【エッセイ】■配達員■の諜報天国【製作記】

中村尚裕

【エッセイ】■配達員■の諜報天国【製作記】

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 実は私、『作品製作過程というStory』には途轍もない面白さと価値がある――という話に共感を覚えるクチです。


 このお話は最近改めて認識する機会に恵まれたものですが。

 ちょうど『第一回・夜見ベルノ小説大賞』というイヴェントへ参戦するに当たり、参加作品の製作過程の記録もある程度残してあったし――ということで。


 イヴェント参加作品『■配達員■の諜報天国』の【製作記】をお送りします。

 本来ならば作品製作の状況をリアル・タイムでお伝えするのが望ましいところですが、実験を兼ねて今回は七転八倒を振り返りつつの記録です。

 シリアス一辺倒の本編とは正反対をいく記録の数々、併せてお楽しみいただければ幸いです。



 さて表紙に掲げましたのは、本編の物語が始まります現地の写真。物語はここを起点に、実在の風景に沿って展開します。

 このベンチ、実際にどこを映したのか。

 その風景を推定し、あるいは辿っていただく試みというのも、面白そうです。


 まずは、『製作過程を楽しむ』ご提案まで――と申し上げたいところですが。

 この写真を撮った取材の機会、執筆途中でたまたま都合が合致したものです。気付いて動いて、現地で資料写真を撮りまくったら――実に1.66GBという大容量に(汗)。


 この辺り、ネタの膨らみ方に関する経緯としてお話ししましょう。


 この『■配達員■の諜報天国』という作品、当初から諜報ネタ(シリアス)とは決めて、ネタ出しを兼ねて色々と調べつつ、想像を膨らませていったものですが。

 これが3000字まで書いていったら、想像にどんどん現実要素がハマっていく――という現象が起きまして。

 途中から想像と現実の割合が逆転した形ですね。


 で、ここで現地の近くへ赴く機会が訪れます。元は別件ですが。

 で、気付いちゃうんですよ。


「これ現地を確かめる好機じゃん!」←


 ハイ行くしかありませんね。気付いちゃったんですから。←


 で、行って参りました現地。

 まずは出発点とその周辺(表紙のベンチの辺りですね)。話の流れも踏まえて歩き回ります。

 元々話の半ばちょっとまでは書いていたわけですし、つまりは地図やら駅構内図やら何やら参照してネタを拾っていたわけですが。


「さすが現実。リアルだ」←をい

「想像よりテクニカルなことができる!?」←収穫


 つまり、現実が想像に勝っちゃった部分というのが多々。←


 ロケハンに出る理由というか動機が腑に落ちますね。

 現実を元にネタ出ししている時点で実感はありましたが確信。現実ってネタの宝庫ですわ。←今さらながら



 とまあ、作中の動きを検討・検証しつつの現地取材だったわけですが。

 次はそれを受けて膨らんだイメージを、限られた字数(5000字)にどう落とすか、というところですね。


 この流れで、賢明な読者の皆様はお察しでありましょうが。←言ってみたかった


 それはもう書き直したくなって色々と(爆)。


 いやぁこれだけネタがあるとワクワクしてきますでしょ?←なお5000字制限

 大枠を変える余裕は紙幅にありませんし、細部を書き込む紙幅もありませんが、そこは匂わせるに留めれば。←


 というわけで、結局冒頭322字(出発点)を残して書き直し。←

 いや面白くなるんならネタ採用一択でしょ。←悩んだ自分を論破

 で、実際書いてみたら進む進む。元の展開が頭にあるのも一因ですが。ただ、同等の内容が3272字(1割増)――に膨らんだところで、やな予感を覚えたのですけれども。


私「後半の展開で(字数は)何とか調整できるだろ!」←それ楽観じゃなく突貫


 まあ『現場百遍』、実際にシーンを描いて筆に訊いてみなければ判らぬことは多々ありますし。←個人差があります

 とにかく書いてみましょう。幸い後半の展開も現地のネタで捗ります。字数に関してはヒヤヒヤですが。


 字数に関しては、この辺りからシーンごとに総文字数を強く意識しておりますね。展開が進む(シーン切り替え)ごとの記録を残しています。


3272字

3813字

4134字

4414字

4731字


 もうラスト・シーンに至っては「269字で書くんかい!」と自分でツッコミを入れましたね、ハイ。←


 この辺り、『製作過程をともに楽しむ』というコンセプトなら、ここは一喜一憂のハラハラをリアル・タイムで発信するところでしょうね。←Twitterで筆が止まる説


 さて、問題の総文字数。

 制限内で――収まった\(^o^)/!(Google Drive調べ)←4999字

 ――と喜んでいたら。


【悲報】応募先の投稿サイトさんでは字数カウントのルールが違っていましたよorz。←5155字


 改行記号カウントか? 空白カウントか!? ←動揺は隠せない


 まあいくら嘆こうが、カウントのルールはあくまでも応募先である投稿サイトさんのものが基準です。これは動いてくれません。


 削ります。相手は応募規定です。無情です。


 置換できる表現を、語感やら語呂やらを考慮しつつ置き換えていきます。


 トライすること何度目&何周目になるやら。

 総文字数5000ジャスト!

