▽ 登場悪魔紹介

 ◇…キャラ説明

 ※…作者コメント


 ネタバレがありますので、本編読了後に見ることをお勧めします。


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闇を庇護する者

【悪魔の王】


◇本来は魂の残骸放棄場だった闇の空間を、保護する場として別の“世界”として作り変えた人物。教会創設者でもあり、神を敬愛する信心深い聖職者。『咎の証が浮かんだ者に適切な処理を行う』と、彼が保護する空間には辿り着けないようになっている。本来は、闇へ堕ちる者を見捨てない為の救済措置だったのだが、保護された者の魂は闇の世界の影響によって反転し、悪魔化しては神を攻撃する存在になってしまった。しかし王本人の意識はもはや闇の中を見てはいない。


 ファニーシュたちのいる世界の他にも異世界の闇にも管を通し、堕ちて来る者たちを保護し続けている。そちらに全神経を集中させているため、口数は多くなく、新参悪魔の案内はザヌにまかせっきり。


 本来干渉し合うはずの無い世界にも、召喚陣さえ合っていれば悪魔を通す穴が出来てしまった為、世界を管理する存在からは危険視されているが、かなり特殊な空間の為に手出しできず、今もなお悪魔を数多世界に排出させる存在となってしまった。


 悪魔化したパルフェがちょっとだけ顔を合わせた人物ですね。

 私が前作で書いた『カミサマの玩具箱』のラスボスがやろうとしたけれど出来なかったことを、とっくの昔に成功させた人。( “良くない何か”ではなく本当の意味で)神様が手出しできない、死者の為の世界を作ってしまった人です。例に漏れず、この方も悪魔化しています。

 教会創設者の男性がいない、知らないことを誰も疑問に思うことはない、とパルフェが独白するシーンがちらっとありましたが、その理由がこれです。

 悪魔の王は敬虔な神(良くない何か)の信者でした。しかしそれゆえに堕ちゆく者にも救いを求め、闇の中に小さな保護施設を作ってしまいました。そしてそれを悪魔の王自身が秘匿しました。だって闇に堕ちても守ってもらえるなら、生きている人が皆闇堕ちを厭わなくなってしまいますからね。ただし、パルフェは彼をもっと悪い存在(神を離反し、わざと闇へと深く堕としている)だと認識していたので、姉が彼の手に落ちてしまうのを阻止したかったようです。

 ただ物語的には、『妹に殺意を抱いてしまうファニーシュが、やり直しの果てに何を思うのか』というのがメインだったので、『闇堕ちしても保護されるし、悪魔になるのもいいもんだ!』みたいに読めちゃうと、「じゃあさっさと堕ちろや」となってしまうかな、と思ったのでこの辺の事情はざっくりカットしています。

 もしも私が書いた他作品で今後悪魔が出てきたら、この空間出身だと思ってください。


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善良な破壊者

【ラァム】


◇一つ目の大烏。


 悪魔伯爵と名乗るだけあり、悪魔となってからまだ日の浅い若者でありながらも強い攻撃力を誇る呪いの力を持つ他、町や人の尊厳の破壊や、指定された物を移動させることが出来る(大抵の場合は、召喚者はその力を用いて財宝を手に入れようとする)。基本的には誰ともつるまないで単独行動している。


 召喚陣は、一ミリの狂いもない完璧なものでしか呼び出せない。供物は人間の女性であれば何でもよい。


 人間時代は、奇病『正直病』の患者。嘘がつけないという特性から、盗賊団に聞かれるがままに財宝の在処を答え、結果的に家どころか住んでいた町や仲の良かった人々を失い、それらの罪を全て押し付けられて亡くなっている。


 ファニーシュが最初に契約した悪魔です。人間時代から反転して、『大事な事は隠し嘘ばかり言い、飄々とあくどいことばかり提案する』性格になっています。

 動かしていて楽しいキャラクターで、ツッコミ役としては一番適任だった気もしますね。

 元ネタは『ラウム』です。外見は分からなかったので、他の悪魔と被らないようにカラスになっています。


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博愛の兵士

【ベリー】


◇全身に赤い衣服を身に纏い、赤い馬に跨った兵士の男。顔は上から線でぐちゃぐちゃに落書きされたように潰れている他、宝石の剥げたボロボロの王冠を被っている。常に声を張り上げており、非常にうるさい。


 悪魔公爵を名乗っており、本人は然程攻撃的な能力を有していないものの、多くの契約者を闇に引きずり込み、従属させている。ファニーシュもこの軍団の一員にされる予定だったが……。

 金属を黄金に変える力、および人を尊厳をもって飾る力を持つ。また質問には比較的(他の悪魔と比較すると)真摯に回答してくれるが、根本的に嘘吐きの為、契約時に『嘘を吐かないこと』を明記する必要がある。


