そして私は
そして私は知らないまま、その言葉を口にした
私、雨谷ゆりは考えた。
ノンノにハメられて考えた。
足りない頭を認めて考えた。
そして行き着いた。
結局のところ、あれは英治の意志で付き合ったわけじゃない。裏切っていた私が言うことじゃないけれど、あの女は英治の性格を利用して付き合ったのだ。
私と花咲さくらを利用して自分の願いを叶えたのだ。
幼い頃の約束だなんて、絶対嘘。
英治、戸惑っていたもの。
そして英治が目を逸らした時のあの女のいやらしくも歪に歪んだ笑顔、その瞳。
私はぞくりと震えたのだ。
ノンノの言うことが事実ならば、長期に渡る病んだ思いに、英治はこれから侵される。
あの優しい眼差しが澱むのは見たくないし、濁らせた私が言うことではないのだけど、そもそも短期決戦に無理があったのよ。
だけど、このままにしておけば出会った日数はいずれ私を超えるわ。
だから今なのよ。
長期に渡る戦いになるのだとしても、今から始めなければ手遅れになるわ。
彼女は言っていた。初めて同士だと。
それはつまり失敗する可能性が高い。
あんなにも痛かったし、何度も拒否したんだもの。
いかにイカれた女だったとしても、あれには耐えられるはずがない。
英治は真っ白で、まだ何の色にも染まってない。
あんなにも我慢して身につけたのだ。私の手で必ず籠絡して染め上げてみせる。
髪を染めて生まれた自信はそのままに、英治の好きな黒髪に戻して、男のおよそ七割は好きだと言う英治だけの清楚系ビッチになって落としてみせる。
それには自信がある。
おそらくノンノには知識はあっても、技術はないはずだ。男の瞳にいやらしく映えるためには、実践してこそ身につけることが出来る仕草と音がある。
あの男に教わったことなのは癪だけれど。
なりふりなんて、気にしてたからしてやられたのよ。
それに、ノンノには感謝したい。
それはあの花咲さくらを完全にへし折ったこと。
「待っててね、英治。私、浮気くらい何度でも許してあげるから」
その度にワカラセてあげる。
だって私、メインヒロインだもの。
◆
放課後、愛しのダーリンとの待ち合わせしている場所に、またあの女がいた。
えーちゃんの元カノ。
お手軽簡単にお股を開いた女。
それがゆり。
それが雨谷ゆりだ。
そんなしっとりとした名前のせいか、そのままじめじめっとした女で、簡単にビッチビッチしてじゃっぶじゃっぶされながらアンアン喘いでいた女だ。
せっかくギャルっぽくしてあげたのに、また戻してるなぁ。
ちょっと勘違いしちゃったのかな?
清楚系ビッチなんて、簡単なんですけどー。
「はぁ。また待ち伏せ〜? しつこい子だなぁ」
「英治、ちょっといいかしら?」
「あ〜無視するとかこの子ひどーい」
「ッ、お前と話すことなんてないわ。私は英治とお話するのよ。邪魔しないでくれるかしら?」
んふ。プルプル震えて強がってさーだいたいそんなのわたしが許すわけないじゃーん。
えーちゃんもね。
「えーちゃ〜ん、どーするぅ?」
「僕は…話をする気はないよ」
「そんな…」
ほらね。でもこのままだと厄介なストーカーになりそうだなぁ。絶賛今も最中だけども。これだからメンヘラって厄介なのよねー現状が都合よく正しく認識出来ないっていうかー。
どうしよっかな。
あ、んふふ。そーだそーだ。そうしよう。
「英治…お願いッ! ちょっとだけ時間が欲しいの! 私この女に騙され───」
「えーちゃん、だったらこうしない? 雨谷さんとわたしと三人でお勉強でもどうかな〜わたしの家で。だったら良いでしょ?」
んふふ。言わせないよぉ。まーもー無駄だけど。
「…まあ、それなら…いいんじゃないかな」
「んふ。雨谷さんもそれでいいよね?」
「…わか、ったわ…」
「じゃあいこっかぁ。んふふ」
死出の旅路へ一名様ご案内〜
いやそれは約束の地カナーンへかな〜ん。
なんちゃってー
作品テーマはんーどうしよっかな。まー今回はシンプルに、哀、覚えていますか〜? ってどぉかなぁ〜いいかも。
いぇ〜い。ひゅーひゅー。
やっぱりこんな未練、ズタズタに駆逐してこそでしょ〜浮気した女なんてさー。ま、壊れちゃうくらいでちょうど良いかもね。
んふふ。
さくらんにも利用できそー。
あーなんてよく出来た彼女なんだろ、ろ、ろろろ、ろらろりろらら〜
◆
私はいつの間にか寝ていた。
英治が少しずつでもお喋りしてくれるから辿々しくも返して、話して、ノンノに何言われるかわからないから緊張して、一人緊迫してて、呪って、やっぱり行くんじゃなかったって後悔して、喉が渇いて、仕方なくて、飲んで、飲み干して…気づいた時には遅かった。
ノンノが何か盛ったんだわ。
クローゼットの中、口枷に手錠にM字開脚の姿。小さく屈伸は出来そうなくらい…蛙みたいにぴょんぴょんと小さく跳ねるようになら動けるわ。
詰めが甘いわね。
はぁ。英治がしてくれたのなら嬉しいけれど…それはないわ。だってこんなの知らないはずだもの。
それにしても、こんなグッズ持ってるなんて…この女変態じゃない。
英治、大丈夫かしら…
はっ! そうよ。この姿を見せつければこの女の異常さを伝えることが出来るのではないかしら!