 ようやく何とかなりました(私ヘロヘロ)。


 何とかなったっていうことは、投稿できるってことです。よっしゃー!

 ですが、それには『あらすじ欄に書き込む【予告編】』が必要です。

 つまり、準備はまだあるわけです。←つづく



 そんなこんなで、次は投稿に際して作成すべき『あらすじ』欄の内容、我流で言い換えれば【予告編】のお話です。


 さて、小説本編を公開する前に。

 いわゆる『あらすじ』が必要です。これは投稿システムとしてもそうですが、観客の皆さんに興味を持っていただくきっかけを増やす、ということにも繋がります。

 ただしこの『あらすじ』、作品をどう紹介するか――という腕の見せどころでもあります。


 さて、私の方針は「『あらすじ』欄に書くべきは【予告編】だ!」というもの。

 作品を紹介する上では、先人の知恵が役立つはず。それが【予告編】というわけです。

 私は主に『良質と感じる洋画とアニメーション』からヒントをいただいております。


 で、この【予告編】。

 洋画やアニメーションがヒントというからには、映像イメージをよく重んじます。

 しかも『タイトルと科白以外に言葉(ナレーション)が入らないのが好き』。それを言語化する、と。

 この言語化、『装甲騎兵ボトムズ』(高橋良輔監督)の予告編から大変影響をいただいております。


 さて【予告編】作成に当たっては。

 まず一人ブレインストーミングとして、合いそうな言葉をどんどん連想で書き付けていきます。


 以下にその一部を(順不同)。



虚偽


狸と狐の奪い合い。


掴ませる


密やかに


暗躍、跋扈、

諜報天国


暗躍の街、跋扈の地。

陽の陰、灯の影、

ひがかげる。

人の陰。

翳る


探る。運ぶ。


持ち出す。


知るも地獄、知らぬも地獄。

知るも知らぬも隔てなく。



 これに本編から科白を引用、序盤から作品の雰囲気を象徴しそうな物を選び、同じく象徴的なアオリと組み合わせます。

 以下のサンプルは【予告編】の試作版から。



■配達■仕事に想定外。〈マークされたわ〉

適応するのも任のうち。〈了解、プランB〉


しかし。〈張られてないか?〉

どうにも。〈囮を持ち出すから〉

雲行きが。〈敵が黙ってるか?〉



 これを繰り返しつつ、全体の流れを持たせて【試作】してみたのがこちら。



【試作】【予告編】


■配達■仕事に想定外。〈マークされたわ〉

適応するのも任のうち。〈了解、プランB〉


しかし。〈張られてないか?〉

どうにも。〈囮を持ち出すから〉

雲行きが。〈敵が黙ってるか?〉


迫る敵。〈敵が1人残ってる〉

振り切れ。〈フォローするわ。行って!〉

手を尽くせ。〈抜け穴を〉


諜報天国。

日常の裏。

暗躍。暗闘。当たり前。


『■配達員■の諜報天国』


この戦場に、弾丸は飛ばない。



 これで【予告編】全体の雰囲気を、本編と見比べてみます。

 今回は雰囲気をもっとシリアスに寄せたかったので、修正をかけています。



【キャッチコピィ】

この戦場に、弾丸(たま)は飛ばない。



【予告編】


諜報天国――。

策謀飛び交う、ここは戦場。


ゆえに■配達■、これも戦い。


想定外。〈マークされたわ〉

臨機応変。〈了解、プランB〉


しかし。〈張られてないか?〉

どうにも。〈本命をお願い〉

雲行きが。〈敵が黙ってるか?〉


敵の影。〈1人残ってる〉

迫りくる。〈フォローするわ。行って!〉

引き離せ。〈抜け穴を〉

手を尽くせ。〈座標を送るわ〉


衆人環視の戦場で。

敵意と害意が密かに絡む。


【■配達員■の諜報天国】


この戦場に、弾丸は飛ばない。



 【キャッチコピィ】は【試作】の過程で思い付いたもので、気に入ってそのまま採用しています。

 応募先の投稿サイトさんでは出番がありませんが、そこはそれ他サイトでもTwitterでも役に立ちますので。



 そんなこんなで本編分、表紙を除いてはご紹介できたかというところ。

 七転八倒の製作過程、お楽しみいただけましたら幸いです。


 よろしければまたお付き合い下さいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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