私と、鏡の中の私

夕暮 春樹

第1話

屋根裏部屋の片付けをしていたら、昔おばあちゃんが大切にしていた鏡が出てきた。

その鏡はパッとみ少し高そうな感じだが、そのことを除けば普通の鏡と変わらない。

でも、昔おばあちゃんがその鏡には不思議な仕掛けあるって言っていたのを思い出す。

私は、魔法のランプ見たいに擦ったら何か出てくるのかと思って、いろんな所を擦ってみたけど特に何も起こらなかった。

その日は特に何も起こることがなく一日が終わった。


朝起きて、屋根裏部屋の片付けを早く終わらせようと張り切って屋根裏部屋に行くと、その不思議な鏡に映った自分に違和感を感じた。

気のせいかと思って片付けに戻ろうとした瞬間、鏡に映った自分の行動に目を疑った。

鏡に映った自分が、私と全く違う動きをしていたのだ。

鏡の自分は私に気付いたようで、こっちにおいでと言っているみたいに手を振っている。

私は、鏡の自分に誘われるかのように恐る恐る鏡に触れる。

すると、鏡が突然光り出して鏡の中に引きずり込まれていく。

光が収まって目を開けると、私は鏡の中の世界にいた。

元の世界に戻ろうと、もう一回鏡に触れてみても何も起こらなかった。

鏡の自分は、戸惑っている私を外に連れて行こうと手を引っ張ってくる。

私は帰ることを諦めて、鏡の自分について行くことにした。

扉を開けるとそこには、信じられない世界が広がっていた。本当の世界だったら屋根裏部屋と廊下を繋ぐはずの扉が、鏡の世界だと川や木々、たくさんの動物が一緒に暮らす世界が広がっていたのだ。

狐や鹿、狼や熊までもがみんな仲良く暮らしていた。

そんな世界に見惚れながら私は、鏡の自分に手を取られ、森の中にぽつんと建てられた家に連れてこられた。

どうやらここは鏡の自分が住んでる家のようで、遊んで欲しくてここに連れてきたみたいだ。

鏡の自分の周りには動物がたくさんいて、とても懐かれているみたい。

それからは、鏡の自分と動物達と鬼ごっこやかくれんぼをして遊んだり、みんなに森を案内してもらったりした。

夜になると、川で捕れた魚や、森の木の実をみんなで食べた。

夜は鏡の自分と二人で、動物に囲まれて一緒に寝た。


こんな日がずっと続けばいいなって思った。

顔や身長、外見全部同じ。

でも性格、笑った時の表情はまるで別人だった。

私はそんな鏡の自分を羨ましく思った。


朝、森で遊ぶのが楽しみすぎていつもより早く目が覚めた。

でも目が覚めると周りには鏡の自分も動物もいなかった。

そう、本当の世界に戻って来たのだ。

昨日のことは夢だったのかと思って、屋根裏部屋行ってもう一回鏡を見てみよう。

そう思ったけど、そこにはもう鏡はなかった。

私は昨日のことは夢だったのかと、少し心が落ち込んで部屋に戻った。

部屋に戻るとベットに見覚えのないシロツメクサの冠と、一通の手紙が置いてあった。

昨日のことは嘘じゃなかったんだ。

そのことがわかると私はとても嬉しくなった。


もう一人の自分と過ごすとても不思議な一日だったけど、とても楽しい一日だった。

また、鏡の中の自分に会えるといいな。

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私と、鏡の中の私 夕暮 春樹 @sidsk0gr9tpkbv0gavmb

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