第40話 国連が頼りないので結局僕たちが出向きます。ユニオンアース教もわりとチートっぽいです。

「それで、僕たちは何をすればいいんでしょうか?」


「これから追加の派遣がある。その中に紛れ込んで、ユニオンアース教をこっそりと潰してきてほしい。それと多国籍軍の怪しい行動があれば止めてほしい。そちらは三日月くんに頼みたい。根拠があるわけではないが、放っておくとあまりよくない気がするのでな」


「わかりました。三日月さんは行くとして、玲とフランはどうする?」


「行く」


「翔さまが行くならもちろん行きますわ」



◇◇◇



 国連が要求した追加の人員派遣に同行して、サウジアラビアまで来たよ。

 

 なんか雰囲気が暗いんだよな。

 とりあえず現地の自衛隊の指揮官である右原さんと会う。

 だが……



「なんだ、ここはお前ら高校生の実績作りの場じゃないんだがなあ……。探索者協会からの推薦とはいえな。せいぜい怪我をして仕事を増やさんようにしてくれよ」


 とかなんとか言われた。


 それも仕方ないか。

 従軍記録があると箔がつくし、探索者を雇う企業へのアピールにもなるからそれが目当てと思われたんだろう。

 サークル活動でボランティアのリーダーしてました、みたいな?



◇◇◇



 とりあえずの仕事は、自衛隊の治療班に混ざって前線で傷ついた兵士の治療だ。

 軽傷の人しか回されないので退屈だった。

 玲とフランは言い寄ってくる人間を断ることのほうがめんどくさそうだけど。


 戦場で気が昂っているのか、やはり玲とフランを力づくで組み伏せようとする輩もそれなりにいた。

 返り討ちにあってずるずる引きずられていたけれども。

 知らないとはいえレベル99999の玲とフランを襲おうとするなんて、僕からしたら自殺行為にしか見えないんだけどな……。



 そういうことがあると報告をしても改善される様子は一向になかった。

 ただでさえ人手が足りなくて上層部もイライラしてて、そんなことまで手が回らない感じっぽい。



 だいたいそういうときのために職業売春士が配置されてるんだから、そっちを使えばいいのに。

 めっちゃ高給取りらしいですよ。

 比例してサービスがいいかどうかは知らないけど。


 何でかって? 

 戦争時にただで売春させられたって騒いで戦後しばらくして賠償を求めた民族が過去にいたかららしい。

 売春時に金をとり、老いてからは強制されたと騒いで賠償をおかわりするという全て隙を生じぬ二段構えだったと言われている。

 

 そんなわけで多少なりとも事情を知る者たちは某国出身の売春士は利用せず、それ以外を利用する。

 となるとまかないきれないわけで、結局こっちにツケが回ってくるわけだ。

 玲とフランはただでさえ目を惹く美少女なのだから。

 腹が立つのでそんなやつはこっそりテレポートで最前線に送り返してやったけど。

 生きて帰ってこれるかな?


 