そう考えていたら、ガチャリと扉が開いた。そこにその変態女が立っていた。
「うわ、変態だー」
「んむーッ! んむむーッ!」
「んふふ。何言ってるかよくわからないけど、邪魔されたら嫌だし一応ねー」
何笑ってんのよ!
変態はあんたでしょ!
ノンノが何がしたいかなんて丸わかりよ。大方英治とのエッチを見せつけるつもりなんでしょう。寧ろ望むところよ。ここは従順なフリをしてこの女の無様な行いを見て、あとで貶してあげるわ。
するとノンノは「じゃーん」っと言って、何かを見せてくる。
クリップ…? え…?
「っん"ほッ?!」
「そうそう、こうやってピンピンなの全部挟んであげるね。いちにー、んふふ、これは3個かな? 罰が欲しかったでしょ?」
「ん"ほぉぉぉ"ぉ"?!!」
いだぁいいいい!!?
私の突起全てにクリップがつけられた!
しかも小さな鈴が羽根についている!
確かに罰は欲しかったわ! けどそれは英治からであってあんたじゃないわ!
こんな痛みくらいなんなのよ!
「そこで眺めてて。わたしとえーちゃんの睦み合い、楽しんで見ててね? とりあえず三時間はかかるからさぁ。いちお、おけまる置いとくね〜背徳背徳〜」
え…何、なんて言ったの? さん、三時間…?
おけまる…? ってこれおまるじゃない!!
嘘、嘘よね……?
「あと床に棒生やしてるからさー勝手に使っていいからね? 至れり尽くせり気が利くなり〜り、り、りららるらりら〜」
何言って…使わないわよ! いだぁッ!? ちょっと動かすだけで痛い…痺れる…内出血したらどうするのよ!
「その鈴、シャンシャン鳴らしたら、もしかしたらえーちゃん気づいてくれるかも。そしたらわたしも中断するしかなくなるかなぁ。んふふ」
そう言ってクローゼットは閉められた。
◆
クローゼットには穴が開いていた。
そこからは、光の点滅とそれに影光る英治の象徴があった。陰るとシルエットが曖昧になり、光ると輪郭が際立ち、また陰り、否が応でも私の胎を疼かせる。
英治は縛られていた。自ら縛っていたようにも見えたけれど、そんなわけはない。
きっとノンノが脅してるんだわ。
そうして出来上がったのは無抵抗な英治。
ああ、なんてことかしら。
あの時の…あの初めての時の解は、こうだったのかと答え合わせを見せつけられている。
悔しくてたまらない。
一頻り準備が整ったのか、ゆっくりとノンノが英治のそれを捕食するかのようにして、充分に時間をかけて、徐々に腰を落としていった。
私は精一杯シャンシャンと鳴らし抗議した。でも気づいてはもらえない。私の先端を千切れるような痛みが走るのだけど、それは次第に麻痺し、ある種の快感に変わったのは、英治が完全に飲み込まれてすぐだった。
『ンホォ"ォ"ォ"ッッ?!』
(何よこれ…これ何なのよぉぉぉおあッ!?)
私は情け無い姿で涙をこぼしながら達していた。息を整えながらまた覗くと、そこからはノンノの独壇場だった。
英治に跨るノンノの動きは、まるで腰から下が別の生物のように滑らかに駆動し、寸止めしては口直しし、また跨りと繰り返す。
まるで英治が作り替えられていくみたいで、遠くに行くかのようで、涙が止まらないし、シャンシャンも止まらない。
時折、英治が苦悶の声を上げるも、私同様口に枷を嵌められているのか、何を伝えたいのかわからない。
その度にこちらをチラリと見るノンノのだらしない横顔が、私を小馬鹿にしているかのようで腹立たしいけれど、その怒りは覗いている私の罪悪感と背徳感が蓋をし、興奮でひとり気持ちよくなってきてしまう。
もう意識も朦朧としてきて、床に生えている棒に縋るしかなかった。
それからはノンノの動きを真似しながら、こんなに近くて遠い英治を思い何度も何度も何度も虚しく果てたのだ。
そこから意識はなくなった。
◆
クローゼットがガチャリと開いた。どうやら英治は帰ったようで、私はいまだに朦朧としていた。
「うわ、雌くさぁ〜もぉ〜やっぱりお洋服移してて良かったぁ。また来たかったら教えてね。お裾分けしてあげる」
そう言ってのんのは私の髪を掴み、顔を上に向け、口の中に何かを移してきた。
「おぼッッ!?」
口につけられていた口枷はリング状で、口が閉じられなくなっていた。喉が乾いていたからか、まるで染み入るように、ずっと求めていた英治の臭いが脳天まで突き刺さってくる。
濃厚な、雄臭さが鼻に強烈に抜ける。
「んふふ。吐き出さないなんて、随分と仕込まれてんだね〜って気に入ったみたいだね。目、裏返りそーじゃん。んふ」
私は達しながらも自然と舌を懸命に動かしていて、また涙を溢しながらも惨めにもうっとりと酔いしれながら英治を喉で味わっていた。
「あーもう雨雨ふれふれじゃーん。んふふ」
ノンノはしゃがみ込み、地面と繋がっている私を見てそう言った。
「からの〜スィッチィオーン」
「ん"ほぉ"ぉ"ッッ?!!」
これ動くの!?
