第16話 侍女との再会

 「ロゼが探しているマディア嬢に似た目撃情報が上がったよ」

シャンがみんなに探すのを手伝ってくれるよう言ってくれていたおかげで。

冒険者をしている修道女の一人がお嬢様の情報を掴んできてくれた。

もしかしたらシャンのおかげでマディアお嬢様に会えるかもしれない。

「マディア令嬢と似た人物の目撃されたのは…」

シャンに教えてもらった初心者向けの『蒼の森』に入る。

修道院の使いで薬草を取りにと門番には了承を得るのも簡単だった。

「お嬢様。ロゼはここにいます」

草むらをかき分けしらみつぶしに探す。

魔物がいて危険だからと同行してくれたナシュ。

ざん切りの灰色髪に背中に身長ほどの大剣を差している。

大柄な彼女は木々の間を通るのにも苦戦していた。

視界の端にお嬢様の姿が見えた気がして。

「待ってロゼ。そっちは危ないよ」

走ってマディアお嬢様の影を追いかける。

「危ないって。くそっ狭すぎる」

ナシュがついてきていないのにも気が付かず走った。

木の根元の空に足が嵌まってしまう。

「痛たたっ」

変な音がして辺りを見回すと赤い瞳に囲まれていた。

巣穴を刺激してしまったらしい。

角兎に囲まれてしまった。

「ごめんなさい。すぐに退くから」

逃げようと背を向けると鋭い角が一斉にこちらに襲いかかってきた。

ナシュもいない今抵抗することもできずに殺されてしまうと。

諦めを感じた瞬間。

突風が吹き魔物が一掃される。

「大丈夫ですか」

声をかけてきたのは紺色の髪の騎士団員。

この人が助けてくれたのだろうか。

「助けていただきありがとうございます」

「お礼はユウリに言ってやってください」

後ろから現れたのは耳にかろうじてかかるほど短い亜麻色の髪。

こちらを心配そうに見つめる悲しみを称えた翡翠の瞳。

「お嬢様。やっぱり生きていたんですね」

縋りつくように抱きしめ鼻水を垂らすほど泣いた。

「ロゼ。どうしてここに」

「お嬢様についてお屋敷を出たのですが見失ってしまって」

「それからずっと探していたの?」

「ゔゔ。そゔです」

お嬢様は甘くて落ち着く匂いがする。

「帰りましょゔ」

「屋敷には帰らないわ」

「私と一緒にきてほしいところがあるんです」

「クラック家じゃないならどこなの?」

「ロゼの命の恩人の元です」

やっぱりお嬢様に会えたのはシャンのおかげだわ。

彼女も会いたいと言っていたし。

教会に帰ろう。

「ロゼ!」

「ナシュ。見てよお嬢様に会えたの」

「そうか。それはよかったな」

追いつけなくてすまないと謝るナシュにお嬢様を紹介する。

「ロゼ。今はマディアではなくてユウリと名乗っているから」

そう呼んでくれると嬉しいとお嬢様は言う。

やはり名前を変えなければいけないくらい苦労されているのだ。

ナシュと教会に身を寄せていることを伝え。

シャンに会ってもらうことになった。

私がいないことで一緒にいた騎士団長サルマという人には悪いが。

理想の世界をお嬢様にも認めてもらい幸せに暮らすの。

早くシャンのもとに帰らないと。

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