第13話 監督、もっと、走れるようにならないとね

 一週間で色々なことがあった。

 ランニング部に在籍するようになり、その上、臨時監督になったのだ。

 やることが増えたというのも理由の一つではある。


 けど、そこまで不満はない。

 多少は嫌なことはあるが、彼女らの爆乳の揺れ具合を見ることができるだけでも、目の保養になっていた。


 貴志湊きし/みなとは臨時監督であり、もう一つの役割がある。


 ランニング部に所属している彼女らとデートをすること。デートといっても、本格的なデートとは違う。ただ、遊ぶだけの関係性。


 まあ、それがきっかけで幼馴染の藤咲弓弦葉ふじさき/ゆづるはと関われているわけだが……。


 表面上は単なる幼馴染であることは変わらないのだ。


 正式に付き合うなんて、まだ、先かもしれないが、少しずつ距離を縮めていけばいい。


 そんなことを考え、月曜日の放課後の今。ベンチ前に佇む湊は、学校近くにあるランニング場のトラックを走る、彼女らを見つめていたのだ。


 湊は走ることはせず、ただ、監視しているだけに近い。

 アドバイスしようにも、知識がないことで傍観者みたいな存在になっていた。




「湊先輩? 次は何をすればいいですか?」


 後輩の高井紬たかい/つむぎがベンチ近くまで駆け寄ってくる。

 多少なり、息を切らしているが、そこまで苦しそうな感じではなかった。


「俺が決めるのか?」

「そうだよ。先生も言っていたけど。練習内容は、湊先輩に決めさせてもいいって」

「お、俺が決めてもいいのか?」

「うん」


 紬は元気よく頷いていた。


 ランニング部に所属している湊は、走るためのテクニックなんてない。

 しかし、なんでもやってもいいとなれば、内心、ニヤニヤが止まらなくなる。


 周りには、爆乳の美少女らがいるのだ。

 爆乳を使って、何かをしたいという思いがないわけではない。

 揉んでみたいという気持ちが、日々蓄積されていた。


 毎日、爆乳の女の子らと関わって、そういった心境にならない方がおかしい。

 ほぼ、おっぱいと戯れている感じなのだ。


 でも、ダメだ……そんな卑猥なことばかり考えていては……。


 湊は内心、頭を抱え、酷く悩んでしまう。


 目の前に、爆乳があるのに触れないという、じれったさと葛藤を重ねていたのだ。

 変な言動をしてしまったら、確実に、臨時監督の座が一瞬で消えてしまうことだろう。


「ねえ、変態。何考えてんの? 練習内容を決められないんだったら、私が決めるから。そこで、ただ突っ立ってられると困るんだけど」

「ごめん……」

「ごめんとかじゃなくてさ」


 走り終えた石黒楓音いしぐろ/かのんが近づいてくるなり、湊に対して、呆れた感じの口調で罵ってくる。

 湊は、謝ることしかできなかった。


 監督に任命されても、すぐにはできるわけないだろ……。

 湊は心の中で不満を漏らす。


「湊君も初めて大変だと思うから、皆でサポートすればいいと思うの」

「まあ、そうかもな。湊も監督になって、一週間程度しか経っていないしさ。私も協力するよ」


 走るのをやめ、近づいてきた弓弦葉に続き、部長の宮原世那みやはら/せな先輩も親切な言葉を口にしてくれる。


「世那先輩? こいつが本当に監督でもいいわけ?」

「いいじゃん。先生が言っていたなら、それに従えば」

「けど……」

「楓音は、納得できない感じ?」

「別に、そうではないけど……変だし」


 楓音はボソッと呟いた。


「え? な、何が変なの?」


 湊は逆に聞いてみた。


「聞こえていたの?」

「わざと聞こえるように言っただろ?」

「別に……」


 楓音は顔を背けながら、嫌悪感を振りまいた話し方をしている。

 なんで、そんな顔ばかり見せてんだよ。


 別に、楓音のために、この部活に所属しているわけではない。

 嫌な相手だったとしても、関わらないといけないのが、組織に所属することなのだろう。


 楓音とは教室では隣同士で、部活も一緒。何かの運命の悪戯なのかもしれない。

 湊は自分なりに納得しようと考えても難しく、溜息を吐いてしまった。




「では、部活のことについて知るためにも、湊先輩も一緒に練習しませんか?」

「俺も?」

「はい。楽しいと思いますよ」


 紬は明るく反応を返しているが、その近くで楓音が湊の方を睨んでいた。

 なんか、気まずいんだが……。


 楓音からまじまじと見られるのは好きではない。

 それと、この前のビルで彼女は何かをしているようだった。

 その真相はまだわかっていない。

 わかっているのはスクエア会場という名前だけ。


「どうしたんですか、湊君」

「え? あ、ごめん。じゃあ、そろそろ、走る練習をしようか」


 弓弦葉に話しかけられ、ハッと意識を戻す。

 考え事をしていて、少々ボーッとしていたようだ。


「じゃ、トラックの中を走る練習な。まずは、五周走ること。では、開始ッ」


 世那先輩は指示を出し、一人で勝手に走り始めたのだ。

 先輩は元気があると思った。


「私も行くから」


 楓音も走り出すのだった。




「湊先輩、もっと、早く走れませんか?」

「ごめん、俺はこれくらいしか」

「そんなんじゃダメですからね」


 右隣を走っている紬が言う。


「湊先輩。臨時であったとしても、一応監督なんですから」

「湊君も頑張ってよね」


 左を一緒に走っている弓弦葉にも言われた。


「頑張ってみるからさ」


 湊は真剣にやっているつもりだが、運動がそこまで得意ではないこともあり、厳しかったのだ。


 ふと、両方を見ると、そこには、爆乳がある。

 走っていることで、紬と弓弦葉のおっぱいが揺れ動いているのだ。


 間近で、おっぱいの揺れを堪能できるとは、楽園といっても過言ではない。が、走りなれていないこともあり、だんだんと体に疲労が蓄積されてくる。


 もっと、おっぱいの揺れを見たい。

 走りなれてくれば、息を切らさず、思う存分に、おっぱいの揺れを堪能できるかもしれない。

 こうなったら、揺れ動くおっぱいを堪能するためにも、走る練習を続けた方がいいと思った。


 ふしだらな目的ではあるが、このランニング部に所属する最大の利点。それは爆乳の揺れ具合を間近で直視できること。

 もっと気合を入れて、走り込みを行った方がいいだろう。


 湊は今だせる全身全霊を込めて、爆乳の紬と弓弦葉と並びながら走り続けるのだった。

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