 召喚陣は、完璧でも雑でも成功率は五分。供物は木の根と豚の皮だが、これを用意したとしても召喚に応じるかどうかは分からないと言われる程の気まぐれ屋。


 人間時代は博愛主義で、誰に対してもいい顔をする人物だった。女性に騙され借金を背負わされた挙句に戦場の前線に送り出され、誰も攻撃できずに敵兵に嬲り殺されてしまった。奇病患者ではないが、魂が穢れ切ったことで悪魔となった。


 ファニーシュが二番目に契約し、他の悪魔と違って手心を加えずきっちりと悪魔らしい契約を交わしてきた悪魔です。人間時代から反転して、『全てに対して嘲笑的で、安全な位置から攻撃をする』性格になっています。

 他の悪魔のように契約が終わってすぐ退場とせず、穢れた魂を持って行こうと画策していましたが、フルゥに邪魔されてしまいました。タダ働きさせられた挙句に報酬無しですから、闇の中でフルゥに会う度、喧嘩でもしているのではないでしょうか。

 ファニーシュと喋らせるとどちらも大声を張り上げている為、文字だけなのに「うるせえ!!」という気分で会話させていました。

 元ネタは『ベリト』です。


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無垢なる咎人

【ザヌ】


◇巨大な翼を持った牡牛。


 悪魔総裁を名乗り、名も無き悪魔の大群を有する。数千年前時点で既に悪魔として名を馳せている古株であり、悪魔の王とも付き合いが長い。物腰柔らかで、動きも喋り方も静か。


 ワインを水に、血をワインに、水をワインに変質させることができる他、あらゆる金属をその領地の硬貨に変える力を持つ。また、契約者を機知に富ませることが趣味で、これにより契約者の多くは世界の仕組みを知り発狂するか、あるいは秘密を守る者によって始末される。


 召喚陣は非常に大型で、リャーナルド家で言えばファニーシュの自室ギリギリいっぱいを使って、二時間以内に完成させる必要がある。供物は、血を抜いた鼠を五匹用意し、現れる名も無き悪魔の試練に耐える事。


 人間時代は奇病『聖女病』を患っており、幻聴を神託だと信じてそれに従い振る舞い、神の怒りを買って咎の証が浮かんでしまった。家族や友人らと縁を切る前に風邪で亡くなってしまった為、関わりのあった人間全員が闇へと落ちてしまっている。悪魔となったザヌは、彼らを一人一人探して保護していく内に、迷子になっていた他の人間も拾い上げ、いつしか総裁となった。


 名も無き悪魔を数えなければ、ファニーシュが三番目に契約した悪魔です。人間時代から反転して、『言葉や行動の真意を探る』事を重視する性格になっています。

 過去の自分とファニーシュが所々似ていた為、気になって手を貸してくれました。その経緯から相当甘い対応をしていますが、実際は神父をワンパンKOさせるような行為を契約者にも容赦なくやる悪魔です。気をつけましょう。

 書いている最中「知ってるなら今ここで話せや」を私から五回ぐらい引き出した人物です。もったいぶるんじゃないよ。

 元ネタは『ザガン』です。


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仁徳な賭博者

【バルバ】


◇4つのトランペットを持った、狩人の姿をしている。


 悪魔公爵、と呼ばれているが(他の悪魔は大抵自称だが、バルバは他称)本人は不本意な様子。人間の善意成る行動に酷い拒否感がある為、良かれと思って手を差し出すと攻撃的になる。悪魔になってすぐの右往左往していた頃、たまたま近くを通ったザヌの大群に紛れ、いつの間にか大群の一員になっていた男。そのせいかザヌからは良いように扱われがち。


 魔術的に価値のある物の場所を言い当てる他、動物の言葉を理解できる能力を持つ。また、人間の感情をコントロールし、友情を回復することが出来るとされている。ただしこれらの力を使わせるには、契約者はバルバとの賭けに勝つ必要がある。


 召喚陣は正三角形を一つ書くだけ。供物は硬貨を三十枚縦に積み上げて置くこと。ただし、召喚成功率は一割にも満たない上に、名も無き低級悪魔が顔を出す可能性の方が高い。


 人間時代は奇病『口縫い病』を患っていた。綿が口から出るだけの自分と違い、気管系の大病を患う弟の為に薬代を稼ごうと、豪運であることを生かし、賭博で勝ち続け大金を手に入れていたが、周囲の人間のイカサマによって大負け。賭け金が無くなった彼は、当時はまだ病名もつけられていなかった自身を賭け、大敗。見世物小屋に売られた彼は、綿を吐く瞬間を客に見せるために口を縫い合わせられたせいで喉を詰まらせ、死亡した。


