると彩希はさっきの顔とは真逆の笑顔になった。

「やったぁーっ!じゃあ決まりね」

「う、うん」

夏帆さんなんか、かわいそうだなあ。

ガチャ。

「ただいまー」

あっ、ママが帰ってきた。僕は玄関に走って行った。

「おかえり、ママ!」

「あら秋葉、ただいま、お出迎えかしら」

「うん!荷物持つよ!」

「秋葉は優しいわねえ、ママ助かるわ」

「えへへっ」

僕はやっぱりママが好きだ。ママはいい匂いがするし、おっぱいも大きいし、優しい。僕にとってこれ以上良いママは絶対に存在しないと思う。

「ママ、今日の夜ご飯は何?」

「今日はね、ビーフシチューとグラタンよ」

「やったー!」

僕は夜ご飯のメニューを聞くとママが持っていた買い物袋を持ちリビングに持って行った。

「彩希ねえ、夏帆さん今日の夜ご飯はビーフシチューとグラタンだって!」

「やったー!私好きなのよ、ママのグラタン!」

「ビーフシチューかぁ!楽しみだなーっ!」

3人は夜ご飯まで楽しくおしゃべりをすることにした。

「夏帆って今何部なのよ?」

「私は中学、高校、大学と全部水泳部よ」

「水泳、だからあんたそんなにスラっとしてるのね」

そういうことか、だから褐色肌なのか。脱いだら水着の跡があるんだろうなあ。待てよ、水泳部ってことは普通のスク水じゃなくて競泳水着ってことだよね!?夏帆さん胸はないけど、日焼け跡とか見たら絶対エロいんだろうなあ。

「彩希は何部なの?」

「私は中学、高校、大学、全部陸上部ね」

「陸上かあ、にしては肌白いよね」

「毎回日焼け止め塗ってるからよ」

「そっかあ、だからそんなに焼けてないのか」

「まあ、そうね」

「秋葉君は何部なの?」

「僕はバレー部です」

「へえー、バレーボール」

「はい」

「ポジションはどこなの?」

「セッターです」

「セッターって、スパイク打つ人にボールあげる人?」

「そうです」

「かっこいいなあ」

「かっこいい!?僕にかっこいいって言いましたか!?」

「うん、そうだけどかっこいいって言われるの嫌だったかな」

「逆です!かっこいいって女の人に言われたことなくて、」

「へえー、私はかっこいいと思うけど」

「うれしいですっ!」

「ならよかった!」

やった、初めて女の人にかっこいいって言われた!僕は今までにないくらい上機嫌だった。もう今日は勉強はやめにしよ!

「今度試合とかあったら見に行きたいなあ」

「是非見に来てください!」

「うん!その時は彩希と夕飯作ってくれてる美人なお姉さんと見に行くよ!」

「もう、夏帆ちゃん褒めたってなにも出ないわよ?」

「お姉さんマジ美人っすよ!私が男だったら絶対狙ってました」

「狙うだなんて、狙うほどのものじゃないわよ?」

「絶対そんなことないっすよ、お姉さんスタイル良いし、絶対私だったらたとえ恋人がいても奪っちゃいますね」

「夏帆ちゃんは面白いわね」

ママは笑っていた。

「秋葉君はいいねえ、美人なお姉さんとスタイル抜群のお姉ちゃんがいて」

「うん!」

「もう、秋ったら」

彩希ねえはあきれて言っているようだったが、顔は笑っていた。

「僕、夏帆さんのこと最初は少し怖かったけど話してみたらすごく優しい人でよかった!」

僕は笑顔でそう言うと夏帆さんはガシガシと僕の頭をなでた。

「もう!ほんと可愛いな秋葉君は!」

「あ、ありがとうございます」

僕はまた少し恥ずかしくなってしまった。

・成瀬家午後16時 リビング

喋っている間に時間はあっという間に過ぎていった。


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