プロローグ


 世界にわずか三つしか存在しない、とある特殊な目的を持った高校。その内一つがこの日本に存在している。



 Archeologicai School(アーキオロジカル スクール)



 日本では考古学学校、略して考校と呼ばれるその学校では、考古学にまつわるあらゆる教育を行なっており、毎年考古学に携わりたいと願う多くの若者が志望し、そして多くの若者がその校舎に足を踏み入れることなく踵を返すことを余儀なくされていた。


 多くの涙を流させたその最たる原因は学力……ではない。学者になるのだから学力が必要なのは当然だが、それを目指すのだから学力面で問題のある学生の方が少ないだろう。

 そして、金銭の問題でもない。未来ある考古学者の卵たちのため、世界中の考古学者たちが学校を支援しているため学費は無料。それどころか学生寮も無料で生活費どころかお小遣いまで出る特別待遇なので貧富に関わらずお金のことを心配する学生はいない。


 では援助金を出してまで後身の育成に励む考古学界が多くの学生を拒むの何故か?



 その答えは……「覚悟」だ。



 筆記試験を突破した学生は面接会場へと案内され、たった一言さえ言葉を交わすことなく試験管に銃を一丁手渡されこう尋ねられる。


「この銃で私を撃ってみろ」


 嘘でも冗談でもなく、その場で、その次の言動で覚悟を見極められる。


 歴史的な遺産に関わること、自らの手でそれを失わせてしまうかもしれないという責任を抱えることへの覚悟。確かにそれも必要だが、最初に問われるのはもっと別の……死亡率が他の職業に比べ圧倒的な高さを有している考古学と関わることで自らが殺される覚悟、加えて人を殺す覚悟を。



「……分かりました」


 一人の少年は試験官の言葉に少し驚いた様子を見せるが、躊躇うことなく銃を受け取ると、数刻の間もなく試験官に向けた引き金を引いた……。

 

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