いやぁあああ!!?
「んふ。あーこれ? 追加欲しいの? じゃあ身体フリフリして。ぴょんぴょんして。シャンシャン鳴らして。そうそう。って早いね〜ひくわ〜マジひくわ〜でもあげなーい。あーむ。ンム、ンム、ンマ、あー濃い。濃い濃い。これちょー好きー」
「ぁ"お"っ!? ぉぉぉお"お"っ!?」
「んふふ。ごめんね? いろいろ。強すぎて。ま、これは提案なんだけど、待ち伏せしないならまた味あわせてあげるし、んー飼ってあげる。条件次第だけど。なる?」
「ぉほぉお"お"っ!?」
違うのこれ止めてぇぇ!!
「えーいやなの? んふふ。えーちゃんの件、まあ、わたしも悪いなって気持ちは少しくらい? あるしー? 家庭教師の件、なんとかしてあげよーか?」
ひぎいい"い"い"っ!? 止めでえ"え"え"っ!
「え、そんなにいや? んふふ。うーんまあ争うならそれでもいいけどさ。あの男、調べたら結構頭いーよ? ちゃんと終わらせてあげるよ?」
いやあ゛あ゛あ゛あ゛っ! いやあ゛あ゛あ゛あ゛っ!
「そんなに嫌なの? 簡単な条件を飲むだけでいいのに。んふふ。わたしのこと…身に沁みてわかったでしょ? わかったならシャンシャン鳴らそうね。あ、口枷外してあげる」
「みょう、にゃんでも、ぃいわよ、あはは、あははははははは、あはははははははは」
「あ、壊れた。ウケる。うんうん。そっかそっか。そんなに嬉しいんだーペット飼うなんてまだまだ先かなーって思ってたけど、これはいろいろ仕込まないとだね〜〜んふふ。さてと、お片付けお片付け…もぉカス塗れじゃーん。ん? くんくん。うわ。これ常在菌死んでない? 洗いすぎぃぃ。ちゃんとクリニック行こうねー。んふふふ。ほらアヘってないでほらピースピース。契約だよ〜?」
「ぴーしゅ、ぴーしゅ、ぴーしゅう…」
「テーマはバター犬と彼シャツのわたし。愛する貴方のため〜パシャリ。り、り、ら、ら、らるらりら〜あーエモいよぉ───」
そして私は、ノンノのペットとして契約した。英治の少しでも身近に居れるのであれば、もうそれで良かった。
英治に拒絶されるのだけは、もう嫌だった。
「そうそう、バター犬の歴史って意外と長くってさー。勘違いしてる人多いんだけどね、昔々、そのまた大昔は悪いことした人への罰なんだよね〜それにそもそもバターと犬じゃないんだよ。ゆりかすは知ってるかな〜?」
ノンノが何か言っているみたいだけど、知らないし、聞こえない。
それより、意識が途切れ途切れに飛ぶ中で、私は背徳と罪悪と興奮と快感と焦燥と憐憫が上手く噛み合ってしまい、戻れないところまで来てしまっていた。
白目に裏返り、戻る度に、朧げに映るノンノからの点滅の後光が、英治の影と重なって、私を責め立てる。
そうよ、きて、きて、英治もっときて。
「答えは〜塩とヤギさん、なんだよね〜〜。ほら、うまく鳴いてね」
「ら、らめぇぇえ…らめぇぇ…」
「…んん? 違うよ? 正解はメーだよ? メーメーだよ?」
「らめぇえ…らめぇぇえええ…」
「もぉー! 違うってば!! らはいらないの! らは!」
「らめぇえ"っ! らめぇぇえ"っ!!」
「もぉ──!! このペットなんなの……あ、スィッチ忘れてた。ごめりんこ。んふふ。はいポチっとな」
「それらめえぇぇぇえ"え"え"────!!」
そして私は、ノンノが何を言っているかなど知らないまま、英治への誘いの言葉を口にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます