第2話 あなたの方法は、どっち?

「じゃあソロン、早速だけどスライムを懐柔するか、捕獲してきてくれないかしら」


 知識の精霊は冷静な顔でいきなりとんでもない事を言い出した。


「は、え、スライム? なんで? それに懐柔と捕獲の違いって何だよ」


「そうか、そこからの説明がいるのね」


 精霊は地面に丸をひとつ書いた。スライムのつもりらしい。


魔物モンスターの因子には、潜在的に人間と同じものを持つ物がいるわ。だけど、せいぜいコンマ数パーセント程度。それもただ集めるだけじゃなくてちゃんと違う部位の因子を満遍まんべんなく集める必要があるでしょ?」


 その丸の周りにさまざまな模様を描き足す。他の魔物のつもりらしい。そこから腕を丸へ引っ張り、足を引っ張り、目を引っ張り、丸の中へ納めていく。


「つまり、人間のパーツ集めをする保管庫のようにスライムを使う?」


「そうそう。ゆくゆくはそのスライムが人間の因子のみを持つことで、晴れて人類再誕となるわけ」


「精霊よ、それなら捕獲はどうなるんだ?」


「……精霊呼びは混乱を招くからセラ、って呼んでもらえるかしら」


「ああ、確かに。他の精霊と混同するな。改めてセラ。捕獲は懐柔とどう違うんだ?」


 セラは少し表情を和らげながら続けて解説する。


「捕獲はそのまま。懐柔みたいに懐かせる必要はないけど時間がかかるわね。ひたすら別個体と交配させて、ヒトの因子がスライムに根付くまで続けるの」


 今度は丸の隣に角ばった丸を描く。スライムの近親種のつもりのようだ。それの間にハートを描き、ハートの下に歪な丸を描く。どうやら子供を表しているようだ。そこから矢印がどんどん伸び、腕が生え、足が生え、目ができて… 最終的に一のような形を作る。


「ふむ、植物の品種改良みたいなものか」


「同じ魔物ならちょっとくらい種類が遠くても大丈夫だけど、なるべく近親種を見つけて交配させないと失敗しやすいからね」


「んー、だとすると、俺にあってる方法は懐柔かな?」


「わかったわ。とりあえずスライムの生息地に向かいましょう」




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