◇◇◇



 割り当てられた休息日に、玲とフランとともに『絶・隠行術』を発動して前線に行って様子をみる。

 こっちが本命の任務だからね。



 前線を眺めてみると、幾重にも張られたバリアが見える。

 治療していた兵士から聞いていたとおり、頑強なバリアの向こうから魔法が飛んでくる。

 こちらはバリアを抜けず、向こうからくる魔法も捌き切れず、全く突破できないと言っていたが、鑑定で見てみると納得だ。



 最前線は、騎士系の上位ジョブ【騎士団長】がずらっと並んでいて、ユニークスキルはみな【広範囲化】。

 使っているスキルは物理防御に特化した『パワーシールド』、魔法防御に特化した『サイコシールド』で、これを【広範囲化】により前線全てをカバーしている。

 たとえ一つ二つ破られようが、幾重にも張られたシールドが残っているし、破られても即張り直される。

 上位ジョブの【騎士団長】であれば強度もなかなかのものだ。


 そしてこれらの強靭なバリアに守られた後ろは、魔法使い系の上位ジョブ【マジックマスター】がこれまたずらっと並んでいる。

 ユニークスキル【広範囲化】も完備。

 こいつらがコスパのいい攻撃力高めの単体攻撃魔法を【広範囲化】させて撃ってくる。

 なお、【広範囲化】しても効果は落ちない模様。



 魔法使い部隊の後ろには、ヒーラー系上位ジョブ【ハイプリースト】がたくさん。

 前二つの部隊の魔力が切れそうなのを見計らって『ディスチャージ』で魔力を分け与える。

 もちろん【広範囲化】付きだ。

 また、最前線の騎士軍団に状態異常がかかった場合の治癒も兼ねている。

 【騎士団長】はそもそも状態異常にかかりにくいジョブであるが。


 まだ後ろがあって、さらに錬金術師系の上位ジョブ【アルケミスト】がいて、せっせと魔力を回復するマナポーションを作成している。

 これで【ハイプリースト】が消費した魔力を補うわけだ。



 こりゃ前線を抜けるわけないわ。

 ていうか僕らを除いて最強のジョブとレアスキルの【広範囲化】がぎっしりと詰まってるなんて、世界中でテロを起こせるわけだ。

 そして、開戦時から比べてかなり前線を押し上げられてしまっているらしい。



 二人もこれを見て、


「強すぎ。私たち以外に勝てる者がいない」


「世界最強の軍隊ですわね。群を抜く者がいないけど全ての兵士が最高水準。食料や武器を欠かさなければ無敵ですわ。もしかして露支那軍がここ以外を攻撃しているのは兵糧攻めにするためなのでは?」


 フランのいうとおり物資の調達さえできれば無敵かもしれない。

 『僕が考えた最強の軍隊』を実現したのかな?


 もうあからさまに不自然なので、いったん【神眼を持つ者】にジョブチェンジして、相手方をあらためて詳しく見てみる。


 すると上位ジョブはほとんどがレアなユニークスキル【コピーアンドペースト】で付与されたものと鑑定された。

 マジかよ。

 誰かひとり強い奴がいればそいつのジョブをコピーしてみんなにペーストすれば最強軍団の出来上がりってか。

 ユニスキも同じだな。

 


 あと一つ気になることが。

 以前の日本でのテロのときに【広範囲化】とセットでいたはずの【トランスペアレント】を持ったやつがいないんだよな。

 【トランスペアレント】で透明化した人間を夜中に奇襲させればこっちは既に壊滅してると思うんだけど。

 何かしら制限があったのだろうか。



 一応ディミスティファイを発動してみるが、特に何もおこらなかった。

 ま、いないならいないでいいや。



 ん~、どうしよう。

 いまここで敵のジョブを【リバース】してもいいんだけど、元を断たなきゃ同じことだよね。

 前線は後回しにして内部に侵入するか。



 というわけで前線をすり抜けて敵の後方へ。

 移動している緑の人を追跡していくと、古びた教会の前についた。

 追跡の対象が裏のドアから入っていくのでついていったが、僕たちは入れなかった。


 というか拒絶された感じ? 

 目の前の地味なドアを鑑定してみると、ユニークスキル【ルームマスター】によって許可された人間しか入れない、と出た。


 目の前の教会は、内部がルームマスターにより拡張されたいわばプチダンジョンみたいな感じになっているらしい。


 じゃあ無理やり入ろうか。

 ってことで【時の賢者】の空間魔法スキルを使って空間に穴を開けて侵入。

 ってかさ、ユニオンアース教って何気に逸材揃いじゃない? 



◇◇◇



 中に入ると整然とした迷路が現れた。

 迷路じゃないかもしれないけど、同じような壁とドアが整然と並んでいて十字の通路がそれを区分している感じ。

 【ルームマスター】の性格が表れていそう。



 人の気配がしないドアを勝手に開けてみると、食料とか武器とか、住居スペースとかきっちりしていて当分籠城できそうな感じだった。


 少数ながら人がいるが、それらを避けつつこっそりとドアを開けつづけたら、ある部屋に地下への階段が見つかった。

 そして、そこから激しく何かを打ち付ける音と、男の激しい息遣いが聞こえてきた。

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