第3話 坂本さんとデート その1

 ピーンポーンパーンポーンと今日最後の授業の終わりを知らせるチャイムがなった。


「はぁ、やっと授業が終わったね」


 坂本さんは気怠げにそう言った。俺はそれに対して頷く。


「これからモデルの仕事もあるから今日はもう帰るね! オタク君じゃあね!」


 と坂本さんが立ち上がったので俺は彼女を止めた。そして黒板に指を向けた。


「オタク君、いくらエリナさんと離れたくないからって止めても……え? 違う? あれ、今日の掃除当番ってオタク君と私?」


 掃除を1人でやるのは自分も面倒だ。


「掃除していきたいけど撮影時間に間に合わないー!」


 そう言って彼女は地団駄を踏みながら一回転した。


「あっ! そうだ! 今日オタク君には1人で掃除してもらって、そのお礼に明日は休みだしデートしてあげるよ!」


 と名案を思いついたかの様に手を叩いてそう言った。

 俺がなんて答えるか迷っていると彼女は続けて言った。


「オタク君、彼女作りたいんでしょ? もしかしたら明日のデートでオタク君の事好きになるかもよ?」


 そんな事を言われたら了承するしかない。


「分かってくれたんだ! ありがとう! じゃあ明日駅前の広場で1時に集合ね! じゃあね!」


 そう言ってドタドタと足音を鳴らしながら彼女は仕事へ向かった。


 俺はその日デートのことで頭がいっぱいになって掃除に集中できなかった。

  





 次の日

 俺は20分前から駅前で坂本さんを待っていた。


「あっ、いたいた! オタクくーん!」

 

 声のした方を向くと坂本さんがいた。

 短めのシャツとスカートを着てヘソを出した格好をしているが坂本さんのスタイルがいいためすごく似合っていた。


「どう? 私の服? 似合ってる?」


 と言われたので素直に似合っていると答えた。


「そう? 似合ってるって? 嬉しいな! ……オタク君の服は何というかパッとしないね」


 と正直な感想を言われて倒れ込んでしまいそうになる。


「よし! じゃあモデルの私がコーディネートしてあげよう! コーディネートはコーデネートってね!」


 うぅ、凄く寒いです。


「そんな顔しないでよ! ほら早く服屋さんにいくよ!」


 彼女は顔を赤くしながら俺の手を引っ張って走り出した。





「うーん、これをこうして……ちょっと動かないでね……」


 坂本さんに服を着せてもらっているが距離が近くて吐息が当たって恥ずかしい。


「うん、これでよし! 鏡を確認してみて」


 そう言われて鏡の前に立つと確かに普段よりもかっこよく見える。


「おっ、満足してくれたみたいだね。オタク君は素材は悪くないんだからもっと身だしなみをしっかりしたら女の子にもモテると思うよ」


 そう言われて恥ずかしくなりながらもお礼を言う。


「どういたしまして! そして今回その服はエリナさんからのプレゼントです! 大切に着てよー?」


 と言うが申し訳ない。服代も高いはずだ。


「申し訳ないって? いいよ。自慢じゃないけどお金は待ってるからね! むぅ、納得してない顔だ。じゃあ次に行くお店はお金出してよ」


 まあそれなら……


「よし! じゃあ次はカフェに行こっか。普段は体型を気にして我慢してるから今日は沢山食べるぞー!」


 そう意気込んでいる彼女をみて少し笑ってしまう。

 そして俺達は並んで歩きながらカフェに向かうのだった。

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