 パルフェ編が始まった裏で、ファニーシュが契約していた悪魔です。人間時代から反転して『慎重』な性格になっているものの、『賭けに負ければ従う』という人間時代の一面が残ってもいます。

 パルフェ目線での物語に切り替わっていた為、彼との関わりをあまり書けなかったのが残念……。本当はベリーの前に契約予定だったんですが、ちょっと話の都合上削っちゃったので、ねじ込みはしたんですが……。

 比較的穏健派の悪魔であるバルバですが、善意を毛嫌いする傾向にあるため、ファニーシュとは実は相性がよくありません。ザヌの命令で契約していなければ、何かしらのタイミングでブチ切れられていたと思いますね。

 元ネタは『バルバトス』です。


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繰り返す聖者

【フルゥ】


◇黒い蝙蝠翼が生えた鹿で、前足は爪が伸びた人間のような手をしている。何でもないことでよく笑う。老婆のようなしわがれた声をしている。


 新参悪魔でありながらも、大伯爵を名乗る悪魔。非常に攻撃的で、また人の話を常に疑ってくる。契約者諸共焼き殺す程の力を持つため、召喚には向かないと言われている。また悪魔公爵ベリーと犬猿の仲で、契約者同士で顔を合わせると契約者そっちのけで戦ってしまう為、他に悪魔召喚者がいないか気をつけなければならない。


 機嫌が良ければ、秘密や神聖な物事に関する質問に対して真実を答えてくれる他、男女の愛を引き起こし、雷や嵐を呼び寄せる。


 召喚陣は文庫サイズの紙に、家族の名前と共に描く事。供物は供え花を剪定した際の枝。マシュマロを挟んだクッキーや、藍銅鉱、孔雀石などを置くと、小悪魔が現れ、つられるようにしてフルゥが現れることがある、という噂がある。契約終了後、書き連ねた家族の魂も食らうとされている。


 ファニーシュが最後に契約した悪魔、もとい、妹のパルフェですね。ここでの説明は、物語から数年経ち、後々悪魔として人の前に現れた時のものです。人間時代から反転して、『常に言葉を疑い、攻撃的。またゲラゲラと品の無い笑い声を上げる』そんな性格になっています。

 実は当初、パルフェが悪魔になる予定はありませんでした。そのため、フルゥも初期案にはおらず、物語も『ザヌの契約したことで真実を知ったファニーシュでしたが、アホなのでやり直し後も上手く行きませんでした』という展開でした。ただ、書いている内に『悪魔の能力による巻き戻り』が『神の加護を得た妹が、神を脅した結果巻き戻っている』という展開に変わったことで、「あー、これはもう、パルフェが何か代償を受けないと駄目だ」となって、フルゥが誕生しました。

 ベリーから姉を奪い返した彼女は、今日も元気に闇の中を闊歩していることでしょう。

 元ネタは『フルフール』です。


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無邪気な愚者

【   】


◇菜種色の髪、百群色の目をした、八歳程度の人間の少女の姿をしている。


 フルゥと共に行動している名も無き悪魔で、やたら元気がいい。この子が「家族は一緒にいるべきよ!」と言うので、フルゥの契約時には契約者の家族も自動的に組み込まれる。契約者が独り身の時は、契約者の一番近くにいた人間をランダムで要求する。


 これといった力は無いが、彼女が嫌がることをするとフルゥがとても怒る為、気を付ける必要あり。他の悪魔と違い、穢れた魂よりも清らかな魂に惹かれる傾向にある。


 召喚陣は、フルゥと同じもの。ただし、供物がお菓子や甘い物だと、他の召喚陣でも顔を見せることがある。


 主人公のファニーシュの、その後の姿です。名前はありませんが、フルゥからは『お姉様』と呼ばれています。

 ベリーとの契約達成時にフルゥが強奪した影響で、反転せず、闇の中を生きることが出来る人間となっています。ちょっとしたバグですね。まあ元々二律背反というか、攻撃的だったり優しかったりする子なので、反転したところであんまり変わりはしなさそうだな、という気はします。ただまあ、人間から見ると、召喚陣から出て来る上に、フルゥとべったりなので、「人の姿をしているけれど、悪魔なんだろな……」という風に受け取られています。

 パルフェの他にも両親やリーヴィ(こちらは悪魔化していますが)と仲良く暮らすことが出来て、願いが叶って大層喜んでいます。ラァムみたいに遊んでくれる悪魔もいますし、先祖がやらかした変な責務も背負わないでいいし、こっちに来て正解だったのかもしれません。


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あほ令嬢は死んでも治らない。 灯針スミレ @hibari002

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